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ガイドポストは龍の調べ 第一話

2012/10/18

   ー龍に愛された娘ー                          【ブロクトップへ】


「それ」は生まれた時から孤独だった



白い龍は我が子を見るように言った



一人は寂しいか



「それ」は頷くと、ゆっくりと龍の眼を見て……



――龍は静かに嗤った





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



フラヒヤ山脈近くにある雪山の懐に抱かれた村――ポッケ村は、穏やかで美しい村の雰囲気と雪山の気候の過酷さを兼ね揃えており、温泉まで存在する。
そんな村に魅了されてやって来るハンターの数は少なくない。

「やっと着いた……ここがポッケ村かぁ」

ほぅと白い息を吐き、短めの青いポニーテールを左右に揺らす彼女――アクア(Aqua)もまた、その噂を聞き付けてやって来たハンターの一人だった。

容姿は女性と呼ぶには少し幼さが残っており、ユクモノ一式と、ユクモノ太刀という装備からユクモ村の出身だということは容易に分かる。

「わぁ……息が白い」

村に着くまでは登山に夢中で気が付かなかったが、麓よりも気温が大分下がっていた。
そして昨晩から大量の雪が降ったのだろう、村に続く道は足跡以外にそれを示すものが無い程の積り具合だ。
足元を踏みしめるだけでギリリ、と雪が固められる独特の音が静かに響く。

「……まずは村長に挨拶しないと、か」

ちょっと緊張した様子でアクアは村人の案内を受け、大きなマカライトの岩へと向って行った。



「こんにちは!」     

「…………」

岩の前で焚き火にあたっていた小柄な老人に挨拶をするも、なぜか反応が無い。


「……こんにちは!!!」

声、三割増し。

「んん? おぉ、すまぬすまぬ、最近耳が遠くてのぉ」


そういうと老人――村長はゆっくりとこちらに顔を向けた。
傍から見ればただの老人だが、しわだらけの顔の奥には聡明な瞳が凛と光っている。

「……で誰じゃったかの? 雑貨屋の娘じゃったか?」

光って……あれ?

「あ、新しくハンターとして村に来ましたアクアといいます!」

「おぉおぉ、そうじゃったそうじゃった。ギルドからの手紙を受け取っておったわ。確かユクモの子だったの? 向こうの温泉はまぁずいぶんと体にいいと聞くに……」

「確かにユクモの温泉は観光客にも大変人気ですね」

「そうじゃろうなぁ。わしも暇があれば行きたいものじゃが……そう言えば、何故わざわざこんな辺鄙な村に来たのじゃ? ユクモの温泉に不満があった訳ではあるまい?」

「え、ええと……こちらの環境に憧れて? 何というか……ピンときたんです! この村に行きたいと!」

「ふぅむ……」

今度こそ強い光の籠った瞳がアクアを見据える。

「…………」

睨まれている訳でもないのに何故かドキドキしてしまう。

「ま、直観は大事じゃしの。これからは自分の故郷だと思って暮らしなさいな」

村長はニコリと温かな微笑みを浮かべると、村に関する事をしばらく(本当にしばらく)話してくれた。



  
   ◆




村長との長い話を済ませた後、アクアは村の中を一人歩いていた。
ユクモとは違い、昼間でもずいぶんと冷え込む。

「村長さんがいい人でよかった……話は長かったけど……ってあぁ、しまった!」

アクアはその場で頭を抱えた。
『後は村の専属ハンターが案内してくれる』という話だったのだが、肝心の場所を聞いてなかったのだ。

「うぅ…今更聞きに行くのも恥ずかしいし……どうしよう」


――そうボヤいた時である



「やっほー! そこのキミ! もしかして新しく来たって噂のハンターさんかい?」


「……え?」


気のせいだろうか、頭上から声が聞こえた気がした。


「もしかしてこの家の上から……っ!?」


慌てて見上げてみると、確かに誰かが屋根の上にいる。
それだけでも驚くのに、あろうことか「とぅっ!」などという掛け声と共に飛び降りて来たのだからパニック寸前……危なく背中の太刀に手を掛けるとこであった。

「よいしょ…っと!」

動揺して固まっているアクアの前に降ってきたのは、若い一人の女性だった。

ズシン、という見かけに合わない、重量感のある着地音を立てて。

「ん? 合ってるよね?」

アクアよりも少し年上に見える彼女は雪下ろし用に使っていたのであろうスコップを地面に差すと、違った? と小首を傾げてこちらを見る。
桃色の、少しウェーブのかかったショートボブ(ユクモ村ではブナハスレイヤーと呼ばれていた)が似合うすっきりとした顔立ちで、こちらの気分も明るくなるような満面の笑顔を浮かべていた。

「は、はい! そうです!」

そんな笑顔に押され、アクアは少し仰け反りながらそう答えた。

「ふんふん、そっかなるほどぉ!」

彼女はアクアの服装をまじまじ見て「おーこれ可愛いねぇ」などと言い、またも笑顔をこちらに向けた。
眩しい位の、本当に素敵な笑顔だ。

「……貴方がこの村のハンターさんですね?」

彼女は「ご名答!」と親指と人差し指で丸を作ってみせた。


何故分かったかと言うと、理由はとても簡単。
着地音の原因が彼女の背負う巨大なハンマーであり、それがハンター以外の人間が持ち運べるものでは到底無かっただけだ。
私だって扱えるかと言われると自信が無い。

……そもそも屋根から平気で飛び降りてる時点でそうなのだけれど。

「あ、自己紹介が遅れたね。私がこの村でハンターやってるハンマー(hammer)だよ。以後よろしく!」

ニッと笑って手を差し出してきたので私もそれに応じた。

「ユクモから来たアクアです。よろしくお願いします!」

「いい名前だね。よろしく、アクア!」

「はい! ハンマーさ………失礼かもですが、本名ですか?」

巨大な鈍器を背負って、名前もハンマーなら誰だって気になる。

「そ! ごめんね紛らわしくて。でも私の大事な名前なの」

「すみません……とても似合ってるのでつい」

失言だったと非礼を詫びたが、当の本人は気にしていないようで笑いながら両手で大げさに手を振ってみせた。

「いいよー、慣れてるし。じゃあアクアの住むとこを案内するからさ、その後で簡単なクエストに行かない?」




「く、クエスト……ですか?」




クエスト。
ハンターがギルドを通して受ける依頼の通称。
これから行動を共にする、初対面のハンターなら誰でもまずは簡単なものに誘って相性を確かめる。
そんなことはハンターを名乗る者として常識のようなもの。

――なのだが

そんな何気ない一言に一瞬、アクアの顔色は暗く曇った。

「ん? どしたの?」

「い……いえ! あはは、ちょっと緊張しちゃって……」

アクアは張り付かせたような笑顔を浮かべていた。

心なしか顔色も悪い。本当に気分が悪いようにも見えた。

「別にそんな固くならなくても大丈夫だよ! ……といいたいとこだけど、着いたばかりで疲れてるもんね。ごめんごめん、また今度にしようか」

「すみません……ありがとうございます」

「じゃ、行こうかっ!」

彼女が異常なほどに安堵の表情を浮かべていたことを、ハンマーはひとまずは心の中に収めた。





――数分後、二人はとある家の前にたどり着いた。


「到着ー! ここがアクアの住む家だよ!」

「わぁぁ、立派な家! ユクモとは大分違った作りですね」

ハンマーの案内した家は、かなり大きな作りをしていた。

「吹雪にも耐える特注構造だよ!」

彼女はまさに『ドヤ顔』という自慢気な顔を浮かべると、せかせかと中へアクアを手招く。

促させるままに家の中に入ると、ハッとアクアが驚いた。

「お帰りなさいまし、ご主人。もう料理が出来てるニャ!」

「わぁぁぁぁ! 可愛い!」

それもそのはず、板前のような格好をしたアイルーが何匹も待ち構えていたのだ。

部屋の奥からは食欲を誘ういい匂いが漂っている。



「こんな可愛いアイルーがいる家に住めるなんて! 憧れの独り暮らしも出来るし凄い嬉し………ん? お帰りなさい?」


何かが引っ掛かかった。


「ただいま! サルサぁ…もうお腹ペコペコだよ」


「ご主人はまず手を洗うニャ。なんか色々ばっちぃニャ」

「酷くない!?」

「え? ハンマーさん今ただいまって? しかも……ご主人?」

「ん?」

ハンマーはキョトンとした顔をしながら続けた。

「村長から聞いてなかった? アクア、私の家に一緒に住むんだよ?」

「えぇ!? あれ? ハンマーさんの家はさっきのじゃ!?」

「あれは雪下ろしの手伝いしてただけだよ。今朝からやけに降ってねぇ……。さぁ! 共に愛の巣を築こうじゃないか!」

「ちょ!? 何言ってるんですか!?」

頬を紅潮させて慌てるアクアにハンマーは目に涙を浮かべて笑う。

「あはは! 冗談だよ!」

「もう! び、ビックリしましたよ! 」


しかしそのお陰で緊張はすっかり無くなっていた。

「ハンマーさん、これからお世話になりますね」

「ん、よろしくね!」


握手を交わす二人。
ハンマーとアクア、二人の初めての出会いはこうして幕を閉じた。



     ◆



「うわぁ! 綺麗な浜辺!」

翌日、アクアとハンマーはクエストのために密林に来ていた。
孤島の海も美しかったが、自然と一体になった浜辺の壮大さにアクアは見とれていた。

「あ! あっちに貝殻が落ちてます!」

昨日の体調の悪さもどうやら治ったようで、アクアは元気に走り回っている。

「あ、待って! そっちは……」

ハンマーが呼び止める間もなく、アクアはもう次のエリアへと移動してしまっていた。

「きゃ――――!?」

すると突然、アクアの悲鳴が響いた。

「あー、やっぱり……」

密林の砂浜にはヤオザミという凶暴な甲殻種が潜んでいるのだ。
言うの忘れてた! とハンマーもすぐに隣のエリアへ助けに走る。


―――すると

「あ! ハンマーさん! このカニミソ美味しいですねぇ!」

「え……」

ハンマーは目を疑った。
彼女が見たのは倒れた3匹のヤオザミの真ん中に座り、無傷でザザミソを頬張っているアクアの姿であった。

「……さすが上位ハンターだけあるね。心配する必要なかったか」

「ここでは『元』ですけどね」

でも……とハンマーは思った。

(ヤオザミは確かに雑魚だけど……経験を積んだハンターだって地面から襲ってくる奴等の攻撃を避けるのは難しい。それに小型モンスターの中じゃ体力があるほうだし……あの太刀はユクモの初期装備って言ってたよね……それで私が来る僅かの時間に3匹も?)

「ハンマーさん、ハンマーさん」

「え、え? 何?」

いつの間にかアクアが目の前でニコニコしていた。

「ハンマーさんも食べませんか? 密林には美味しいものが一杯ありそうですね!」

「いや……ザザミソは精算アイテムだから、ここじゃ食べちゃ駄目なんだよ?」

「え!? そうだったんですか!? ……ごめんなさい、でもこんな美味しいの食べちゃ駄目だなんて………」

ガックシとうな垂れる彼女を見て、ハンマーは苦笑しながらアクアの肩を叩いた。

「んじゃ、クエスト終わったらすぐに酒場に行こうか。酒場にはザザミソの他にも沢山美味しいものがあるし」

「ホントですか! なら早くクエスト終わらせなきゃ……っ! ハンマーさん!」

不意に遥か上空から聞こえてきた羽音にアクアが反応する。

「……丁度来たね。この地方のハンターの登竜門。『イャンクック』先生の登場だよ」

赤い体に黄色のくちばし。そして特徴である巨大な耳。

「クエェェ!」

【怪鳥】――イャンクックが土煙を上げながら二人の前に降り立ったのだ。

「コココココ」

イャンクックはまだこちらに気付いていないようで、明後日の方向を見ながら喉を鳴らしている。

「か、可愛い!!」

イャンクックを見たアクアの第一声はそれだった。

「クルペッコも可愛かったですけど、この子はそれ以上ですね! 辛そうな赤色に大きな黄色いクチバシ……そして大きな耳!」

アクアはウサギを初めて見た女の子のように感想をまくし立てた。

「……アクア? 気持ちは分かるけど、それが今回の討伐対象だからね?」

はしゃぐアクアを見て、ハンターとしての緊張感が全く感じられず、ハンマーはアクアをたしなめた。




「そう、でしたね………すみません」

アクアはハッとした表情をし、俯いた。
そして昨日のように顔色が悪くなっている。

「アクア……大丈夫」

「やるしか……ないですよね。でも『ここ』でなら……」

俯いたアクアはブツブツと何かを呟いている。

「クエェェェ!」

イャンクックがこちらに気付いて威嚇を始めた。
迫ってくるのは時間の問題。

「アクア! 気分が悪いなら下がってて!」

ハンマーは咄嗟に武器を構えるが、アクアは一向にその場を離れようとしない。

「アクア!!」

「お願い……『来ないで』……」

「クエェェ!」

突進を仕掛けるイャンクック。
ハンマーはすかさずアクアを庇おうと前に出る。

「お願い……」

するとアクアはようやく、俯きながらそう祈るように呟いて――顔を上げた。



「…………」


アクアはゆっくりとした動作で、まるで何か怯えるような顔つきで太刀に手をかける。



「………え!?」


その太刀を抜いた瞬間に、彼女の全身の雰囲気が変った。



【――クエストが完了しました――】


「あ……え……?」


そして、それに気付いた瞬間には討伐は終了していたのだ。


「………………」


ハンマーは言葉を出せずにいた。


まるで雪が降る様に無音。


欠けた月にも似た斬撃の嵐の中で、赤く咲き乱れた冷たい殺気。


彼女はその中で舞うイャンクックをただ見ているだけしか出来なかったのだ。





「……ハンマーさん?」

アクアの声にハッと我に返ると、アクアが何事もなかったかの様に笑顔を浮かべていた。

「お疲れさまでした! 早く美味しいもの食べに行きましょう!」

「……そうだね、酒場に行ったら色々話すことがありそうだ」

「………? それにしても可愛かったですねぇイャンクック! 討伐されちゃったのは残念ですけど……」

戦闘中に性格が変わるハンターは少なくない。理由は多々あれども、過酷な狩猟環境に順応するために無意識に自らを鼓舞している、というのが大半である。

だがさっきのアクアは違った。まるで『モンスターの存在』そのものを憎んでいるかの様な、異常なまでの殺気を帯びながらも、寒気がするほどの無感情。その矛盾した二つを有していたのだ。

(本人に自覚があるのか気になるけど……この様子だと恐らく無いな。自分では普通に戦ってただけって感じてるんじゃないかな………)

ハンマーはいつになく真剣な思考を隠しながら、アクアと共に酒場へと帰っていった。

     


     ◆



――アクア達は村に帰ると酒場に直行した。

「お待たせしました!」

受付嬢が大量の料理を持ってやって来る。

「わぁ! アプトノスのステーキに、女帝エビの蒸し焼き! それにサシミウオのお刺身まで!」

アクアは歓喜の悲鳴を上げ

「歓迎のお祝いだよ! ジャンジャン食べちゃって!」

ハンマーの財布は悲鳴を上げていた。

「ありがとうございます! じゃあ……すみませ―ん! この砲丸レタス炒め……トウガラシ多めで、とヘブンブレッドとレッドチーズのサンド2つ、あと達人ビールを辛口でお願いします! あ、それとここの覧にある揚げ物全部2循してください!」

「私は……あーうん、おすすめをジャンジャン持ってきて!」

(これはもう開き直ったもん勝ちだわ)

二人は夢中になって料理を平らげていった。

「いやぁ……久しぶりにこんなに食べたよ」

食事もほぼ終わり、二人は酒場の喧騒から少し離れた席で休んでいた。

「すみません……あまりに美味しかったもので、つい夢中に……」

アクアが申し訳なさそうに頭を下げる。

「いいっていいって! この酒場の料理は逸品だからね。気に入ってもらえて嬉しいよ」

「ユクモでは味わえないものばかりで、感動しました」

「……私はアクアの食べっぷりに感動したよ。さてと……」

ハンマーはデザートの氷結イチゴを手に取りながら、アクアに本題を切り出した。

「ねぇアクア、あんたの村……ユクモ村からこっちに来た本当の理由を聞いてもいい?」

「えっ……!?」

アクアは一瞬困惑した顔を浮かべたが、すぐに何かに気がついたようだ。。

「………やっぱりあの時……こっちに来ても駄目だったんですね」

アクアは目を伏せて黙っていた。

「やっぱり……ってのは?」

つい先程の事が嫌でも思い浮かんでくる。

「……密林の狩りの時、私は『変わって』しまったんですね?」

「うん……あれには驚いたよ。……でもその記憶が、無いんだね?」

「はい……。変わるとその前後の記憶が曖昧になるので……私もあるハンターに言われて初めて気付いたんです……『お前には【化物】が憑いてる』と」

彼女の目はとても悲しそうな光を湛えていた。

「化物……か。確かに鬼神みたいな気迫だったよ」

ハンマーは冷や汗を浮かべながら苦笑いする。

それを聞いたアクアは、決心したように話し始めた。

「……実を言いますと、私がハンターになったのはつい先月のことなんです」




「嘘ぉ!? 先月!? それであの腕前はありえないでしょ!?」

彼女の告白にハンマーは目を剥いて驚き、思わず食べかけの氷結イチゴを落とした。

「ええ、そうなんです。ハンターになって武器を持つためには、ギルドの規定年齢を越えなくてはなりませんからね。でも私は本当に先月にようやく誕生日を迎え、ギルドに登録してハンターになったばかりなんですよ」

「じゃあ20歳になってすぐハンターになったんだ……もしかしてそんなに急いだ理由と何か関係があるの?」

この質問に、目を伏せぎがちだった彼女はさらに顔を沈めて答えた。

「……私は幼い頃に両親をモンスターに殺されているんです」

ハンマーは再び目を見開いた。
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楽太郎

Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
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