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聞いていてふいっと思いついたので替え歌を作ってみました。


本家様の『ヤンキーボーイ ヤンキーガール』もとても良い曲なので、
知らない方は是非とも聞いてみていただいきたいです!


【ハンターボーイ・ハンターガール ver MH4】


きっと狩り場は報われない
捕獲 報酬 バット アンダーグラウンド
先制食らった五分針だって
リタは却下された
きっと報酬に望みはない
大人たちの凝った仕組み(物欲センサー)

重厚武骨な武器を片手に
頭を叩いて殻を割って
切った尻尾剥いで
咽ぶ狩人
クエの報酬
マカライト
君が拾った竜の涙は
ゼニーに換金される
期待なんてないんだ
荒んで三乙
言い訳ばっかり上手くなる
地道な尻尾切りリタマラで
狩り場を、往復しよう

何度切って尻尾剥いで
「君の逆鱗【セイギ】はなんなの?」って
ねえ
ハンターボーイ
ハンターガール
声枯らし吠えてみな
電池切れて(データを)無くしたって
代わりに腕が覚えてるから
ねえ
ハンターボーイ
ハンターガール
きっと勝てるだろう

凶竜化のティガ
氷海のザボア
ネルスキュラにゲネル・セルタス
ガララアジャラにギルクエのキリン
さあシャガル討伐の準備を

唸るクシャルダオラ
威嚇の胎動
鍔迫り合い
残り五分で二死目献上
取り返しのつかないこと(三乙)を怖がってた
空のポーチ
破られた自慢の戦法
戻ることないその自信
秘薬忘れ何より確実な勝利を選んだ(サブタゲ)

未知との遭遇
黒蝕竜
皆が乙ってしまう前に
ねえ
ハンターボーイ
ハンターガール
ディアブロ(故)のように進め
凄く錆びた槍も鎚も
上位になってしまう前に
ねえ
ハンターボーイ
ハンターガール
今すぐに強化したい

倒れるハンター
涙を拭ってリタした
上位になれないまま
下位装備のまま

何度も殺られ殺気立って
「君の狩魂【せいぎ】はなんなの?」って
ねえ
ハンターボーイ
ハンターガール
皆と笑って狩りたい


明日も明後日も


何度乙って倒れても僕は狩りがしたい
ねえ
ハンターボーイ
ハンターガール
一人じゃ無理だから
君のクエに憑いてゆきたい
――別にいいんじゃない? 行かせても。




人々を守り、ハンター達の安全と秩序を守るのがギルドナイトの役目。
そのシェリーがはっきりと口にしたのだ。



二人の人間を捨て駒にしろ、と。



「……おい、何ふざけたこと言って……――っ!」


怒鳴ろうとして、フレアは思わず後ずさってしまった。



「………」


じっと二人を見据えるシェリー。
口に嘲笑を浮かべてはいたが、彼女の目にはそれほどの殺気が込められていた。

そしてシェリーは、ゆっくりとフレアに向き直る。


「少しでも黒龍の動きを把握したいのよ。どうせ早死にする種類の輩なんだし、折角なら役立てないと……ねぇ?」

「お前っ……!」


――本気で言ってるのか?


フレアはそう怒声を吐くつもりであったが、それよりも早くシェリーの雰囲気はいつもの穏やかさを取り戻していた。

「ふふ……冗談よ。ちゃんと死なれる前に助けてあげるわ」

「……本当か?」

「ええ」

微笑を浮かべてニッコリと頷く彼女。
そう言われてしまうとフレアにはもう先の話を蒸し返すことは出来ない。
シェリーは黙る彼を通り越すと、睨み合っているチョモの横に行きやんわりと肩に手を掛けた。

「チョモ、ありがとう。もう大丈夫よ」

「え? でも……」

戸惑うチョモを尻目にシェリーは、男達に向かって先程とはかけ離れた、可愛らしい声色で話しかけた。

「――それじゃあ、ここは頼もしい貴方達にお願いしちゃおうかしら?」

「お、そっちの姉ちゃんは物分かりがいいなぁ!」

「へへ。なら早く後ろに下がってろ、じっくりと見物でもしてな!」

男達は自信に溢れた顔でそう言うと、足取りも大きく黒龍が降りて来るであろう場所へ歩き出してしまった。


「ええ……そうさせてもらうわ」

「……」

ポツリとそう呟くシェリーの後ろでフレアはじっと空と、遠ざかる男達を見つめていた。





「くっ……くくく……」

ダノンは笑いを堪えきれずにいた。


(今日はついてやがる! まさかこんなに早く最強のハンターに名を連ねるチャンスが来るなんてよぉ!)


笑みを堪えて思わず横を歩くライザーに目をやる。
すると彼も同じ顔をしていたので、ダノンの感情は更に高ぶった。

「くく……おぅ、ライザー! 抜かりはねぇな!?」

「へへ……あぁ、ダノン! 回復薬に薬草、それに奮発して回復薬グレートだって持ってきた!」

「完璧だな! リオレウスやグラビモスだって俺らの敵じゃなかった! 黒龍なんて名前ばかりの張りぼて野郎、目じゃねぇぜ!」

「だな!」

実際には、リオレウスやグラビモスを無事に討伐出来たのは彼等を手伝った他のハンター達の活躍が大半だった。
ここまで五体満足でいられるのは本当に運のいいことでしかない。
しかし、そんなことにも気付けない実力のままにここまで来てしまった二人。

古龍に挑むというのに舐めきり、補助の道具は一切持ち込まず、用意したのは先程言った回復系統と僅かな砥石のみ。

二人の実力はフレアの見込み通り、上位のイャンクックを二人でようやく討伐出来る程度のレベル。


経験不足の上に無駄な自信を着飾った彼らには、近付いて来る黒龍の圧倒的な気配にも気付くことが出来ないでいたのだ。




――そしてその時が来る。


「……うお」


「で……でけえな……」


彼等の上空を覆い尽くすのは漆黒の闇にも劣らない黒一色。
間もなく降り立とうとする黒龍を見て、二人は本能的に生唾を飲み込んだ。


――今まで見てきた相手とは、何かが違う。


臆病風に吹かれそうになった二人だったが、そこでダノンが負けじと啖呵を切った。


「はっ! こんなやつ図体だけだろ! ライザー、とっとと終わらせようぜ!」

「お、おう!」


「しゃあ! なら先手必――」


二人が武器を取り出そうとした瞬間――彼等は五メートル近く吹き飛ばされた。



「……ぐっ………ぁ……?」


「な、なん……だ……?」


黒龍は只、地面に降り立っただけのこと。
その際の強烈な風圧に押されただけなのだが、二人は何が起こったのか分かっていない。

「やってくれたな! こんな攻撃痛くも痒くもねえよ! ライザー、いつまで寝てんだ!」

「お、おう。へへ、この程度なら余裕だな。おい! 今度はこっちからいかせてもらうぞ!」


『………』


二人が再び武器を構えると、黒龍はようやくその存在に気付いたように二人を見つめた。


「何だ? 何見てやがるんだ! お前は今から俺様達に殺られるんだよ!」


しかしミラボレアスの視線は吠える二人をすぐに通り越し、その後ろで自分を射るように睨んでいる三つの目線と交差した。
そして始めて敵意の色を水晶の瞳に浮かべる。

「あいつ……見ただけでハンターの実力が分かるっていうのかよ」

「そのようね」

フレアは改めて敵のレベルを痛感するが、今はまだシェリーの指示で動くことは出来ない。

そんなとき、横にいたチョモが大きな声を出した。


「何か来るっ!」


チョモがそう言った時には、すでに黒龍は長い首を後ろへと引っ込ませ始めていた。

「あの動作、まるで反動をつけてるみたい……でもあの距離じゃ何も……まさかっ!」

チョモが目を見開いたのと同じ時、ダノンも奇跡的に何か本能的な危機を察知していた。


「……ライザー……た、盾だ」

ぽつり、呟く。

「え?」

「……盾だ」

「だから盾がどうし――」

「いいから早く盾を構えろライザァァァァ!!」


「――!?」


ダノンの絶叫。
ライザーが盾を構えるのと、ミラボレアスが巨大な火球を放ったのはほぼ同時であった。


激しい爆発音と黒い煙が上がり、一瞬で二人の姿が消え失せる。


(なんて威力だ……っ!)

フレアは思わず息を飲んだ。
リオレウスの火球が可愛いものに見える、そんな光景だった。



「はぁ……はぁ……助かったぜダノン……」


そんな中、徐々に晴れる煙の中から声が聞こえた。

「あ、ああ……俺に任せりゃどうってことねぇよ」


現れたのは肩で息をしながら盾にしがみつくように立っている二人。

「あいつら……よく無事だったな」

「元々あの火球は私たちを狙ったものだからよ。真芯なら消し炭だったんじゃないかしら。ミラボレアスはあの二人なんて初めから見てやしないわ」

「………」

フレア達がそんな会話をしている時、ダノン達にはある異変が起きていた。

「それにしてもよく防い――っ!? おいライザー、盾っ!」

「え? うわっ!?」

二人は慌てて盾から飛び退いた。
溶岩の温度にも耐えるはずの鎧竜の甲殻で作られた盾が、水飴のように溶け始めたのだ。

「う、嘘だろ……こんなんまともに喰らったらお陀仏じゃねえか……!」

「お、おいダノン! 『黒龍は伝説だって持て囃されてるだけで大したことない』なんて言ったのはお前だろ!? どうなってんだ!?」

ライザーが発狂したようにダノンに掴みかかるが、ダノンも顔面を蒼白にさせている。

「お、俺だって知らねえよ! 俺はただ――ひぃっ!?」

ズシリと、黒龍の巨体が一歩二人へと近付いた。
自分の攻撃を邪魔した二人に、先程には無かった殺意が向けられているのは間抜けな二人でも分かった。

「あ……あぁ………」

「た……助け……」

ここに来て二人はようやく自分たちがとんでもない勘違いをしていたことに気が付いたのだ。

「うわぁぁぁぁぁ! 助けてぐれぇぇぇぇ!!」

「お、おい待てよライザー! 俺を置いていくなぁぁぁ!!」

情けない、悲鳴にもならない声を上げながら武器を捨てて一目散に城の出口へと走る二人。

そんな二人に向けて、黒龍はすぐに追撃の火球を放っていた。

「危ない!!」

思わずチョモが叫ぶも、盛大にわめき声を上げながら走る彼らにはまるで聞こえていない。
無防備な背中には灼熱の火球が凄まじい速度で迫っていく。

「シェリー! どうしよう!?」

「………」

シェリーはじっと彼等を睨んだまま動こうとしない。

「ふ、フレ――うわっ!?」

ならばフレアにと振り返そうとしたチョモ。
しかしその瞬間、巨大な爆発音と同時に赤い爆炎が舞い上がり、二人の姿はまたも炎に包まれて見えなくなった。

「もう……駄目だ。やっぱり殴ってでも止めるべきだったんだ……」

どんな人間でも、目の前で死なれるのは辛い。


(……むしろ死なれる前にとりあえず殴りたかった)

チョモは後悔でギリリと拳を握っていたが、次の瞬間思わず耳を疑った。
なんと「ひぃぃぃぃぃ!」と言う耳障りな声が煙の中から聞こえてきたのだ。

「嘘っ!? 何で!?」

煙から出てきたのはすす汚れたダノンとライザー。

今のは確実に真芯だったし、武器を捨てた彼等に防げるものは何もないはず。

「一体何が……――えっ!?」

そう言いかけてチョモはあることに気が付いた。

「嘘……いつから……じゃ、じゃあ……!」


慌ててチョモは爆煙の中を見る。
隣にいたはずのフレアの姿は、いつの間にか消えていた。







「ぐっ………何とか持ってくれたか……」

苦しげにそう言って煙の中から現れたのは、輝剣リオレウスを地面に突き刺して押さえているフレア。
膨大な熱量を受け止めたであろう白銀の大剣からは、白い煙と陽炎がゆらゆらと立ち上っている。

そして熱を持ったままの大剣を引き抜き、今度はミラボレアスに向けて突き立てると、フレアは不敵に言ってニヤリと笑って見せた。

「おい、お前の相手は俺等だろ? メインディッシュ前にしてつまみ食いなんてしてんじゃねぇよ!」


『…………』


彼の言葉を理解してかしないでか、黒龍はただ形容しがたい唸り声を上げてじっとフレアを睨んだ。




「シェリー……訳は後でたっぷり聞き絞ってやる! だから今はこっちに集中しろ!」

睨み合った状態でフレアは、後ろのシェリーに向かって声を張った。

「………!」

シェリーの目が軽く見開かれる。

「アンタが考えてることは分からない。だけどな――」

フレアは話す。

シェリーは二人が死に直面しても動こうとしなかったこと。
あの時、微笑みながら小首を傾げなかったこと。
それはフレアが唯一の知ってる彼女が嘘をつく時の癖だったこと。


だからこそ、フレアはすぐに飛び出すことができたのだ。

「後で、ちゃんと話してくれよ。何で俺に『こんな真似させたのか』をよ」

「……ええ、分かってるわ」

シェリーは伏し目がちにそう言って、再び目に力を宿した。
そして黒龍と向き合っているフレアの元に駆け出した瞬間、チョモに向かって一言呟く。

「――ちょっとここ、お願いね」

「もちろん」

チョモはシェリーの言葉を瞬時に理解して武器を構えた。


――自分だってむしゃくしゃしているのだ。


そしてチョモは、走り去るシェリーと代わるようにこちらに走ってきた二人に向け、勢いよくアヴニルオルゲールを叩き付けた。

「ひぃっ!?」

「うわぁっ!?」

二人の鼻先を掠めて地面にクレーターを作った狩猟笛を見て、再び尻餅をつく二人。

「何すんだ! は、早くどけっ! 今はそれどころじゃ……――ッ!?」

慌てて文句を言おうとしたダノンだったが彼女の表情を見た瞬間、固まったように動けなくなってしまった。

――それに、分からないことだらけのあの二人の会話。それもかなりムカツク。

――でもまずは『コイツら』だ。


「おい、今は――なんだって?」


お伽噺の中にしかいないはずの般若が、そこにはいた。

「あ……いや、その……」

それを見て、冷や汗をどっと吹き出したダノン。
ライザーに至っては顔面蒼白で体をガタガタと震わせている。

流石の二人もチョモの形相を見て、吹き出ている殺気が致死量に達している事には気付けたらしい。



「アンタ等、あんだけでかい口叩いておいてさぁ……すぐに尻尾巻いてとんずらこいて……挙げ句の果てに命まで助けて貰ったってのにさ、何? その態度」

「い……いや……」

口調は静かなものだが重さが違う、目などもはや直視出来ない。

(こ、このままじゃどっちに行っても間違いなく殺されちまう……どうしたら……)

ダノンの頭の中はこの状況をどう逃れるかだけで一杯だったが、次の瞬間そんな思いは掻き消された。

「おい! 話聞いてんのか!!!」

「――ッ!?」

慌てて顔を上げると、狩猟笛を今にも叩きつけそうなチョモの姿があった。

「き、聞いてる! 聞いてるよ!」

あたふたと手と首を振って必死に否定したが、それは彼女の表情は更に厳しくさせるだけであった。

「いいや、あんたのさっきの顔はここからどう逃げようかってだけを考えてる顔だったよ。あんまりアタシの眼、舐めんなよ」

「ぐ……だ、だけど……もう俺達には何も……」

苦し紛れにライザーそう言った瞬間、チョモはニコリと笑った。

「あんた達さ、回復薬沢山持ってるんだよね?」

「あ、あぁ」

「そうだ、が……」

意味が分からないと言うように頷く二人。

「ならさ、『広域化』のスキルはついてる?」

広域化――支援スキルの一つで、自分が飲んだ回復薬や解毒薬などの効果を周りのハンターにもリンクさせるという不思議な効果をもたせるスキルだ。
身に付ければサポート力を大幅に上げることが出来るがその反面、スキルを得るのは容易ではない。
もちろん二人もそんなスキルなど持っているはずなく首を振ったが、チョモはうんうんと笑顔で頷いてみせるのだった。

「大丈夫大丈夫、アンタ等どうせ装備のスロットなんて使ってないでしょ? 見て。ここに私が趣味で持ってきた大量の友愛珠がありまーす!」

そう言ってポーチから取り出したのは、桃色に光る広域化の力を秘めた珠の山。

「そ、それを一体……」

とても嫌な予感がしたダノンだったが、聞かずにはいられなかった。
チョモの貼り付いたような笑顔が、今は無性に恐ろしい。

「勿論、アンタ等につけて支援してもらうんだよ。たださぁ、その装備のスロット一杯に取り付けても全然足りないだろうし、私も素人だから規定量取り付けても効果は薄いと思うんだよねー。だ か ら ぁ……」

ダノン達が息を飲む中、チョモの笑顔はゆっくりと般若に戻っていった。

「お前等の穴っちゅう穴に珠詰め込んでやるよ!! 広域化+2……いや+3になるまでつけてやっから黙って後ろで支援しやがれ!!」

「んなっ!? +3なんて聞いたことな……――い゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」








「おい……後ろから汚ねぇ悲鳴が二重で聞こえるんだが、アイツ何してんだ?」

黒龍と向き合っている最中のフレアは、隣へやって来たシェリーを見るなりそう呟いた。

「さぁ? でももう彼女もこっちへ来るみたいだし、『いろいろ』と楽になりそうね」


そう言いながらも視線は外さず。

「はぁ……アイツやっと昔の面影が戻ってきたと思ってたのにここに来てまた振り出しかよ……」

「あら、一概にそうとは言えないんじゃない? 貴方だって分かってるでしょう?」

そう言いながらも構えた武器は一切ぶれず。

「まぁ……な。おい、雑談はこれくらいにしとかねぇと、奴さんも待つ気は無いみたいだぜ」




『イ゛ィア゛ァァ゛ァァァァァァァ゛ァァァ゛ァァァァ゛ァァァ゛ァァァァ゛ァァァァァァァァァ!!』



敵意を交差させた相手は遂に戦いの合図を轟かせた。


それは、その叫びはどこか、悲痛な人間の叫びにも似て。
何千、何万もの悲痛な大合唱となってフレア達の耳に襲いかかる。


「うおぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「はぁぁぁぁぁ!!」

そんな咆哮に二人は怯むどころか真っ向から向かっていった。


片や、肩に背負った大剣の柄をあらん限りの力で握り締め。

片や、両手に持った双剣の切っ先を目先の黒塊に向け。

龍とハンター。
その二種しか存在いないこのシュレイド城の大広間で今、各々の存亡を賭けた戦争が始まろうとしていた。
駆ける狩人が二人。

目の前に君臨するのは、伝説の古龍――ミラボレアス。

「はぁぁぁぁぁぁ!」


フレアはそんな古龍に向かい、輝剣リオレウスを勢いに乗せて振りかぶった。

相手は巨体で、大剣の巨大さをもってしても攻撃が届くのは両足と腹部のみ。
加えて相手は未知の敵、並みのハンターなら咄嗟の判断に迷うだろう。

「おらぁぁっ!」

彼は迷わず片足を切りつけていた。
裟懸けに切った剣先から、小さな爆炎が舞い上がる。
切り口を焼くことで敵の回復力を押し止める火属性武器の、最大火力を誇る輝剣リオレウスの一撃。

『…………』

しかしミラボレアスはまるで効いていないかのように微動だにしなかった。


「痛―――ってぇ!?」


まるで鉄の塊に切りかかったような感触。
炎こそ舞い上がったものの、フレアの大剣は大きく弾かれていた。

「くそっ……足は固い部位だったのか!」

「違うわ、よく見なさい!」

痺れる腕を抑えながら悪態をつくフレアだったが、横から声にもう一度敵の足元を確認する。

「……あの野郎っ!」

フレアの狙った場所にゆらゆらと漂っていたのは、身の丈と同じ程に伸びた尻尾の先。

「固いのはあの尻尾って訳か」

「巨大な敵と戦う際に有効なのは足を狙って転倒を誘うこと。確かに定石だけど、向こうも対策済みだったみたいね」

「シェリー。さっきもそうだったが、こいつ並の頭じゃねぇぞ!」

自分の弱点を知って隠す生物は多々いるが、敵の動きを読んで的確に防ぐなど聞いたことがない。

しようとすれば、それこそ人間並みの知能が必要になる。

「そうね。でもそれは足が弱いって教えてくれてるようなもの……よっ!」

言いながら今度はシェリーが弾丸のような早さで黒龍に向かっていく。

しかし双剣の切っ先を足に突き立てようとした瞬間、その間に細長いものが差し込まれた。

「シェリー! 尻尾だ!」

「予測済みよ!」

言って彼女は大きく片足を踏み出して地面を強く蹴りつける。

「はぁぁぁぁ!」

そして90度横に飛ぶと、その勢いのまま回転して逆の足を斬りつけた。

『!』

どす黒く赤い血が、黒龍の足から勢いよく吹き出る。


『オォォォォォ!』



黒龍が、呻き声を上げて仰け反った。

「よし! いいぞ!」


――攻撃が通じる。


――なら倒せない相手では……ない!



フレアはその事実に俄然、気力が沸き始めた。



力を合わせれば絶対に倒せる、そう確信した。



――吹き飛ばされたシェリーが自分の横を通り過ぎるまでは。


そして自分の視界が一瞬、赤に染まる。


「―――っ!?」


慌てて目を拭うと、鼻先に刺すような痛みが走った。
確認してみるとフレアの鼻先には、浅くではあるが鋭い切り傷がつけられていたのだ。

(何……だ? 何が起こった? そういえばミラボレアスが身体を回したと思った瞬間、何かが俺の横を……)


「――シェリー!? しっかりして!」

「!?」

背後から響いた、悲鳴のようなチョモの声を聞いてフレアは跳ねるように後ろを振り返った。

「……大丈夫よ。半分は自分で跳んだの」

そこには腹部を押さえて上半身を起こしたシェリーがいた。
それを見て、フレアは何が起こったのかがやっと理解出来た。


――奴が尻尾を振り払ったのだ。

(嘘だろ? まるで見えなかった……)

チョモの手を借りて立ち上がったシェリー。
ダメージはそれほど深くないようだが、それでもすぐに動けはしないだろう。


(ここは俺一人でやるしかねぇ!)

「――とか思ってるんじゃないでしょうね?」

「そうだよ、今日のフレアは突っ走り過ぎ」

「なっ!?」

両側から聞こえた声にフレアは驚く。

「シェリー! お前なんでそんな早く……チョモの治療が必要なんじゃ?」

「大丈夫よ、あれを見なさい」

「あ? 何を――何だあれ!?」

『あれ』と言って伸ばした指の先を見てフレアはまたも驚いた。

ここからかなり離れたエリアの端で、桃色に輝く男達が回復薬をせっせと呷っていたのだ。

「『いろいろ楽に』ってそういう意味かよ……」


道理で腕の治りが早いはずだ。

「さぁフレア、もう目も慣れてきたでしょう? ナルガよりも少し早い程度よ」

「……」

それは今までの敵の中で一番早いということじゃないだろうか?

しかしそんなことは戦いの妨げにはならない。

「あぁ、もう少しで慣れるぜ」

「一対一じゃ勝負にならないわ、三人で上手く牽制していきましょう」

「了解。私はちょっと旋律吹くから、出初めは二人でお願い出来る?」

「任せろ! シェリー、いけるな?」

「勿論。さっき付けた傷を狙っていくわよ!」

「おう!」

チョモが笛の旋律を奏で始める中、フレアとシェリーはゆっくりと近付く黒龍へ向かい左右に別れて特攻を仕掛けていった。






(………)

走りながらフレアはある一点を注視する。

問題はどちらに振り向くか。


――俺の予想なら……


『…………』


黒龍はシェリーの方を振り向き、鋭い爪が生え揃った前足を振りかぶった。
同時に鞭のようにしなった尻尾がフレアに向かい襲い掛かる。

「予測済みだぁ!」

脅威的な威力を誇る尻尾の一撃だが、一つだけ弱点がある。

それは打点が低いこと。

フレアは両足を屈めて前方へ一気に飛び出した。
そして飛び前転の要領で尻尾を躱そうと試みたのだ。
「………!」

思ったよりも武器の重さが足を引っ張りあまり高く跳べなかったが、それでも尻尾はフレアの遥か下を通り過ぎていく。

「……っと!」

転がるように地面に着地したフレアはそのままミラボレアスの背後から足を狙いに走る。

黒龍はまだシェリーに攻撃を仕掛けている途中で、敵はこちらなど気に掛けていない。


「もらったぁぁぁぁ!」


振りかぶったフレアの一撃が、今度こそ黒龍の足に直撃した。



『グォォァァァ――!!』

不意を突かれた足への一撃に、黒龍はバランスを失い地面に倒れる。

――今ならいつもは届かない頭が狙える!

しかしフレアは武器を振るった反動でまだ動けず、シェリーも攻撃を避けたことによって距離が離れている。

(二人なら無理だ。だが……)

フレアは確信していた。



「――頭、いっただきぃ!」


昔と変わらない、白銀の長髪が舞う。

思わず、ニヤリと微笑んでしまった。



そう、俺はあの時から信じてたんだ。
自分が出来ないことは相方【アイツ】が必ずやってくれると。







「さて、と」

二人がミラボレアスへ向かった直後、チョモはすでに吹き終わった自分強化の旋律を、改心率UPへと切り替えていた。

それは人間の内なる集中力を高め、武器を振るった一撃の鋭さを増加させる旋律。
聴覚保護【大】は黒龍が降り立つ前に吹き終えていたので、これがチョモの狩猟笛で吹ける最後の旋律だった。

『あの』二人には怪力の種と忍耐の種も渡してあるので、それの効果も合わさりフレアの一撃は相当な威力を持つだろう。

「もしダウンを取れれば頭を狙うことが出来そうだけど、今のままいっちゃうとフレア達はそこまで辿り着けないだろうなぁ」


――それくらいのことは『観てれば』分かる。


「そうなればそこは私の役目になる訳だけど……」


だけど、とチョモは思う。

その為には先程シェリーが避けられなかった一撃をフレアが躱さなくてはならない。

――何故そこまで見込めている自分がいるのだろうか?

「……へへっ」

自分で疑問に思い、すぐに自分で答えが出た。


「だって、信じちゃってますから!」


自分の真正面に落ちてきた頭に向かい、ニヤリとしたままチョモはアヴニルオルゲールを力一杯降り下ろした。






「………おかしい」


シェリーは思う。


不意討ちも決まって、ダウン時に頭に一撃も決められてここまで順調なはずなのに。

――なのに、何故違和感を覚えるのだろうか?


『…………』

一撃を加えたチョモがその場を離脱するのと同時にミラボレアスはその身体をゆっくりと持ち上げ始めた。

――本当にあの子は敵をよく見てるわね

彼女にこの違和感を話せばすぐに何かを見つけてくれるかもしれないが、ここまでの違和感だ。
恐らくは目に着くところにその正体は隠れているはず。

「―――っ!?」

そしてシェリーはすぐに『それ』に気がつくことが出来た。


(私たちが足に付けた傷が……無くなっている!?)

シェリーとフレアの攻撃は確実に敵の鱗を切り裂いたはず。
なのに今、その傷は一切見当たらない。


「それがあなたの『伝説』、そして『強さ』の一部だと言うのね……」

命を掛けて付けた傷が一分も経たない内に完治されてしまった。


「これは……ちょっと皆と話さなきゃならないかしらね」


――私達だけでも勝てないかもしれない、と。







「なっ……傷が回復!?」

「………」


シュレイド城の小さな休息所でフレアの大声が響いた。



ダノンとライザーに指示を出した後、三人は一つずつ持ち込んでいた非常用の『モドリ玉』で一時的な退却を図ったのはつい先程の事。
シェリーが発見した事実を伝えるためであったが、黒龍が何をするか分からない以上そこまで時間を取るわけにはいかない。
そんな緊迫した状況の中で話し合いは行われた。

「俺の渾身の一撃を叩き込んでも治っちまうとなると確かに……厳しいかもしれない。だけどよ! ここでアイツを野放しにしたらどうなるか分かんねぇぞ!」

「でも何も対策出来ずに死ぬまで攻め続けたとしても、結果は同じことよ」

「そ、そうだぜ! 勝てねえなら逃げた方がいいって!」

「それがいいぜ! な?」

「……貴方達は黙ってくれないかしら。全身桃色で気持ち悪いのよ」

「で、でもこれは姐さんが……」

言われてチョモがギョッとした顔をした。

「ちょっ、姐さんとか呼ばないでよ!」

「俺等、分かったんです。姐さんの下で働くのが幸せだって!」

ライザーが声高々に叫び、ダノンもしきりに頷いていたが、次の瞬間二人は仰向けに卒倒してしまった。

「悪いけど本当に時間が無いの。そこで静かに寝てなさい」

シェリーは彼らの額に刺さっている眠り投げナイフをポーチにしまうと、再び二人に向き直った。

「私は黒龍の回復力を上回る攻撃力が必要だと思うんだけど、何か他に気付いたことはないかしら?」

「――あのさ」

チョモが小さく手を挙げた。

「もう一度エリアに行かなきゃハッキリとは分からないんだけど、私が頭を殴ったときに出来た傷……あれも治ってるのかな?」

「チョモ……どういうことだ?」

フレアが身を乗り出して訊ねた。

「私の武器には、龍属性がついてるんだよね。フレア達が付けた傷が元に戻っていってたのは気が付いてたけど、私の付けた傷は治る気配が無いように思えたんだ」

「なるほど……確かに古龍には龍属性がないと破壊できない部位がある。ミラボレアスは全身がそうなのかもしれないわね。なら私とフレアが援護に回ってチョモを攻撃の主軸にすれば……可能性が見えてくるかもしれないわ」

「試してみる価値はあるよね!」

まだ出来ることは残っている。
この事実に彼女達は再び希望を目に宿したが、そんな中でもう一本手が挙がった。

「あのよ、これは討伐の話とは余り関係が無いんだか……」

「何でもいいわ、続けて?」


フレアは自分の中でも思考を巡らせるように目をつぶって一拍置いた後、誰もが予想し得なかったことを呟いた。



「バルスのスカルフェイス……あれってよ、もしかして黒龍の力が関係してるんじゃねぇか?」
プロフィール

楽太郎

Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
(・◇・@)

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