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「竜・撃・砲! 点火ぁ!」

いい年をしたオヤジが豪快に吠える。

「属性解放突き……フィニッシュ!!」

同時に銀髪の少年が叫ぶ。

「溜っ……さん! スタンプ!!!」

それに続くように桃髪の女性が、担いだ大槌を力の限り叩きつける。

一瞬にして、目の前が爆風に包まれた。

「おぉ………」

あまりの衝撃に思わず吐息を漏らしてしまう。


【目標を達成しました】


「お疲れさまぁー! いやぁ! 今の良かったなぁ!」

「ああ! やっぱ最後は大技でドカーンだな!」

「だよねぇ! わかるわかる!」

「「「あっはっはっはっ!!」」」

三人は肩を組み、すっかり意気投合して笑っている。

(仲むつましいのはいいことだな………ん?)

そこでふと思った。

(……あれ? これ、もしかすると私……所謂空気というやつなのではないか?)

先程の激闘を熱く語る三人の傍らで弓使い――モモは一人、愕然とした表情でたたずんでいた。


        ◇


――桃姫(ももひめ)。
この名前は大袈裟で嫌いだ。
普家の生まれの私にこんな大層な名前をつけた両親が少々恨めしい。
その為普段、他人と接する際には『モモ』という略称で通している。

さて、突然ではあるがここで少々自己紹介をしてみようと思う。

私はこの大陸でいう『東の国』と呼ばれる国々の出身で、修行の為この地で狩人を営んでいる。

なぜ先程、他の狩人達と温度差が出来ていたかって?

うむ……しかしあれは私が悪いのであろうか?


始まりは、私がとあるギルドの酒場を訪れた時のことだ――



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「それでは! この依頼書にサインをお願いしまーす!」

昼間から騒がしく、酒の臭いが立ち込める酒場――大体どこのギルドに行ってもうるさかったが――の喧騒に負けないように声を張り上げる受付嬢に若干申し訳ない気持ちになりながら私は署名……サインをした。

「これでお願いする」

「んん?? この何て読むんですか??」

受付嬢の表情には『はてな』の記号が読んで取れる。やはりそうなるか……。

「すまない、東の国の文字なんだ。言葉は慣れたのだが……どうにもこちらの文字は苦手で」

すると受付嬢は『ああ、東の国の』と言うと、慣れた様子で他の受付嬢に呼び掛けた。
呼ばれてきた彼女はどうやらこちらに精通しているらしい。契約書をペラリと眺め、把握したように顔を上げる。

「お待たせしました。桃姫様ですね。確かに契約を承りました」

「恩に着る」

「では受注板に書き加えますので、準備が出来ましたら申し付けください」


何とかクエストの受注を終わらせる。
今回は割とスムーズに出来たが、このやり取りをクエスト終了後もやらなければいけないかと思うと、些か肩が重くなる。

もはや契約書もモモで通してしまおうかとも思うが、契約不履行だなどと面倒事が起こるのは御免なのでそれは止めておきたい。

「さて……」

そう言ってモモはクエストの受注板の前に立ち、酒場を見渡した。


クエストは貼った。
後は協力者が申し出てくれれば心強いのだが……。

そう思いながら声をかけるに値する狩人を探す。


何せ今回の相手は……


「お、黒ティガじゃん! 何々? お姉ちゃんが受注者?」

私の横、丁度肩下の位置から声をかけられた。
顔を斜め下へと傾け、声の主を確認する。

「あぁ……そうだが、少年はハンターか?」

「あぁ! 姉ちゃんも俺をガキ扱いすんだな!?」

そう言われても……と言葉に詰まる。
齢は十五程だろうか、銀髪に浅黒い肌の少年が『お姉ちゃん』などと呼び掛けてくるのだ。
依頼人かとも思ったが違うようだ。

「オイラはこれでも23! れっきとした上位ハンターだぜ?」

「何だと!?」

少年は腕を首の後ろに組み、私をキッとした目付き(しかし上目遣いかジト目にしか見えない)で睨み付けている。

流石に嘘だと思ったが、よく見ると背にはこちらの大陸で普及している武器だという剣斧……スラッシュアックスが刃を光らせているし、何より目についたのが……銀髪から覗いている尖った耳。
これには心当たりがあった。

「少年は龍人族か?」

「だから少年じゃないっての! ……そうだよ。爺ちゃんが龍人族だから『くおーたー』っていうらしいけど」

龍人族は人間や獣人とは別の種族で、人間よりも遥かに長い寿命を誇り、鍛冶や調合などの高度な技巧を備えている。しかし反面人口は少ない。
ポッケ村のギルドマネージャーや村長、行商婆さんなどがそれにあたる。

「龍人族のくおーたー? ……あぁ、少年の龍人の血は薄いのだな」

聞き慣れない単語が飛び出したが、頭を回転させれば意味くらいは理解できる。
覚えなければいけない言葉はまだまだ多いな。

「薄いっつってもその辺のハンターよりかは頑丈に出来てるぜ! なぁ、オイラも丁度腕試しがしたかったんだ! 連れてってくれよ!」

手を合わせ、今度こそ上目遣いで覗き込んでくる。
こうしてお願いする姿はどこまでも少年なのだが、これで私とあまり変わらないとは……。

「いいだろう。こちらこそ宜しく頼む」

「任せといて! オイラはヨルヴァ。お姉ちゃんは?」

「モモと呼んでくれ。それと『お姉ちゃん』はやめてもらいたいんだが……」

どうも呼ばれ慣れない。

「分かったよモモ姉ちゃん!」

「…………」

ニシシとヨルヴァは笑う。……さてはこの少年もどき、遊んでいるな……?

一言いってやろうと口を開きかけた時、後ろから心臓が止まるかと思うほどの大声が飛んできた。

「おぅおぅ! 黒ティガだな? ワシも参加させてくれい!」

「……っ!」

驚いて振り返ると、更に驚いた。

アオアシラと見紛う程の巨体。厳つい顔つきに色濃く強調するヒゲ。鍛えられた体は鎧の上からでもはっきりと分かる。

そして何より……

「何だよこの馬鹿デッカイおっさんは!!?」

ヨルヴァが驚きの声を上げる。

「おっさんではない! 今年でまだ40半場だぞ!」

「それはもうおっさんだって……」

そう、彼が纏う雰囲気は圧倒的な中年……もといベテランのオーラだった。

「ほれ、これがワシのギルドカードだ」

「あ、オイラのも! はい」

「私のも受け取ってくれ」

三人はギルドカードを交換し合う。
ギルドカード交換はこの世界での挨拶代わりである。
相手の力量もおおまかに分かる。便利なものだ。


「ハルクヴィン・ベルンハイト……凄い名前だな」

どこぞの貴族の生まれなのだろうか?
しかもG級だ。
まじまじと大男を見上げる。

「ハッハッハッ! 大層な名前だろう? 面倒臭いからハルクと呼んでくれ」

ハルクは豪快に吠えると、手を出してモモとガッシリと握手を交わした。

「私はモモだ。宜しく頼む、ハルク殿」

「俺はヨルヴァ! ヨロシクな! ハルクのおっちゃん!」

「どのぉ? そんな呼び方せんで普通にハルクと呼んでくれ。そのほうが気兼ねせんでいいわ。それよりも小僧! ワシはまだおっさんじゃないと言ってるだろうが!」

「ワシなんて言ってる時点でもうおっさんだよ!」

唸るハルクにヨルヴァが食って掛かった。
大柄なハルクに物怖じせずに怒鳴り返す。

そこなのか?
そこなのか??

モモも急に繰り広げられた口論に混乱してるのか、些かずれたことを考えながら二人を見ることしか出来なかった。

険しい剣幕で口論する中年と少年……見ているこっちがハラハラする光景だ。

しかしそんなこんなで口論は五分ほど続いた。

はぁはぁと肩で息をしながらハルクはヨルヴァを睨み付ける。

「ふん、ハッキリとよくモノを言う小僧だ。嫌いじゃないぞ」

そしてニッと笑い手を差し出した。

「ヘヘッ! あんがとよ!」

後で訊いた話だと『魂を分かち合った』らしい……そんな二人がガシリと握手を交わしたところで、モモは二人に話しかける。

「もういいだろうか? 二人の腕が確かなのはギルドカードを見れば分かったが、相手はティガレックス亜種だ。出来ればもう一人欲しいと思うんだが……」

ティガレックス亜種……通称『黒轟竜』。
温泉地で有名なユクモ村のギルドが発見した、いないとされてきたティガレックスの亜種。
通常種より凶悪かつ狂悪な行動、咆哮というレベルを超えた衝撃波……どれをとっても全力を尽くさないと一瞬で命を落とすだろう相手だ。

「確かになぁ。モモ姉ちゃんは弓だろ? ならもう一人近接がいたほうが大分安定するね」

ヨルヴァの翆色をした眼がキラリと光る。
流石は上位ハンターだ。戦略の話になると雰囲気がガラリと変わった。

「ならワシに心当たりがあるぞ」

それに続いて、むすっとした顔(後にこれが普通だと分かるのだが)のハルクが口を開く。

「本当か?」

モモがハルクを見上げた。G級ハンターの見立てなら期待ができる。

「ほれ、あそこの席に二人組がいるだろ? あの二人は恐らく相当やるぞ」

ハルトの指した方向には確かに二人の女性ハンターが座っていた。
一人は寝ているのだろうか? 昼間から飲み潰れているなら少し不安になる。

「私が声をかけてこよう」

オイラも行こうか? と言うヨルヴァに大丈夫だといってモモは二人の席へと向かい足を進めていった。

頼み事をするのだから複数でいくのは礼儀に反する。

近付くていくと、二人の会話が聞こえてきた。

「アクアー? 大丈夫?」

桃色の髪をした女性が机に伏せているポニーテールの女の子に声をかけているようだ。

「無理です……海越えはやっぱりキツいでした……」

「言葉がおかしいよ……こりゃしばらくはダメだなぁ」

「ちょっと失礼する」

困ったようにポリポリと頭を掻く彼女にモモは声をかけた。

「ん? 何か用?」

「実は――」

きょとんとこちらを見る彼女にモモは訳を話した。

「黒ティガかぁ~。私まだ戦ったことないから是非とも参加したいんだけどね……」

ちらり、と机の少女に目をやる。
やはり彼女が心配なのだろう。

「うぅ……ハンマーさん、私はしばらく休んでるので……行ってきてください」

具合の悪そうな声でアクアと呼ばれた少女は机に伏したままハンマーにそう言うと、再び動かなくなった。

どうやら船酔いらしい。
この酒場のあるギルドは小さな港を構える町にある。話によると、やはり彼女たちは他の大陸からやって来た旅のハンターだった。

「ん~じゃあせっかくの頼みだし、アクアは受付嬢に頼んで見ててもらうとするか」

そう言った彼女のギルドカードを見るとこちらもG級。ハルトの見立ては正しかったようだ。

「あ! モモ姉ちゃん交渉成立?」

ハンマーを連れて二人のところに戻ると、それを見たヨルヴァが駆け寄ってきた。

「私はハンマー! どうぞよろしく!」

「カッコイイ名前だなぁ!」

「まったくだ! やはり期待できるな」

「本当? 嬉しいねぇ」

そして四人は自己紹介と軽い雑談を交わした後、準備を済ませて黒轟竜が住まう火山へと向かったのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


そして冒頭のシーンに戻る。

三人の働きは素晴らしかった。
ハルクは隙の無い豪快なガンランスの攻撃で的確に黒轟竜を弱らせ、ヨルヴァは素早い身のこなしで剣斧を振り回し、ハンマーさんはその名の通り巨大な鎚を盛大に敵に打ち付けた。

その後ろで私は黙々と弓を射る。
三人のような豪快な技は無いけれど、この武器が私に一番合うと思っている。


龍木という特殊な素材を東の国の技術で加工して出来たこの弓――龍弓【日輪】。

相棒であるこの弓は、この大陸に伝わる『曲射』という技術こそ出来ないものの、大変優れた性能をもつ武器だ。

だからそれはいい。

だがこの『あうぇい』感は流石に寂しい。

「皆……お疲れ様。手伝ってくれて感謝する」

おずおずと話しかけたモモ。

すると、どういうことだろうか

「お! 今回のMVPのお出ましだ!」

ハンマーがモモを見るなりそう言った。

えむぶいぴぃ……?

どういう意味だろう?


困惑するモモを『待っていました!』とばかりに取り囲み、三人が口々に話しかける。

「ありがとな! モモ姉ちゃんのお陰でスッゲー楽に動けた!」

「うむ、特に突進してきた時の奴の牽制! 見事だったぞ!」

「よくあんなとこ狙えたよねぇ! 狩り中なのにちょっと感心しちゃったよ!」

「あ………あの?」

初めて贈られる称賛の嵐にモモは挙動不審になってしまう。

弓なら援護して当然、そんなことを言われてきたモモにとって、三人の言葉は胸に染みるものだった。


「皆だった最後の大技、本当に感動したぞ!」

負けじと称賛の言葉をかける。

「お! やっぱりモモ姉ちゃんから見ても凄かった?」

「やっぱりさっきの、外からみたら凄かったでしょ? 私も見たかったなぁ」

「仕方ないだろう。 ワシ達はずっとモモの弓の技術を堪能したんだ。最後くらいワシ達も目立たんとな!」

「そんな……それは買い被りすぎだ!」

「あ、照れてるの?」

「ち……ちがう!」

「モモ、自信を持たなくては駄目だぞ?」

「そうそう。私なんてほら! 自信の塊だし」

「……モモ姉ちゃんはこうなっちゃダメだからね?」

「えー? なんでよ?」

「「「あはははは!」」」

お互いを誉め、認め合う。それがとても大事なことなのだと改めて思い知らされた。

「さぁ! 次は何に行こうか?」

「ワシは強い奴なら何でもいいぞ!」

「あー! 私ももう少しこのメンバーで狩りたいなぁ。アクアに言ってもう少し滞在しようかな」

「そうしなよハンマーのねーちゃん! モモ姉も喜ぶよ! ねぇ?」

「もちろん! 是非とも宜しくお願いしたい!」

「オッケー! 今度はアクアも紹介するからね!」

「っていうかヨルヴァ……その呼び方は流石に恥ずかしいんだが……」

「いいじゃん! 似合ってるって!」

「全く……」

胸がまだ暖かい……

そうか私はこれを学ぶ為にここに…………


「モモねー! 次はジエンモーランだって!」

「!? 流石に急すぎるだろう!」

「大丈夫大丈夫! この私に任せときなさい!」

ハンマーが私の肩を叩く。

「ワシの力とどちらが上か、比べてやるわ!」

ハルクが高らかに吠える。

「おっちゃん、そんなことやったら砂漠に落とすからね?」

ヨルヴァの呆れた声が聞こえてくる。


仲間と打ち解けるのは簡単なことなんだ。
自分の心を開けばいい。
そうすれば時間なんていらない。

「私は大タルGを持っていくぞ!」

「えぇ!? じゃあ起爆合戦だ! ジエンの戦闘中に飛び交う爆発……カッケェ!」

「なら私はマタタビ爆弾かなぁ。ピンク色にしてやる!」

「ガンランスの威力を忘れてもらっちゃ困るな!」

四人の笑い声が火山の岩場に響く。


ただ狩るだけが狩人じゃない。
そんな簡単なことに今気づいた。
こうして人の輪は広がっていき、世界が広がっていく。


その世界はどのくらい輪を広げれば包むことが出来るのだろうか?


モモはクスリと笑った。


これからの狩りがとても楽しみなんだ。
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うるぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


昼下がり、水没林の一角に熱い雄叫び(×2)が響き渡る。

「………はぁ」

また始まるのか……とモモは呆れるようにため息をつく。
すると、それと同時に小規模の爆炎が目の前の男達を包み込んだ。

「うわぁ!?」
「ぐぉお!?」

同時に反対方向に吹き飛ぶ二人。
その場に残ったのは脚を引きずるロアルドロス一匹だ。
離れにいたモモは呆れ顔をしつつも素早く矢をつがえ、弱った水獣の眉間を的確に射抜いた。

「ウルルゥ……」

急所を射られたロアルドロスは力なく呻いた後、地面に横たわり動かなくなる。


【目標を達成しました】


「ふぅ………『クエスト』は無事に終わったな」

周りを確認し、一息ついてモモは大弓を背にかける。

さて…………問題はこの後なのだ。

「おっちゃん! 砲撃するときは周り見ろってあれだけ言っただろ!?」

「小僧こそ無闇やたらに斧を振り回しおって! 少しは位置取りを考えて立ち回ったらどうだ!」

「やはりか……」

険しい剣幕で焦げ臭い二人がまたもや言い合いを始めている。
ガルルと睨み合い、一発触発の雰囲気である。

「あのさぁ、とりあえず小僧ってやめろよ! オイラもう20過ぎてんだぞ!?」

「儂からみれば10も20もケツの青いガキに変わりないわ!」

「んだと!?」
「なんだやるか!?」

「二人とも、少し落ち着い……」

「モモは下がっていろ!」
「モモねぇは下がってて!」

「ぐぬ……」

二人は同時に振り向くと、モモに同じ言葉を吐く。 綺麗にハモっていたが、そんなことを言ってる場合ではない。

「………ううむ、一体どうすれば」

尚も言い合いを続ける二人を見据え、モモは困り果てて天を仰ぐ。一本に纏められた長い黒髪は、そんな主とは裏腹にさらりと風に泳いでいた。


    ◇


ハルクとヨルヴァの喧嘩が起こり出したのはハンマーさん達がパーティーを抜けてからだ。
元々一時的にパーティーを組んでいただけではあったが、別れの日が訪れた時はやはり名残惜しかった。

『ごめんね……私達もまだいたいんだけどさ』

『すみません……待ってくれてる人がいるので』

『そんな寂しそうな顔しないでよ! ハンターなんだ。また何処かで会えるよ』

『あ! なら連絡取れるようにしましょうよ!』

『それだ! ………ほら、これで。何かあったらいつでも頼ってよね!』


ギルドカードは情報の掲示だけでなく、ギルドを通せばカードの持ち主がいるギルドまで手紙を出すことが出来るという事を私はこの時初めて知った。
方法は簡単。カードにそれを許可する特殊な署名を書き足せばいい。
しかし重要な個人情報の為、信用のおける間柄でないと行ってはいけないという鉄則があるが。


ともあれ、二人と別れた後、私とハルク、ヨルヴァの三人は『パーッと狩って寂しさを紛らわせよう』とクエストに行ったのだ。だが早くもそこで気が付かされた。

あの二人は極めて優秀なハンターだったということに。
一つ分かりやすい例を挙げれば、人と人との繋がりを円滑にすることに長けていたのだ。

考えてみれば、ガンランスとスラッシュアックス、そしてハンマーか太刀……これらは近接ではかなり個性的で癖を持つ武器。
慣れないパーティーでそんなものを好き勝手に振り回せば他人に影響を与えるのは必至であったのだ。

案の定、向かったクエストではハルクの砲撃にヨルヴァが巻き込まれ、ヨルヴァのスラッシュアックスはハルクの攻撃を何度も妨害。加えて私の矢も二人に襲いかかるという散々なものであった。

何故上手くいっていたか……その理由に気付くいたのは愚かにも二人が居なくなってからだったのだ。

あの二人の戦闘中の指示を思い出す。

『ハルクは翼を重点的に! ヨルヴァは尻尾を! 私は頭で、モモも私の攻撃の合間に頭を狙って!』

『ヨルヴァ君は足元を! ハルクさんは固い顎をお願いします! モモさんは柔らかい腕を!』

今思い出しても惚れ惚れするほど的確な指示だった。
各武器の特性とその立ち回りを配慮しながら絶妙なタイミングでそれを伝えていたのだ。

聞いてみればハルクもヨルヴァも、加えて私もほとんどソロで活動していたハンターでパーティープレイの経験値が圧倒的に少ないのだ。

「大体小僧こそワシのことをいつまでもオッサン扱いしおって!」

「オッサンにオッサンっていって何が悪いのさ!? 少しは自分の歳を自覚したほうがいいって!」

「まだまだ現役だ!!」

「よさないか! もうじき帰還時間だぞ!」

――にも関わらず、狩りが上手くいっていたのは自分たちが優秀だからだと過信していた結果がこれだ。
指示を真似しようとしたこともあったが勝手が分からずに反感を買い、結局おのおのが好きに行動してしまった。

今回は私が仲介役をしているが、口論に交じることも多々ある。
それを止めてくれるのは、情けないことにネコタクを引っ張ってくるアイルーなのだ。

「ふん、次は気を付けろ」

「そっちこそ」

「…………」

このままではパーティーの解散は近い……そう感じさせる雰囲気で三人はギルドへと帰還した。

何とか策を考えなくては……。




      ◇




恥ずかしい話だが結論から言おう。
困りに困った私はハンマーさんの元へ相談の文を綴った。

二日と経たず返事の文はギルドに届いていた。
返って来ないのでないかと不安だったので彼女に心から感謝したのだが……。

届けられた文には、思わず首を傾げるような内容が綴られていた。

『広い視野と広い心をもって、最後に大きな一つ決断をしなさい。モモにはその才能があるよん』

書かれていたのはこれだけだ。

あんまりだよん。

「…………?」

申し訳ないが全くをもって分からない……。
まさか更に困惑することになるとは思わなかった。
そして文末の『よん』……。
些か腹が立つ。

「不味いな………」

頼りにしていた友人のG級ハンターの言うこと不明で、あの二人も今のところは酒場で騒げば喧嘩は収まっているが何時までも続くとは思えない……。

(決断……? 何を決断しろというのだろうか……?)

うむむむ、と悩んでいるとヨルヴァが慌てた様子で駆け寄ってくるのが見えた。

「モモ姉! なんか凄そうな人が一緒に狩りに行きたいって!」

相変わらず恥かしい呼びかたを変えない少年だが、問題はそこではない。

「凄そうな人が?」

「うん! ほらあっちに………ぶふぉ!!??」

「!?」

後ろを振り向いたヨルヴァの目の前には何時の間にか妙齢の女性が立っていたのだ。
寝むそうにも見える細目に、腰まで伸ばされた黄緑色のポニーテールをしていた。

ほぼ0距離だったため、ヨルヴァは勢い良くそんな彼女の豊かな谷間へと突っ込んでいた。

ハルクがこの場にいたなら『何とも羨ましい!』と豪快に笑っていただろう。
喧嘩中? きっと構わずに笑う。彼はそんな男だ。

「ぷはっ……ごごご、ゴメンナサイ! オイラそんなつもりじゃ!!!」

目を回し、顔を真っ赤にさせたヨルヴァが尻餅をつきながら必死に弁解している。
生意気を言うわりには意外とピュアなようだ。

「……気にしてないわ。それより貴方達のパーティーに参加したいの」

「えっ……」

足元で騒ぐヨルヴァを気にも止めない様子で、彼女は澄んだ眼をジッと私に向けてくるのだ。少しどぎまぎする。

「それは別に構わないんだが……何故私達のところへ? 他にもっと優秀なパーティーがいると思うが?」

「…………」

何故そんなことを訊いたかと言えば、彼女の装備がそれを語っていたとしか言いようがない。
彼女の身に纏った防具はガブルSというもので(酒場の男達は『ちゃいな!』『ちゃいなだ!』と意味の分からない言葉を発していたが……)それほど珍しい類いではない。眼を惹いたのは持っている武器だ。

蒼い海竜の甲殻で作られたバレル。少し形は違うが同じ色のフレームとストックを組み合わせたヘビィボウガン。

聞いたことがあったのだ。砂漠に建てられた街『ロックラック』。そこでは一般のハンターが使っているボウガンとは違い、パーツを組み合わせることによって様々な性能のボウガンの作成が出来る、と。

「……あ、あの、素晴らしい武器をお持ちのようで……少し拝見してもよろしいですか?」

気付けば、今するべき内容では絶対にない言葉が私の口から漏れていた。

「……別に構わないけれど」

この時の彼女の「……」が決して嫌そうだったり、怪訝な雰囲気を浮かべていなかったことをまず弁解しておきたい。
あくまで無表情。
彼女は喋る前に一度相手の顔をじっと見る癖があるようなのだ。
ほんとに。



話は飛躍するが、何を隠そう私はボウガンが大好きなのだ。
ただ死ぬほど残念なことにボウガンとの相性が悪かった為使うのは諦めている。

「凄い……雷迅砲サンダークルスのバレルにあえて雷砲サンダークルスをセッティングか……なるほど、これで撃てる弾が………素晴らしい………!」

「モモ姉……目付きが怖いよ?」

目を光らせ、息づかいを荒くしてボウガンを凝視している私にヨルヴァは若干距離を置きながら、傍らの女性に話しかける

「おねーさん、名前は?」

言われた彼女はスッとギルドカードを差し出した。
名前の部分には『am』と記されている。

「……アム?」

「……アンよ」

無表情で即訂正された。よく間違われるのだろうか。

「ふーん、ねぇアン姉さん。それでどうしてオイラたちのとこに?」

常識人なはずのモモが戦闘不能のため、ヨルヴァが代わりを勤める。

「……気分ね。たまたま」

「ふーん、そっか。で、お姉さんは何を狩りたいの?」

並みの人間なら威圧されそうな程の無表情で話すアンにヨルヴァは気にせずに質問を続ける。

「……黒轟竜」

「黒ティガ……か。うん、分かった。……でもオイラ達の今の現状、ギルドから聞いてはいるよね?」

二人が抜けて以降、些細なことで争いが絶えずクエストを失敗し続け、今ではロアルドロス程度のクエストにしかこなせなくなっていたのだ。

「……私に任せて欲しい」

「……オッケー。でもこれでダメならこのパーティー……マジに潮時かもね」

ヨルヴァはボソリと悲しそうに呟くと、『モモ姉! クエストだよ!』と未だボウガンにへばりつくモモを引っ張っていった。


     


大量の溶岩を噴射する巨大な火山の麓にあるベースキャンプ。離れていても熱帯並みの温度が辺りを包んでいる。

「小僧、分かってるな?」

「おっさんこそ」

クエスト開始から険悪な雰囲気が立ち込め始める。
お互いクエストを無事に終わらせたいと思っているだけなのに何故か噛み合わない。

「二人とも……」

「……行きましょう」

たしなめようとしたモモに被せてアンは三人を促す。
ハルクより高いランクのG級ハンターの言葉に二人は睨み合うも渋々としたがった。

「見当たらんな……」

「隠れてんのかな?」


いくつものエリアを黙々と進み、クーラードリンクの空き瓶が二つばかり転がった頃、


「……いたわ。構えて」

「しゃあ! やってやるぜ!」

「速攻で終わらせてやるわ!」

「よし………」

遂に目的を発見し、四人は武器を構えた。



――しかし


「……モモ。あなたは下がっていなさい。戦闘に参加しなくていい」

アンの口からあり得ない言葉が出たのだ。

「そんな!? 一体何を考えて……!」

「……黙って。静かにそこで、しっかり見ていなさい」

「………っ!」

有無を言わさないアンの剣幕に押され、モモは何も言うことが出来なかった。

(何故!? 最後の狩りになるかもしれないのに………!)

モモも薄々感じ取っていた。ヨルヴァが、恐らくハルクもそう考えていることに。
だからこそ絶対に成功させるべく念入りに支度もしたのに。


(この様は何だ!?)


もうあんな女の言うことなど無視して狩り場に出てしまおうか……そう考えた時、私の目に映ったのはあり得ない……いや、懐かしい光景だった。

「はぁ!」

「せやぁ!」

二人がお互いを邪魔することなく攻撃をしている。

何故……と思ったが答えは目の前にあった。

アンの撃つ弾は二人の間をすり抜け、黒轟竜の額に直撃し怯む。

「……ハルク、後ろへ」

静かだがよく通る声でアンはハルクに指示を飛ばした。

「む!」

「そりゃぁ! おっさんナイス立ち回り!」

それを聞いたハルクが後ろに回り込み、切り上げを始めると、前にいたヨルヴァがティガレックスの頭に属性解放突きを撃ち放っていた。

「凄い………」

モモは怒りを忘れて驚いていた。

ヨルヴァの独特な動き、ハルクの癖、そしてそれを察して指示を出しながら攻撃するアン。
彼らの動きを外側から見ることによって、モモは自分の視界が遥かに広がったのを感じた。

そして理解した。
アンの指示は二人の動きを的確に読んで行っていて、同時に少しでも間違えると即、大事に至ってしまうことも。

そんなリスクを私は負う覚悟があっただろうか?
いや、無かったから半端な指示しか出来なかったのだ。


「そうか………」

あの手紙の意味がやっと分かった。


【目標を達成しました】


「すげぇ! きちっと狩れたよ!」

「うむ! 素晴らしい指示だった!」

クエストが終わった後、二人は直ぐ様アンに駆け寄っていた。

「……ありがとう」

やはり無表情だったが、二人は久々の大成功に舞い上がり全く気にしていない。

「アン姉さん! よければパーティー組もうよ!」

「ワシからもお願いしたい!」

指示以外でも彼女の働きは常軌を逸していた。ポーチから他のボウガンのパーツを取り出し、その場で組み替え、あらゆる弾丸をばら蒔いていたのだ。ロックラックのガンナーでもパーツの変更は加工屋に任せているはずなのだが……。
彼女のパーツ変更は間違いなく加工屋のそれよりも素早く行われていた。
そんな彼女をパーティーに引き込みたいと思うのは当然だ。

「……それは無理ね。私はもうここを発ってしまうから」

しかしあっさりと断られてしまう。

「そんなぁ……」

ヨルヴァは心底ガッカリしたように肩を落とした。

「でも、代わりに指示を出せるリーダーを紹介する」

「何?」

「代わりって?」



「……モモ、もう大丈夫でしょう?」

「……」

アンの後ろから、モモはゆっくりと顔を出した。

「モモ姉が……?」

「モモがリーダーに?」

二人とも少し不安そうな顔を浮かべる。
それもそのはずだ。初めての狩り以来、活躍という活躍は全員が出来ていなかったのだから。

「二人とも、私は今回アンさんに多くのことを教わった。まだ未熟なところはあると思うが、二人のことは誰よりも見てきたと断言っきる。だから私に二人の命……預けてくれないか」

モモの黒い瞳は凛と輝いていた。
その眼を見て二人はニッと笑う。

「……ふん、ちょっと目を離した隙に随分と逞しい眼になりおって。なぁ?」

「うん。モモ姉……なんか凄く頼もしくなった」

「そんな面と向かって言われると……照れる」

「あはは! モモ姉、顔赤いよ!」

三人は久々に沢山笑った。これから、もっと笑えるようにしたい。
モモは今日得た教訓をしっかりと心に刻み込んだ。


「…………」

それを見ていたアンは、少しだけ微笑んでような気がした。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「いやぁ……! 久々の温泉だぁ!」

「ハンマーさん! ちゃんとタオルは巻いて……あぁ! 全くもう……」


ユクモの温泉にドボン! と大きな湯柱が立つ。


「いやぁ~、久しぶりの温泉は最高だねぇ!」

「そうですねぇ。ポッケからここに来たのが二年前になりますからね……。まさかまた旅に出るとは思いませんでしたけど」

「やぁ~、有意義な旅になったんじゃないかな? にしても……やっぱりユクモの温泉は格別だわ」

「それは納得ですね……。それにしても良かったんですか? モモさんにあんな意地悪な手紙書いて」

「んにゃ、『あれ』は人によって見方が違うからね。私があれこれいうと逆効果になりかねないんだ」

んー、と伸びをしながらハンマーは答えた。

「あっなるほど。ハンマーさんも色々考えてはいるんですね」

アクアは感心したように頷く。

「何か失礼なこと言わなかった? あとね、その道のプロにもお願いしておいた」

「プロ? 誰ですか?」

「私の知り合い。一部じゃ伝説なんだよ?」

「へー、じゃあハンマーさんより凄いんですね」

「その言い方は何か悪意があるよね………でもあながち間違いじゃないから困るかも。ま、もうじき紹介するよ」

「……そろそろですもんね。皆、集まればいいんですけど」

「まぁ何とかなるでしょ」

「ふふっ……相変わらず前向きなんですから」

月光が温泉の湯気を照りつけ、どこか幻想的な雰囲気を作り出している。
その中で二人はカチリと酒杯を交わした。

久々の故郷で二人はのぼせるまで語り合った。
プォォ、と到着を知らす角笛が鳴り響くと同時にとたた、と桟橋を駆け渡る。
足から伝わる木の感触が固いものへ変わり、嗅ぎ慣れた潮の香りに魚介のものが加わったような、港特有の匂いが鼻孔一杯に満たされた。


「到着ぅ~~!」

久々に地面を踏みしめると喜びと期待が一気に込み上げてきて、思わず叫んでしまった。

「バルスー! やっぱり揺れない地面は素晴らしいわぁ!」

珍しいほどの上機嫌で手を振っている。そんな彼女に遅れて船を降りた全身黒づくめの怪しい男――バルスは酔っているのか、こめかみを押さえながら桟橋を渡って来た。

「シャワ……頭に響く。そんなに大声出さなくても聞こえるからね?」

「早く早く! 出店とかあるわよー!」

シャワと呼ばれた少女はバルスの呻きなど全く聞こえていない様子でピョンピョンと跳ねている。
肩下まで下ろされた眩しいほどの金髪が上下に、ブナハSの赤いフリルが横にふわりと広がり、舞う。
赤と黄のその彩りは青一面に広がる港町の風景に見事に溶け込んでいた。

おぉ、と思わず声をこぼしてしまう。

出発を待ち切れなかった彼女が『せっかく新大陸に行くんだから装備も一新しないと!』と、素材をわざわざこちらの大陸から取り寄せた時のことは未だにトラウマである。
届けられた箱を何気なく覗いたら虫の素材がぎっしりと詰まっていた……なんて事はそうそう経験出来ることじゃない。

こんな面(スカルフェイスだが)の割に虫が苦手だったバルスは、その一件で更にダメになったという。

(あの時は昆虫展覧会でも開くつもりかと思ったけど……こんなに綺麗に化けるとはね……)

着色を薄めの赤にしたのは、向こうに置いてきたザザミ装備への感謝の気持ちなのだそうだ。

(虫素材を着色……ねぇ)

改めて加工屋の凄さを認識していると、不意に腕をぐいと引っ張られた。

「何、ぼーっとしてるのよ! バルスと違って私はこの大陸初めてなんだから、しっかり案内しなさいよね?」

「え」

普段は吊り上がりがちな(大体がバルスのせいだが)眼を綻ばせてジッと見上げられたら、もはや船酔いしたから休みたいなどとは言えない。

うん、紳士だから。
仕方ない。

「……分かったよ。にしてもシャワは元気だね」

「だいたい船酔いするってハンターとしてどうなのよ?」

「あはは……まぁね」

ばれてた。
知り合いの少女は更に酷い乗り物酔いをするのだが、そんなことを引き合いに出しても仕方ないので笑って誤魔化す。

「ま、そのうち慣れるわよ」

「だといいんだけど……」

彼女をシャワと呼ぶようになったのはつい先月のことだ。
『いつまでも子供扱いしないで!』と怒られたので彼女の指示通りに呼ぶと、片手で顔を隠した彼女にいきなり殴り飛ばされたのは今でも謎である。

「立ち話も何だし、とりあえず何か食べない?」

「そうだね……って、あ」

頷きかけたバルスが何かに気付いた様に動きを止めた。

「? どうしたのよ?」

不意に固まったバルスはポーチに手を突っ込み、硬貨を入れる袋を取り出した。

「今回の船賃で所持金全部飛んだんだった……」

かつては裂けんばかりに膨れていた袋は無惨に萎んでおり、哀愁をも漂わせている。

「え!? ……私も無いわよ」

潮風がそんな二人を笑うかのように吹き過ぎていった。

「調子に乗って防具を揃えなければ良かった……」

シャワは先程までのテンションを恥じるように肩を落としている。

「いやいや、似合ってるからいいと思うよ?」

「ちょっ! い、今はそんなこと言ってる暇じゃ無いでしょ!? このままじゃ宿も取れないわよ……」

「確かに……」

ほぼ無一文の二人が船降り場から動けずに棒立ちしていると、その様子を見かねたのか一人の少年が歩み寄って来た。

ふわりとした癖っ毛の銀髪に尖った耳。子供好きじゃなくても思わず撫でなくなるような無邪気な顔。

そんな少年が怪訝そうな目でこちらを見つめる。

「なぁ、姉ちゃん達ハンターだろ? 金ねーならさ……クエストこなせばいいだけじゃないの?」

新大陸でもやはり怪しまれるのか、少年はバルスに分かりやすく顔を背けてシャワに問いかけた。

「あ」
「あ」

長い船旅のせいか、あろうことか本業を忘れていた。
揃って間の抜けた声を上げる二人に少年は呆れ顔を見せるも、尖った犬歯を見せてすぐにニシシと笑う。

「ならさ、ちょっとクエスト手伝ってくんねーかな?」

少年はジャギィSシリーズという装備を身に付けており、へルムを抱えた彼が上位ハンターであると雄弁に物語っていた。



  ◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆


飛竜の唸り声のような音と共に、大きな波飛沫が岩場を濡らしていく。

場所は孤島と呼ばれる狩り場。
その島から浅く、海水の滴る浜辺へ細く伸びている岩場の一つ。そこで二人はベースキャンプを組み立てていた。
向かいの岩場には人の手によって加工されアーチ状になった岩が複数見られ、過去に人が暮らしていた様子が垣間見られた。

「よし、大体完成ね。バルス! そっちはどう?」

「こっちもOKだ」

「あ、向こうも丁度来たみたい」

「うわ、あれは危なそうだな」

骨組みを建てて天幕を張り終えた二人は、身の程もある桶一杯の水をヨタヨタと運んで来る少年を見つけると、すぐにそちらに足を向けた。

「お疲れ様、ヨルヴァ。後は僕が運ぶよ」

ヨルヴァと呼ばれた少年はそれに対しむすっとした表情を見せる。

「黒い兄ちゃんもオイラをガキ扱いすんのか? こう見えても……」

「『もう20代の龍人族』なんでしょ? でもそう言われても……ねぇ?」

「うん、やっぱり心が……ねぇ?」

大体にして龍人族の20代が人間にしてどの程度なのかも分からないが。

「優しさの押し売りは御免だい! クエストに誘ったのはオイラ! 一番孤島に詳しいのもオイラなの! だからこのくらい……!」

「まぁまぁ……ここは『お兄さん』に任・せ・て……ね?」

強情なヨルヴァにバルスは腰を下ろしてずいと顔を近づける。
黒塗りのスカルフェイスは昼間でも怖い。

かつて屈強な兵士達をも恐れさせた『それ』を間近で見せつけられた少年は短い悲鳴を上げてしまった。

「ひっ! わ……分かったからその顔を近づけるのはや、やめてくれよ………」

カタカタと震えるヨルヴァから桶を受け取ると、バルスはニッコリと笑いかけた。

『ありがとう』

「ひぃっ!? 髑髏が歪んだ!?」

重低音で響く声と若干口角が吊り上がった髑髏に、ヨルヴァは涙目になって後ずさる。

『クックックッ……』

「怖がらせるんじゃないわよ!!」

「あだ!?」

不気味に笑っていたバルスは、後頭部を殴り付けられ地面へ勢いよくめり込む。

「っ!!?」

「あ……」

シャワはしまったと言いたげにぷいっと目を逸らした。

「うぐ……シャワだって人のこと言えないじゃないか。見て、こんなに腫れちゃったよ……」

「う、うるさいわよ!」

腫れ上がるスカルフェイス、そして防具越しに人を殴り飛ばす豪腕のガンナー。

「……兄ちゃん達何者?」

ギャーギャーと騒ぐ二人をヨルヴァは恐ろしいものでも見るような目で見つめていた。


     


五分程経過しただろうか、落ち着いた二人はヨルヴァと共に今回の狩りについて話し合っていた。
その為に(あくまでも話し合いの為)時間は余裕をもって調整している。

「相手が相手だからね、油断は出来ないよ」

パニックから回復したヨルヴァが人差し指を立てて話始めた。

「そのクルペッコっていう鳥竜種はそんなに厄介なの?」

シャワの知っている鳥竜種と言えばランポスやイャンクック。イャンガルルガという強敵もいたが、あれは例外だろう。

「んーとね、クルペッコ自体は飛竜に比べたら確かに劣るんだけど、面倒なのはその習性…っていうか能力なんだ」

「能力?」

ヨルヴァの説明をシャワは念入りに確認していく。
敵を知らないということはそれだけで命に関わる。
それはこれまでの経験で嫌になるほど学んできている。

「狩猟笛ってあるでしょ? クルペッコはそんな感じのモンスターなんだよね」

「確かに。周りのモンスターを回復させたり硬化の効果……ちがう、駄洒落じゃないよ……を持つ旋律を奏でたりするんだ」

バルスが細かな情報をつけ加える。

「……でも何より問題なのは、『モンスターを呼ぶ』ことだよ」

「モンスターを呼び寄せる? それって鳥竜にはよく見られる特徴じゃない?」

シャワのいた大陸でもドスランポスなどの鳥竜種が手下のランポスを呼ぶ習性はよく知られている。
しかしバルスは「ちょっと違うんだ」と声を落とした。

「クルペッコが呼ぶのは小型のモンスターの場合もあるけど、大概は大型のモンスター……最悪、火竜まで呼び出す」

「リオレウスまで!?」

シャワは驚きの声を上げる。最悪二体同時に相手をしなければならない……この能力は予想以上に危険だ。

「ま、それは最悪の場合だけどね」

策はあるから任せてよ、とヨルヴァは先程とは打って変わって真面目な顔をして呟いた。

「そう、なら任せるわ」

そう返した後、シャワは妙にそわそわとして「ちょっといいかしら?」とヨルヴァの方にずい、と近づく。

「あなたのその装備、向こうじゃ見たことなくて。どんなものか……少し教えてくれないかしら?」

「ん、これはスラッシュアックスって武器さ!」

ヨルヴァがその背に背負っていたバンカーバスターに手をかける。
シャワのいた大陸には生息しない『ボルボロス』という獣竜種の素材を紅蓮石を溶かし込んで強化した猟斧で、使い勝手のよい作りになっている。

「この武器はすげーんだぜ? まずはこれ!」

ヨルヴァはバンカーバスターを、グリップを握って正面に構える。すると真ん中にあった板のようなパーツが上下にスライドし、アックスという名の通りの巨大な斧が姿を現わした。
斧の切っ先には刃は無く、代わりに土砂竜の頭部を思わせるパイプ状の突起が連なって重々しい雰囲気を発している。

「普通のスラッシュアックスならここにも刃が付いてんだけど、これは叩き潰す感じになってるんだ。そしてここからが更にすげーんだよ!」

すげーすげーと連発するヨルヴァはいうなりバンカーバスターの柄のグリップをまた捻る。
すると機械音と共に斧の部分が手元まで下がり、その上にもう一つのパーツがスライド、回転しカシン! と小気味のいい音を立てて接続したのだ。
ひと繋ぎになったプレートの先端には刃が取り付けられており、先程の形とは別の大剣に似た片刃の武器へと姿を変えていた。

「…凄い! 変形するのね」

ギミックのある武器はいくつか見たことがあったがここまでの物は見たことがなく、シャワは思わず目を丸くしてしまう。

「すごいだろ? この刃はボルボロスの堅殻を削って作られてて、鋼を越す強度を持ってんだぜ! あ、ちなみに変形は内部機構のエンジンで動いてて………あと剣モードには………」

延々と続くスラッシュアックスの説明を、シャワは「ふんふん」と真面目に話を聞いていた。




     




「ーーなるほどね。大体分かったわ! ありがと」

「へへっ! どういたしまして! 実はさ、もっと凄い『とっておき』があるんだけど、これは狩りでな!」

「なら楽しみにしてるわ」

シャワの反応が嬉しかったのか、ヨルヴァは鼻を擦りながらニカッと微笑んだ。

「あ、話終わったの?」

バルスは隅でこんがり肉の調理を勤しんでいた。
異国の言葉を聞いてるようで途中で逃げ出していたのだ。

「……あら、ずいぶん沢山焼いたのね」

「返すようで悪いけど、ずいぶん沢山喋ってたね」

バルスの後ろには、数えるだけで20は越えるだろう大量の肉の山が出来上がっていた。

「か、狩りには必要な知識なのよっ!」

流石に喋りすぎたと思ったのか、少々苦しそうに言い訳をする。

「ま、勉強熱心なのを責めるのもあれだしね。ところで」

バルスはヨルヴァの方に顔を向けた。

「それは上位のボルボロスから作った武器だよね? 一人で狩るなんて大したもんだ」

「へへっ、結構やるだろ?、オイラ基本ソロでやってんだ……って、ん? 何で一人で狩ってるって分かったの?」

「いや、クエストを三人で受注した時にギルドの受付嬢が君を珍しそうに見てたから、もしかしたらってね」

「うへぇ…よく見てんなぁ。オイラさ、あんまり大勢で狩るのって好きじゃないんだ……なんか窮屈でさ」

ま、協調性がないって言われたらそれまでなんだけどさぁ、とまるで自分に言うようにヨルヴァは呟いた。

「でもクルペッコは予想外の奴を呼ぶ時があるから、今回だけは用心ってことで仲間を探してたんだ。……でもなかなか見つかんなくてなー」

「だから港に新しく来るハンターを探してたのね」

「そゆこと。んん、やっぱ人脈って大事なのなぁ」

ヨルヴァは腕を組んでうんうん、と頷いてみせる。
大人ぶった態度をとっているが、どうみてもシャワよりもちんまい少年だ。
これでシャワよりも歳上とはやはり見えない。

(仲間が見つからなかったのはこの容姿のせいも……というか半分以上そうだろうな)

そう思いつつ、バルスは今の話で気になった部分を訊くため、再び質問を口にした。

「ヨルヴァ、嫌いなことまでしてどうしてクルペッコを狩ろうとしてるんだい? 防具の新調? ……でもボルボロスを狩れるならそっちの防具のがいいか」

その質問に、ヨルヴァはチャームポイントだというつぶらな瞳を険しくさせ、苦虫を噛み潰したような顔になる。

「うーん……ちょっと面倒い話になるんだけど、いい?」

「もちろん」

「聞きたいわ」

出会って間もないが、元気印が特徴であろうヨルヴァがこんな顔になる理由に興味をそそられないはずがない。

ヨルヴァは『わかったよ……』と言うと、すぅっと息を吸い込んだ。


「オイラはいつか幻のリオレウス希少種を狩りたい。だからその為に弱点の雷属性の武器が欲しいんだけど、その雷属性の武器を作るためのクルペッコ亜種の素材が足りない。んでもってクルペッコ亜種の弱点である氷属性も無いからベリオロスを倒さなきゃならなくて、そのベリオロスを倒すための火属性のスラッシュアックスを強化するにはクルペッコを討伐しなきゃならないんだぁ!」


「なるほど……」

「その気持ちはよく分かるわ……」


とても親近感の沸く理由だった。
ハンターなら誰しもがこの無限に続くようなループに直面する。


「はぁ、はぁ……そう言って貰えると嬉しい……よ」

肺の空気を出しきるようにまくし立てたヨルヴァは、息を切らしながら苦笑いする。
が、次の瞬間仰天したように目を見開いた。


「ってあれ!? よく見たらシャワの姉ちゃんの持ってるボウガン……もしかしてリオレウス希少種のやつ!!? 初めて見た! すげぇ……羨ましいなぁ……」


ヨルヴァは目をキラキラとさせてシャワをまじっと見つめる。

「あぁ、これは恩師から譲り受けたものよ……ちょっと癪だけど、これ以上に使えるボウガンに私はまだ出会ってないわね」

シャワは愛用しているボウガン――『シルバースパルタカス』を肩から外し、「好きに見ていいわよ」とヨルヴァに渡した。

火竜の延髄と骨を基盤に組み立てられた銃身を銀火竜の堅殻と上麟で覆い、その接続をノヴァクリスタルで施されたこのボウガンは、射撃の衝撃に全て吸収し強力かつ様々な弾丸を撃ち出せる非常に高性能な武器だ。

すげえすげえ! とまたもや連発する少年を見て、バルスはズイッとヨルヴァに近付いた。

「僕の武器はどう?」

バルスも負けじと、得意気に愛用の『トキシックジャベリン』を見せつける。
ギギネブラの不気味な皮で巻かれた赤色のグリップと三ツ又に別れた先端が特徴的な、猛毒を持つ優秀な武器であったのが……ヨルヴァには「それは見たことあるからいいよ」と軽く一蹴されてしまった。



「……さぁ! 下準備も出来たことだし、そろそろ出発しましょうか」

がっくりと膝をついてうなだれるバルスを尻目に、シャワが手を叩いて空気を切り替えをする。

「そうだね。ん? バルスの兄ちゃんどうしたの?」

「いいんだ……ランサーの良さは分かる人にしか分からない……」

「ほ……ほら、頑張りなさいよ」

(バカね……タイミングが悪すぎたのよ)

「うい………」

ブツブツと呪詛のような独り言を呟きながらもシャワに促され、バルスはのそりと立ち上がる。

「大丈夫かな……?」

自分のせいとは露知らず、若干の不安を覚えるヨルヴァだった。


    


孤島と言えば「海だ!」というハンターが多いが、深い森や野原、洞窟など幾つもの自然が集まってこの絶海の離島は成り立っている。
様々なモンスターが訪れるのもこの多彩な環境によるものだ。


「うわ……随分高いとこまで登ったのね……」

そう言ったシャワの口元は若干ひきつっている。

拠点を発ち、大型のモンスターが入り込めないような細い道を登り続けた三人は、孤島の中腹付近までやってきていた。

岩山を基盤に出来たこの島にも草木は力強く根付いており緑豊かな風景を作り上げている。
崖下を眺めてみると遥か下には青くきらめく海が延々と広がっているのが窺え、空中には鳥達が遊ぶように飛び交っていた。

「でも綺麗な眺めだろ?」

ヨルヴァが得意気に笑うも、下を覗き込んだシャワはお腹の辺りがキュッとなり、青ざめながら身を引いた。

「ごめん、無理……」

「高いとこが苦手ってハンターとしてどうなのかな?」

「……っ!」

ここぞとばかりにバルスがからかうも、涙目でギロリと睨まれ口をつぐむ。
やばい、これは落とされるかもしれない、と直感が死を告げる。

「あー、クルペッコは下の水辺にいることが多いからさ、とりあえずここを降りようよ、ね?」

バルスの危険を察知してか、ヨルヴァはシャワにそう促し下へと続く道を指差した。

「そうね……馬鹿は放っておいて早く降りましょ」

そう言うとシャワはそそくさと道を下っていく。
その馬鹿を見て、ヨルヴァは「バルスの兄ちゃんって絶対に尻に敷かれるタイプだよね」と言い残し、シャワをちょこちょこと追いかけて行った。

「…………」

残されたバルスの頭上では鳥達が「あほーあほー」とやかましく鳴いていた。



     


「滝から小川が伸びてるのね」

二人が道を下った先は岩の合間を小川が通る、縦長に開けたエリアであった。

「そう。この先に広い水辺が……ん? どうしたの?」

先を歩いていたシャワが片手でヨルヴァを制する。



「あそこに何かいるわ」

「あ……! まだ距離があるのによく気がついたね。ジャギィだよ」

シャワが発見したジャギィと呼ばれるモンスターはランポスよりも一回り小さな鳥竜種で、紅い体と背を通る紫の一本すじが特徴である。顔の周りにはエリマキがあり、大きいほど強さの証明になっていると、ヨルヴァは手早く、簡潔に説明した。

「ふぅん、肩慣らしには丁度いいわね」

言うがいなや、シャワは肩のシルバースパルタカスを手に取り、通常弾Lv2を装填し始める。

「ちょこまか動くから気を付けてね」

「了解よ」

バンカーバスターに手をかけながらジャギィへとゆっくり歩み寄る少年に続いて、シャワもしっかりと標準を定める。

「二匹か……オイラとシャワ姉ちゃんで一匹ずつだね」

二匹のジャギィはまだこちらに気付いていないものの、気配を感じているのか体を伸ばし、しきりに辺りを見渡している。

「油断しちゃダメよ?」

「もちろん!」

ヨルヴァは静かに、かつ素早くジャギィの元に駆け始めた。

「だぁぁぁぁ!」

十分に距離を詰めると、掛け声と共に斧モードのバンカーバスターをジャギィの腹部に全力で叩きつける。

「ギャウ!?」

不意討ちを受けたジャギィは弓なりにのけ反り、大きく吹き飛んだ。

「よしゃ!」

「ギャオ!!」

仲間がやられたことに気付いた、もう一匹がすぐさまヨルヴァに鋭い牙を剥いて飛びかかる。

「っ!?」

武器を振り切っていたヨルヴァは反動でまだ動くことが出来ない。
アプトノスの丈夫な鱗に守られた皮膚を軽く噛み裂く、強靭な顎が大きく開かれる。
ずらりと並んだ牙がヨルヴァの目の前まで迫っていた。

「ギャン!?」

ところが目前のジャギィは空中で大きく軌道を変えて吹き飛び、ドサリと地面に体を打ち付けて動かなくなる。

「ありがと!」

ヨルヴァが後ろに向かって礼を飛ばす。
シャワの放った弾丸が的確にジャギィを捉えていたのだ。

「もう、油断しちゃダメっていったじゃない……ま、標準はばっちりね。腕は落ちてないみたい」

愛銃を肩に背負い直すと、ヨルヴァが興奮したように走り寄ってきた。

「オイラも絶好調だった! そっかガンナーと組めば……んー、シャワの姉ちゃんだからかな?」

「たったこれだけで何言ってるのよ。そんな訳……」

「いや、そうかもしれないね」

二人が剥ぎ取りをしながら話していると、後ろから予期せぬ返事が返ってきた。

「バルス! そういえば何処行ってたのよ?」

「バルスの兄ちゃん、そういえば居なかったね」

「ちょっと心を空に解き放って……ね」

「……それは放心っていうんじゃないの?」

急いで走ってきたのだろう、肩で息をしながら存在感の薄い不審者はよく分からない言い訳を口にする。

「まぁいいわ。それよりヨルヴァ、この先にクルペッコがいるのね?」

「可能性は高いよ。下位のクルペッコに何度か行ったことがあるけど、ほぼ毎回この先で見かけてるんだ」

「恐らくクルペッコにとって好ましい環境なんだろうね」

足首まで浸かる小川を下っていくと、浜辺のような広間に出た。
岩に囲まれるようにして出来たこのエリアの奥に、一つだけ浮いたように鮮やかな点が動いている。

「いたわ!」

「よし、僕とヨルヴァで奇襲をかける。シャワはその間にペイント弾を撃ってくれ」

小声でのバルスの指示にシャワは黙って頷くと、弾の切り替えに取りかかる。

「兄ちゃんいける?」

「問題ないよ」

二人はなるべく水音を立てないように、足場を選んで走り出した。

(こいつと戦るのも久々だなぁ)

極彩色の、まるで道化師のような姿の巨鳥に気付かれないように二人は敵の背後へと回り込む。

バルスがこちらの大陸を離れたのは、ドンドルマを訪れる三年ほど前。ギルドナイトの仕事の一環であった。
自分の過去を探すうちに、各地で仕事をしながら調査するスタイルが染み込んでいたバルスは、転機だとあちらの仕事を積極的に受けていたのだが、手詰まり状態であった。

ーーそこで出逢ったのがシャワだ。
彼女はバルスの重荷を黙って支えてくれた。
再びバルスに希望を与えてくれた。

(……っと思考が脱線したな)

「兄ちゃん?」

ヨルヴァが下から覗き込むように見つめていた。
心配させるほど呆けていたのか……。

「ん、大丈夫だよ」

頭を降って自分に渇を入れる。この奇襲が成功するかしないかでこの後の流れが随分と変わってしまう。
失敗は許されない。

「クルル……」

クルペッコは小川の魚に気を取られているのか、川面を覗き込んで動かない。

「今しかないね」

「よし……行こう!」

合図の声と共にダン! と足を踏み出し大胆に距離を詰める。

足音にクルペッコが反応するも二人はすでに間合いに飛び込んでいた。

「だりゃぁぁぁ!」

ヨルヴァが背中のバンカーバスターを剣に変化させながら切り込む。変形切りと呼ばれる攻撃方法で、麻痺ビンによって神経毒を塗り込まれた刃がクルペッコの黄緑色の胴体に斜めに通る。

「クォォォ!?」

突然の痛みに驚いたのかクルペッコはわずかに跳ね上がり、ヨルヴァに向き合う。

「さぁぁぁぁぁ!」

その隙に更に背後に回り込んだバルスが連続してトキシックジャベリンを突きつけた。
槍の先端からはギギネブラの毒線から取り出された猛毒が染みだし、徐々にクルペッコの体内に蓄積していく。

「クォォ!!」

挟み撃ちにあっていると理解したのか、クルペッコは体を捻り扇状に広がった尻尾を二人めがけて振り回し始めた。

「くっ!?」

咄嗟にバルスは盾でガードに成功したが、振り回された尻尾はそのまま風を切ってヨルヴァに向かう。

「うわっ!?」

(やば……反応が間に合わねぇっ!)

直撃する……そう思った刹那、クルペッコの頭部でパン、と乾いた音を立てて何かが弾けた。
ピンクの煙が頭上に立ち籠める。

「クア!?」

「あんまり暴れないでよね!」

シャワの放ったペイント弾がクルペッコを一瞬怯ませたのだ。
その隙にヨルヴァはクルペッコの間合いから抜け出す。

「また助けられちゃったなぁ。……にしても流石に上位だね、反応が早いや」

ヨルヴァは相手への警戒を強め、体を引き締める。

「やっぱりモンスターを呼ばれる前に何とか倒したいけど……っ!? ヨルヴァ避けろ!」

短く会話を交わす二人を睨み付け、クルペッコは両翼の先端をカカッと打ち付けて今にも襲いかからんとしていたのだ。

「っ!!」

ヨルヴァは声に反応して咄嗟に横へ飛ぶ。

その直後、細い脚からは考えられない程の脚力で飛び出したクルペッコは、ヨルヴァのいた場所に巨大な爆炎を作り出していた。

「あっぶなぁ……」

チリチリと舞い散る火の粉の熱を肌で感じながら、ヨルヴァは急いで体を起こす。
『アレ』をまともに浴びては、火に弱いこの装備はたちまちに黒こげになってしまうだろう。

「せぁぁっ!」

バルスはヨルヴァが起き上がる隙をつくるためにクルペッコの背を何度も突いて注意を逸らす。
加えてシャワの氷結弾が彩鳥の頭に降り注ぎ、クルペッコは煩わしげに首を振った。

「シャワの姉ちゃん! その調子でクチバシを狙って!」

態勢を立て直したヨルヴァがシャワに向かって叫ぶ。

クルペッコは独特の音色をラッパ状に変形したクチバシで作り出している。
それに傷をつけてしまえば、クルペッコは目的の音色を出すことが困難になり、普段より二倍ほど時間が掛かるようになる。
つまり絶好の攻撃チャンスへと変わるのだ。

シャワがこちらに手を挙げる――了解の合図だろう。
その間も、撃ち出す氷の弾丸は頭部を狙って揺るがない。

「すげ……ってオイラもやられっぱなしじゃないぜ!」

プシュ、という音と煙を立ててバンカーバスターが斧の形に変化する。
重心が一点に掛からない分、こちらの方が身軽に動けるのだ。

「はぁぁぁ!」

軽やかなステップを踏んでクルペッコの足元まで近づくと、大きく足を踏み込み斧の先端をクルペッコの胸部に突っ込んだ。

「ルルゥ……!」


「くっ!」

「うわっ!」

柔らかい部位を攻撃されたクルペッコは小さく呻くと翼を羽ばたかせ、大きく後ろにバックジャンプして距離を取った。風圧に押されて二人は止めること出来ない。

「くそっ! あんな遠くまで……」

「クオックオッー! クオックオッー!」

地上に降り立ったクルペッコは体を踊らせるようにくねらせ、胸部をプクゥと大きく膨らませる。

「仲間を呼ぶ気だ!」

ヨルヴァは舌打ちし、すぐに走り出す。
しかしこの距離では走ったところで間に合わない。

駄目か……そう思った瞬間、ヨルヴァの横を黒い影がとんでもないスピードで過ぎ去って行った。

「兄ちゃん!?」

「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」

重量のあるランスを地面と水平に構え、重心を前のめりに倒しながら驚異的な脚力で突き進む。
『突進』というシンプルな技だが、疾風のような早さで突き進むランサーの一突きは飛竜の堅固な甲殻にも風穴を開ける。

「りゃぁぁぁぁぁっ!!」


「グオォォ! ……ォォ!?」

鳥竜の声とは思えない、リオレイアによく似た咆哮を上げ始めたクルペッコ目掛け、バルスは突進の勢いをそのままに全体重をかけた一撃を放った。

「クォォォォ!!!」

胸部に深傷を負ってパニックを起こしたクルペッコは、クルリと反転してふらふらと走り出したかと思うと、地面に勢いよく倒れ込んだ。

「チャンスだ……ヨルヴァぁ!」

「あいよ!」

今の一撃で大半のスタミナを消耗したバルスは膝をつく。
ヨルヴァはバルスに変わるようにその横を通りすぎ、バタバタともがくクルペッコに向かって巨大な刃を振るった。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

上段から袈裟懸けに振り抜き、刃を切り返し上へと切り上げる。
そして足を踏み込み腰、肩へと力を込めて、頭上で小さな円を描くようにして斧剣を振り回し横に薙ぐ。

「クルルル……ッ!?」

流れるような連撃の中、何とか立ち上がろうとしていたクルペッコにある変化が起こった。

「ク……アァ……ァ!!」

体を小刻みに震わせ、動こうと試みるも自由が効かない様子のクルペッコ。
バンカーバスターに塗り込まれた麻痺毒が全身に回ったのだ。

「今しかねぇ!!」

ヨルヴァはそう叫ぶとバンカーバスターを一度引き込み、勢い良くグリップを捻りながら再び突き出す。
すると二つのパーツを縦に割るようにして内部構造が現れ、莫大なエネルギーが彩鳥へと流れ込んだ。

「クォォォォ!!!」

突然の苦痛に思わずクルペッコも悲痛な声を漏らす。

「りゃぁぁぁぁぁ!!」

『属性解放突き』と呼ばれるその技の反動は凄まじいようで、ヨルヴァの体は大きく震えていた。

「凄い……あれがヨルヴァの言ってた『とっておき』、ね」

シャワは思わず固唾を飲んでしまう。。
『変形』という特殊な技巧まで施されているあの武器に、まだあのような大技が隠されていたのかと。

「ラストいくぜぇぇぇ!!」

ヨルヴァがそう叫ぶと、放出されていたエネルギーが刃の一点に集中していくのが分かった。

(強力なのが来るっ!)

直感でシャワがそう思った瞬間、バンカーバスターの先端で大きな爆発が起き、ヨルヴァはその威力を体現するかのように大きく後ずさった。

「うっ……まだダメか!」

「ル……ルルゥ……」

瀕死のクルペッコが足を引きずり始める。

「逃がさないわっ!」

シャワが氷結弾を撃ちつけるも、逃げることに必死のクルペッコはそれを意に介さずに飛び立ち始めた。

「しまった……もう届かない」

「すぐ追おう!」

「ええ!」
「うん!」

このままでは回復を図られてしまう……三人はクルペッコの休息場であるエリアを目指そうと走り出した。



ーー次の瞬間



「クェェェェェェェ!」



遥か頭上でクルペッコの断末魔が聞こえたのだ。


「「「!!?」」」

三人が咄嗟に上を見上げると、クルペッコの死骸と共に『何か』が巨大な音を立てて地面に降り立った。




「クルペッコが……呼んだのかな?」

「いや……確かに呼び声は妨害したし、あの鳴き声はリオレイアのものだった。……つまり『乱入』ってやつだね。クルペッコが弱ったのを見て出て来たんだ」

「なんて狡猾……いえ、自然でそんなことを言うのは無粋ね。私も、こいつの話くらいは聞いてるわ……『無双の狩人』とは言ったものね」


「オォォォォォォン!!」

黒焦げになったクルペッコを巨大な脚で踏みつけながら、雷狼竜――ジンオウガは盛大に遠吠えをあげた。
穏やかな海に浮かぶ自然豊かな離島。
その温暖で喉かな狩り場に今、凄まじい緊張感が交錯していた。

「ウルルルルゥ……」

低く唸り声を上げる巨大な影。

碧色の鱗を覆うようにできた黄色の甲殻。その合間には純白に輝く体毛が生え揃っている。
狼を思わせる頭部には、鋭く尖った角が二本。
鋭い爪を持つ四肢は逞しく、無数の甲殻に覆われた尻尾が地面をえぐる。

この特徴を聞けば子供だって理解して悲鳴を上げるだろう。

無双の狩人、雷狼竜……数々の異名を誇る牙竜種――ジンオウガが悠々と立ち塞がっていた。

「何だよ……これ……下位の奴の比じゃねーぞ……」

「…………」

絶句するヨルヴァの隣で、バルスは不意に巷で言われていたモンスターのサイズの計り方を思い出した。


・「大きい」と思う奴は大体通常サイズ


・「大きすぎる……これは金冠だ」と直感する奴はまず銀冠サイズ


・「冗談だろ………」と一瞬呆け、死を直感してしまうのが金冠サイズ

だという。


ハンターよりも一回りも大きなクルペッコを、丸々隠してしまえる巨大な前脚の持ち主。
一体どれ程の年月を生きてきたのだろうか……この雷狼竜は間違いなく選択肢の最後に該当していた。

「何食べたらこんなになるんだよ……」

「まぁパンやパスタじゃないことは確かだね……」

軽口を叩いてる場合ではない。ーーが、そうでもしないとプレッシャーに押し潰されそうだった。

「どうしよう……兄ちゃん……」

「バルス……」

「……動いたらダメだ。目を逸らさないで」

バルスは二人にそう促すと、自分もすぐに武器を出せるように身構えながら、ジンオウガを真っ直ぐに見据える。

「グルルゥ…………」

ジンオウガはまだこちらを睨んだ動かない。

(このまま立ち去ってくれればいいんだけど、ね……)

しかしそんな願いも虚しく、雷狼竜は四肢に力を入れて体を大きく伸ばし、頭を空に傾けた。

「ォォオオオオン!!」

先程とは明らかに違う“敵意”を持った咆哮。
ビリビリと耳から体の芯まで震わせるバインドボイスに答えるように、三人は武器を取り出した。


開戦の合図である。


「おぉぉぉ!」

一番近くにいたバルスが、クルペッコを捕らえたままの前脚にトキシックジャベリンを勢いよく突き立てる。

「っ!?」

しかしガキンッという拒絶音と共にランスは大きく弾かれた。

「固い……!」

「なら頭よ!」

シャワが装填し直した氷結弾を撃ち込む、しかしジンオウガは全く怯んだ様子を見せない。

「嘘!? 氷が弱点なはずでしょ……!」

「なら効くまで攻撃するだけだよっ!」

そう言ってヨルヴァが弾かれにくい剣形態でジンオウガに切りかかるも、ひらりとバックステップで躱されてしまう。

「あの図体であんな身軽なんてありかよ!」

ヨルヴァが舌打ちをするも、直ぐ様バルスが警告の声を発した。

「何か来る!」

ジンオウガは背中を青白く光らせたかと思うと、軽く跳脚して光を振り払うように体をこちらに捻らせる。
すると、背から二つの光る球体が飛び出し、曲線を描いてこちらに向かってきた。

「雷の球!?」

バルスは叫ぶと同時に球体をガードする。
すると雷球は激しい音と共に電撃を放出した後、チラチラと光る粒になって四散した。

ほのかな光を発して飛び去るそれはーーよく見知ったもの。

「これは……雷光虫?」

「ジンオウガは雷光虫から電気エネルギーを吸収してるみたいなんだ!」

もう一つの雷球を躱したヨルヴァがバルスの元に駆け寄る。

「大雷光虫とは少し違うみたいだね……ヨルヴァ、僕もシャワもジンオウガとは戦ったことがない。簡単でいいから奴の情報を教えてくれないか」

「オイラも下位の奴を一度倒したっきりだから、上位にどこまで通じるかは分かんないけど……」

「それでもいいわ。……無いよりは全然マシよ」

シャワが遅れて二人の元にやって来た。それを見計らって、バルスはジンオウガに向けて閃光玉を投げ付ける。
パン! と音を立てて中から眩い光が放出された。

「ウォォン!?」

「今のうちに!」

視界を奪われたジンオウガが遠くで暴れ始めたのを見届け、三人は情報の共有を急いだ。



     



「グルルルル……」

ジンオウガが首を振って視界を取り戻す。決して長い時間ではなかったが、三人は既に武器を構え終えていた。

「情報通り、帯電をさせないように立ち回るんだ!」

「了解!」
「了解よ!」

バルスの号令と共に行動を開始する三人。

ジンオウガの左右に展開した二人が同時に腹部を攻撃を仕掛け、シャワの弾丸は弱点である頭に標準を絞る。

「ウォォォ!!」

「「!?」」


綺麗な陣形が決まり、必ずダメージを与えられると思った刹那、近接の二人が大きく吹き飛ばされた。

「バルス! ヨルヴァ!」

「う……」

「今何が……」

何が起こったか理解出来ていない二人にシャワが叫ぶ。

「尻尾よ……!」

シャワは目撃していた。
ジンオウガが尋常でない速さで尻尾を、体ごと強引に振り回したのを。

「OK。大体は分かった……もう喰らわないぞ」

「オイラも……あー、何となく」

当たり所が良かったのか、二人はすぐに立ち上がって回復薬を飲み干すと、滋養効果を身体中に行き渡らせるためにぐいと体を伸ばす。
隙だらけでただ危険で無駄な行為に見えるが、これをしないと効果が半減……最悪回復したい部位に行き渡らず、傷を癒せない場合だってある重要な動作だ。
若手のハンターほどこの行為を疎かにし、窮地に陥ってから重要性を再確認するのだ、

「行ったわよ!」

「むっ」

「うわっ!」

シャワの声に二人はハッとする。
回復薬で隙を逃さず、ジンオウガ攻撃を仕掛けてきたのだ。
二人が横に跳んだ瞬間、ジンオウガの巨体がそこを埋め尽くす。

ヨルヴァはわずかに避けきれず、軽い裂傷を負うもすぐに武器を振るった。

「はぁぁぁ!」

厄介な尻尾に麻痺毒を塗り込んだ刃で切り込むも、ダメージの通りが良くないと腕の感覚が訴えていた。

「こいつ滅茶苦茶かてぇ!」

「尻尾が持ち上がった瞬間に裏側を狙うんだ! ほとんどのモンスターはそこが柔らかい!」

バルスは固い甲殻を避けながら的確に猛毒を注入していく。

「オォォゥ!」

そんな二人を鬱陶しそうにしてジンオウガは前脚を振り上げ、踏みつけを仕掛ける。

「くっ!」

ガードしたバルスだったが、全体重を乗せたその威力に大きく仰け反る。
完璧には防ぎ切れず、ダメージがビリビリと体に残ってしまう。

「なんて重い攻撃だ……!」

踏み締められた地面は盛大に陥没していた。
まともに当たれば即スクラップだろう。

「グルルルァァ!!」

一発防いだだけでも限界のバルスに向けて、更にジンオウガは脚を振り上げる。

「……っ!」

「させるかぁぁぁ!」

「ウウォゥ!?」

ヨルヴァの重い斧の一撃が頭部に直撃し、雷狼竜はたまらず怯む。

「助かった!」

「へへっ! 借りは返したかんね!」

猛攻を抜け出したバルスは一旦距離を取る。

「シャワ、もうすぐヨルヴァの麻痺と僕の毒が効いてくるはずだ! 『あれ』を使ってくれないか?」

その言葉にシャワが驚いたように口を開いた。

「あれを……この修羅場で? ……上手く出来るか分からないわよ?」

「大丈夫、信じてる! あいつがまだ本気じゃないうちにダメージを蓄積させたい」

「っ! 分かったわよ!」

それを聞いたバルスは親指をビッと立てると(古い)、ヨルヴァの加勢に走っていった。

「こんなことなら師匠にちゃんと教わっとくんだったわ……」

ボソリと呟いていると、交代するようにヨルヴァが下がって来た。
回復薬を一口に飲み干すと、一人で相手はきつすぎるよ……とぼやいた。

「ところでシャワの姉ちゃん、『あれ』って何やるの?」

竜人族の尖った耳は伊達ではないのか、先程の会話を聞いていたようだ。

「あなたの麻痺がネックなんだから早く戻りなさいよね……こうするのよ」

シャワがシルバースパルタカスに手をかける。
するとバラバラと三つに分解してしまった。

「こ、壊れた!?」

「違うわよ! パーツの付け替えをするの」

そう言いながらシャワは荷袋から白いパーツを取り出した。

「ボウガンのパーツ?」

「ええ。これは『テイルカタパルト』っていうライトボウガンの一部よ」

テイルカタパルトは雪獅子の剛毛に包まれた耐寒性を持つライトボウガンで、氷結弾を連続して撃てる『速射』という機能を持っている。

「シルバースパルタカスのバレルをこっちに付け替えて………これで氷結弾の速射が出来るの」

「すげぇ! 複雑すぎて何やってたか分からなかったけど……」

「師匠はもっと上手く……ってヨルヴァ! さっさとバルスの加勢に行きなさい!」

「は、はいっ!」

ビクリと肩をすくませて走り去るヨルヴァを見てから、二人に背中を任せて最後の調整に取りかかる。

「本当、どこ行っちゃったのよ……」

そう呟くと、いつものキリッとした目に一瞬哀愁の色が浮かぶ。

「シャワの姉ちゃん! 麻痺ったよー!」

「毒もかかった!」

「! OK、いくわよ!」

シャワは頭に浮かんだ雑念を振り払うと、ジンオウガに向けて引き金を引いた。






「はぁ……はぁ……」

「………遊ばれてるのかな?」

「考えたくもないわね……」

戦闘開始から二時間が経とうとしていた。

未だに帯電のモーションすら見せないジンオウガに振り回され、三人はベースキャンプで三度目の休息をはかっている最中である。

「回復薬は二人でシャワの分まで使ってしまったし……これが最後の回復手段だね」

バルスは先程届いた応急薬を分配した。

「私は一つでいいわ。被弾しやすいあなた達が……」

「いや、恐らくあっちもダメージは溜まってるはずだ。次で必ず帯電を図ってくると思うから、シャワも用心して持っててくれ」

「……分かった」

「あれだけやって角を一本折っただけだもんなぁ……体力的にそろそろやばいよ」

くたっとベッドに座り込んでいたヨルヴァが「んん」と立ち上がる。

それは他の二人も同じ。
リタイヤも考えたくなる状況だった。

士気を上げなくては……と考えたバルスがあることを思い立った。

「ねぇ、ヨルヴァ。ジンオウガって雷属性でしょ?」

「ん? そりゃ見たら分かるよ」

「あいつの武器作ればさ、楽に雷属性のが出来るんじゃない?」

「!!!!」

ヨルヴァの顔色が目に見えて変わった。

「さぁ! 二人とも! 早くジンオウガをぶっ倒しに行こうよ!!」

「仕方ないわね……ケリをつけに行きましょうか」

ムードメーカーのヨルヴァが復活したお陰でシャワにも気力が戻る。

「よし、次で最後だ! 決着をつけよう!」

三人は掛け声と共に武器を拾い上げた。




     
――――――――――――


いつからここに棲んでいたのかは思い出せない。

だが『ハンター』と呼ばれる人間がやって来るようになる前からいたことは確かだ。

奴等は何度も私に挑んできた。
私は何度も奴等を蹴散らした。

回数を重ねる毎に小賢しい手段を使ってくる奴等に対し、私の体はより敵を倒す為に特化していった。

何時しか私はその競争に勝ち、手錬れのハンター達は限界を悟ったのか手を引いた。
残った馬鹿な連中は私利私欲のままにぶつかって来るだけ。

だから私は次第に本気を出すことをやめていった。


そんなつまらない日々が続いた今日、面白い連中がやって来た。

何度蹴散らそうとしても立ち上がり、あの手この手で私を倒そうと向かってくる。

昔の連中が帰ってきたような、そんな懐しい気持ちが込み上げた。

連中の孫だろうか?
曾孫だろうか?

元気のいい奴等だ。
悪くない。


恐らく最後になるだろう戦いに備え、私は久しぶりに雷光虫に呼び掛けた。


――――――――――――



「……向こうも準備万端ってわけだ」

「……あれがジンオウガの本気なのね」

「二人共! しっかり!」

バチバチと強力な雷光を身に纏う雷狼竜に一瞬圧倒される二人にヨルヴァが声をかける。

「勿論、大丈夫だよ」

「同じくいけるわ!」

「ウォォォォォォォ!!」

ジンオウガが空に向かい雷鳴のような音量で吠える。

それを合図にバルスとヨルヴァは武器に手をかけて走り出す。
シャワはすでに撃ち終えた氷結弾の代わりに通常弾Lv2を装填、先制攻撃を仕掛けた。

「はぁぁぁぁ!」

走った勢いのままにトキシックジャベリンを突き立てる。
その傷口には猛毒が注ぎ込まれるも、耐性が出来つつあるのだろう、序盤のような効果はもう望めない。

「麻痺ももう無理っぽいっ!」

ヨルヴァもジンオウガの間を縫いながら剣形態のバンカーバスターで切り込んでいるが、同じような手応えを感じているようだ。

「でもダメージは通ってる! このまま一気にいこう!」

「おっしゃ!」

強化ビンが切れたヨルヴァは流れるように形態を斧に戻し、そのまま横凪ぎに打ち付ける。

「グルルァァ!」

「ふっ……ふっ……!」

ジンオウガの三連続で打ち込まれる踏みつけをステップで躱し、最後の一撃にカウンターを試みた。

「せいやぁぁぁ!」

耐えに耐えた力を返すようにして放った一突きは、ジンオウガの胸部に大きな傷をつけることに成功した。

「ウォォォォォ……」

今の一撃が効いているのか、ジンオウガは普段とは違う静かな咆哮を上げ始めた。

「んっ!?」

チャンスだと攻め込んでいたバルスの足元が光り始める。

「うわぁぁぁっ!!?」

突如バルスが地面から現れた一本の雷の柱に包まれ、吹き飛んだ。

「バルス!?」

シャワの位置からは、ジンオウガの周りに次から次へと雷の柱が現れるのが見てとれた。

「止んだ……今だ!」

雷の柱が止み、隙が出来たと感じたヨルヴァが一気に間合いを詰めて切りかかる。

「待って! まだ……!」

何か嫌な予感がして叫んだシャワだったが、その瞬間ジンオウガから特大の雷光が吹き出し、ヨルヴァはそれをまともにそれを喰らってしまった。

「がっ……!?」

「ヨルヴァ!!」

吹き飛んだバルスとヨルヴァはダメージが大きく、電撃の痺れも相まって立ち上がることが出来ない。

「今粉塵を………!」

シャワが生命の粉塵を使おうと急いでポーチに手を伸ばすが、そこに信じられない光景が飛び込んできた。

「バルス!!! 避けて!!!」

ジンオウガが巨体を奮わせ、まだ起き上がれないバルスに向かって突進していたのだ。

「……っ!!」

バルスは何とか盾を構えるが、不意にジンオウガの姿が目の前から消えた。

「……えっ?」

「上ぇぇぇぇぇぇ!!」

「―――っ!?」

上を見上げた時には既に遅かった。

ーージンオウガはバルスの手前で大きく跳脚。
そして鋭く尖った背中を下にしてバルスへと落下していたのだ。




落雷が落ちたかのような轟音が響く。



粉々に砕けたトキシックジャベリンの盾の破片がこちらまで飛んでくる。



「あ…………」

バルスはエリア端の岩に叩き付けられていた。



「――――っ!!!」

シャワは持っていた持っていた粉塵全てを一度に振り撒いた。

白い粉は輝きながら周囲に広がり、三人を癒す。
しかしバルスはピクリとも動こうとしない。


「兄ちゃんっ! ……何寝てんだ! 起きろよぉっ!!」

粉塵で回復したヨルヴァもその光景に唖然とし、叫ぶ。

ジンオウガはそんなことは意に介さずといった様子でこちらに向き直った。
仕留めた相手には興味がない、とでも言いたげに。


「……うぁぁぁぁぁぁぁ!」

頭が真っ白になったシャワが通常弾を乱発する。
乱雑に飛んだそれは辺りにばら撒かれ、無数の穴を作った。


「うわっ! 姉ちゃん落ち着け! まずは兄ちゃんをキャンプまで運ばないと……!」

何とか冷静を保っていたヨルヴァが、ジンオウガの動きを止めようと閃光玉を投げつけた。

しかし、

「嘘だろっ……!?」

ジンオウガはふいと顔をそむけて閃光を回避してみせたのだ。

「……なら倒すしかねぇじゃねぇかぁぁぁぁ!!」

そのあり得ない光景と現状にぷつり、頭に血を昇らせたヨルヴァが弾丸の嵐の中を走る。

中心となる人物が崩れると、どれ程パーティーは脆くなってしまうのか。
そんなことを思わせる壮絶な光景がそこには広がっていた。

冷静さを欠いたハンターの先にば死゙があるのみ。

初めに叩き込まれた重要な教え。
しかし今の二人には思い出す余裕すら無かった。


――――――――――――

もはや狩人とは言えない無様な姿だな。
たった一人殺しただけでこの有り様……やはりこいつらも奴らと同じか。

無謀に走り、近付いてくる少年に向けてジンオウガは脚を大きく振り上げた。

これで終わり、か……。
少しは楽しめたが、残念だ。

さあ降り下ろそう、そう思った時である。

ゾクリ、とジンオウガの長年の勘が危険を告げた。

何だ……?

ジンオウガは降り下ろそうとした脚を止めて後ろを振り返る。



死神を見た気がした。


――――――――――――

「嘘………」

「兄ちゃん……!」


その異様な光景に二人はハッと意識を取り戻した。

ふらりと立ち上がったのは一人の、一匹の黒い死神。

それは砕けて機能しない盾を投げ捨てて両腕で槍を掴むと、人間とは考えられないような速さで駆け出していた。

「グァァァァ!」

ジンオウガがそんな『死神』を迎え撃とうと尻尾を円を描くように振り回す。

『死神』はそれをジャンプして躱してみせると、その勢いで槍をジンオウガの背中に突き刺した。

「―――ッ!?」

あまりの痛みにジンオウガがのけ反って暴れまわる。
槍を引き抜きながら再び跳脚すると、『死神』はシャワの近くへと降りたった。
ジンオウガは背の痛みに地面を転げ回り始める。


「ば、バルス……?」

槍を片手にふらふらと立っている男に恐る恐る声をかけた。
普段は何となく読める表情が全く読めない。
そんな『死神』が反応するかのようにシャワに向き合った。

「…………」

虚ろに空いた双方の眼孔からは、怪しげな紅い光が溢れている。

(正気……じゃない!?)

そう感じたシャワの行動は早かった。

「……このっ! しっかりしなさいよ!!」

鋭い平手が髑髏に響く。

「――っ!??」

ふうっ、と光が消えて眼孔は元の漆黒に戻った。

「あれ? ……ん? シャワ?」

「……心配かけさせるんじゃないわよ!!」

ぼけっとしているバルスにシャワが怒鳴る。

「いやぁ、ごめん……あいつの一撃を受けてから記憶が無くてさ……。粉塵使ってくれたの? ダメージが抜けてるね」

「無意識であんな動きをしたっていうの……?」

「あんな動き……? あれ!? 盾が無い!」

空いた片手を見て驚いた声を上げる。
本当に意識が無かったようだ。

「さっきの攻撃で砕けたのよ!」

「あ、そっか………ん?」

バルスがトキシックジャベリンを両手でくるくると振り回しながら首を傾げた。

「どうしたの?」

「このスタイル……何故かな? しっくり来るんだ」

「しっくり?」

「うん。昔……こうやって戦ってたみたいな……」

「! それって記憶が……!」

「それはさっぱり。ん、取り敢えず話は後だ! あいつを倒す!」

話している間にジンオウガが起き上がり、距離の離れていたヨルヴァを狙おうとしていた。

ごくりと応急薬を飲み干すと、再び片手に槍だけを持った状態でジンオウガへ向かおうとしたが、ピタリと足を止めてシャワを振り向く。

「あとさ、シャワ」

「何……?」

「今凄く言いたい台詞があるんだけど……」

「………言いなさいよ」

くだらない事を言う予感がしたが、ダメだと言っても言うだろうから了承する。


「盾なんか飾りなんだよ!!」

「…………今の状況でそれはないわ」


そう言ったバルスの姿は素晴らしいほど晴々しかったという。




「兄ちゃん! 無事で良かった……ってなら早く援護してくれよ!」

バルスが到着してみると、汗だくのヨルヴァがジンオウガの攻撃をギリギリで、半泣きで避けてながら応戦していた。

「ごめんごめん!」

そう言いながらバルスはトキシックジャベリンを振り上げる。

「だぁぁぁぁぁ!」

斜め上から袈裟懸けに降り下ろし、その軌跡をなぞるように切り上げる。

そして頭上で槍をヒュンヒュンと回しながら跳び、遠心力と重量を乗せた一撃を頭に叩きつける。
トキシックジャベリンの柄が大きくしなり、ジンオウガは弾かれたように仰け反った。

「グォォォ!!?」

そんなトリッキーな動きと攻撃にジンオウガは対応しきれず苛立たしげに呻く。

「あんな動き見たことねぇよ……」

限界……っ! と一度戦線を離脱していたヨルヴァがあんぐりと口を空ける。


重く堅牢な盾を無くすことで身軽になり、リーチが長く素早い攻撃を繰り出すことが可能になったバルスの新しいランスの型。

その変化は片手剣から双剣に派生した事象によく似ていた。

「はぁぁぁ!」

疾風のごとき突進を可能にする強靭な脚力と、突き立てた槍の反発力で飛び上がり、空中からの襲撃も可能にする。

それは巨体の欠点である大きな死角を、最大限に活かした戦法でもあった。

「あぁぁぁぁぁ!!」


バルスは切り裂こうと振り回した凶爪をひらりと回避し、その腕を踏み台にして一気に駆け上がった。
無防備な背中を槍で執拗に攻撃していく。

「ウォォォォォ!!」

痛みに悶えながらも雷狼竜は体を振るってバルスを振り払うが、既にバルスは地面へ降り立った後であった。

「グルルルル………」

深手を負いながらも、激しい敵意を剥き出しに唸るジンオウガ。

果てが無いと思われた戦いの終焉が今、確実に近づいていた。

「バルスばかり活躍されちゃたまらないわ! 私達も加勢するわよ!」

「ラジャ!」

ヨルヴァの斬撃が後ろから、シャワの弾丸が横からジンオウガを襲い、バルスに向けられていた意識を散乱させた。

「ありがとう! 一気に攻め立てるよ!」

援護をうけ、バルスも武器を強く握り直す。

「だぁぁぁぁぁ!」

その間もヨルヴァのバンカーバスターはジンオウガへ麻痺の刃を食い込ませていく。

「……ッダメだ! やっぱ麻痺は止めて斧モードで……」

「ヨルヴァ、そのまま攻撃を続けて! 私がチャンスを作るわ!」

「――っ! 了解! 頼んだぜ、シャワの姉ちゃん!」

「ほらほら! こっちだよ!」

シャワとヨルヴァがチャンスを作ろうとしている間、バルスは上下左右へとジンオウガの周りを駆け回り、翻弄していく。

「ウォウゥゥゥ………!」

何とか仕留めようと食らいついていたジンオウガだったが遂に動きが鈍り、涎を垂らし始めた。
疲労状態に陥ったというサインである。

「今よ! これを喰らいなさい!」

シャワは大きな反動を受けながら特殊な弾丸を撃ち放った。
カラ骨にゲネポスの牙から抽出した麻痺毒をふんだんに詰めた、麻痺弾Lv2である。

「おー! 麻痺った! ……ってことはぁ」

ヨルヴァがニヤリとし、バンカーバスターを引き戻す。

「再びこいつをぶつけるチャンス到来だぁぁぁぁぁぁ!!」

バンカーバスターから強力なエネルギーが溢れ出て、ジンオウガへと流れ込む。

「はぁぁぁぁぁ!」

それに合わせ、バルスが重心を落としトキシックジャベリンを高速で何度も突き出した。
暴風のような突きの嵐はジンオウガの固い甲殻をお大きく削り取っていく。

(必殺! 五月雨突き! ………なんてね)

(バルス……攻撃しながらにやけてる気がする……気味が悪いわ!)

「これでフィニッシュだぁぁぁぁぁぁ!」

本日二回目のエネルギーの収束。
それは運良くか、ジンオウガの急所で解放された。

「オォ………ォォ」

爆炎が晴れると、もはや瀕死の状態のジンオウガそこに立っていた。
そしてゆっくりと地面に倒れ始める。

「……クエスト完了っ!」

疲労困憊のヨルヴァが叫びながらどさり、と腰を下ろした時。

「ウォォォォォ!!」

「……えっ?」

ジンオウガは倒れかけた体を前足を突き出して支え、シャワに向けて走り始めたのだ。

「ひっ……!!」

安心した瞬間に起きた出来事に固まって動けないシャワ。

「姉ちゃん! ……くそっ! 動けよっ!」

すぐに起き上がろうとしたヨルヴァだったが、足はすでに疲労の限界を越していたらしく、全く動こうとしない。

(避けなきゃ………避けなきゃ……っ!)

そう必死に念じるものの、完全に体が竦み上がってしまっているシャワは、迫り来る猛威をただ見ることしか出来なかった。

後5メートル。
ジンオウガにとってはたったの一歩だ。

(もう……ダメ……)

目をつぶろうとした瞬間、黒い壁が目の前に立ちはだかった。

「大事な相棒に手を出さないでくれるかな?」

「!?」

ハンターにとって命そのものである武器――トキシックジャベリンをも投げ捨てて走ったバルスが今、シャワの前で仁王立ちしていた。

「ば、バルス………」

勿論、人ひとりが壁になったところでこの巨体を止めることは出来はしない。

だがバルスが前に立った瞬間の、言いようの無い安心感は今でも忘れられないと、後にシャワはそっぽを向きながら語ることになる。



「う、嘘………」

「これは一体……」

ジンオウガを前に二人は唖然とした声を漏らした。

「ウォルルゥ……」

バルスが壁となって立ちはだかった瞬間、ジンオウガはピタリと突進をやめた。
そしてまるで我が子にかけるような、そんな優しい声で鳴いた後、ゆっくりと地面へ伏したのだ。

パァッとジンオウガから雷光虫が一斉に飛び去る。

ーーそれは宿主の完全な死を物語っていた。

「なんか……『ありがとう』って言ってた気がしたわ」

シャワがぼそりとバルスに呟く。

「奇遇だね、僕もだ。……ねぇ、どういう意味だったんだい?」

そう言ってバルスは傍らで眠るジンオウガに語りかけるも、その口が再び開くことは無かった。


「二人ともー! 大丈夫!?」

バンカーバスターを杖にして、ヨロヨロとヨルヴァが歩み寄ってきた。

「平気よ! 今度こそクエスト完了ね」

「よかったぁ! あ、へへっ……実は二人に見せたいものがあるんだ!」

身体中傷だらけのヨルヴァがニシシと笑う。
どこで拾ってきたのか、ふらふらと振っている手には碧色の玉がしっかりと握られていた。



◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆



あれから二年。
オイラは修行の旅を終えてこの港町に帰ってきた。


身長は全然伸びなかったけど、実力は大分ついたと思う。

あの二人は無事に仲間と会えてるのかな?
オイラもそんな仲間が早く欲しいなー……。



……うん! ここならすげー出会いが出来そうな気がする!

あの二人に負けないくらい、最高にいい仲間を見つけてやる!


「こんちわー!! おぉ、すげぇ人数だ……なんかいいクエスト、黒ティガとか貼ってないかなぁ?」


そう言って酒場の門を開いたヨルヴァの背中には、黄と碧のスラッシュアックス――王牙剣斧【裂雷】が堂々と背負われていた。


                        【次章へ】
プロフィール

楽太郎

Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
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