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ガイドポストは龍の調べ~Black Contract~ 第二話

2012/10/26

ー黒の過去ー


西の地平線下へと太陽が帰路につき、茜色に染まり始めた樹海の端。
そこに凸凹な二つの影がふらふらと揺れ動いている。

「やっと抜けれた……」

全身泥だらけで髪もボサボサ。
シャワのげんなりとした一言はため息と共に吐き出された。

樹海をさまよい歩くうちにギルドの管轄外の地域に迷い込んでいた彼女達は、三日かけて樹海の脱出に成功したところだった。

「まさかこんなことになるなんてね……」

「ホントだよ……。まさかキノコまで生えてくるとは……」

バルスがくぐもった声で相槌を打つ。

「アンタの頭の話はしてないわよ!!」

木にいた鳥が飛び去った。
どうやらまだ怒鳴る元気はあるようである。

「……にしてもここは何処なのかしら?」

何とか抜け出たものの、現在地が全く分からないのでは帰りようがない。
するとバルスが何かを発見した様子で指を指した。


「シャワちゃん、向こうに集落があるみたいだ、煙が上がってる。あそこで聞いてみよう」

「え? どこ?」

「ほら、あそこ」

「あ」

バルスが発見した煙は肉眼ではうっすらと見える程度で、視力が武器のあるガンナーのシャワでも言われるまで気が付かなかった。

「………あんな所良く見つけたわね。中にレンズでも仕込んでるの?」

「失礼な、全力で裸眼だよ。昔から視力はいいんだ」

「……あんたが言うと、ど――も変態チックに聞こえるのよね」

「逆セクハラもいいとこだよ!?」

そんなことを言いながらも二人は暗くなる前に着くために早足で煙の元へと向かっていく。

彼らが辿り着いたのは予想通り、小さな集落であった。

「まずはひと安心だわ……」

「また野宿は嫌だもんね」

まばらに建てられた住居からは、火を起こしているのだろうか煙がちらほらと上がっている。

申し訳程度に作られた門をくぐると、やっと樹海を抜けたのだという実感が沸いてきた。

「とにかく……水浴びくらいはしたいわね」

シャワは体についた汚れを手で払いながら言った。

「確かに……これ以上放置したらどうなるか分からないからね……」

バルスも真剣な声色で頭部をさする。

………だから、とシャワは迅竜でも射殺せそうな眼光で黒い変質者を睨む。


「どうしてレディーのたしなみとアンタの頭が一緒に並ばなきゃならないのよ!!」

ビリビリと大きな怒声が響くも、バルスはそれを予期したのかすでに耳を塞いでいた。

すると、

「あんた達、もしかしてハンターさんかい?」

シャワの声を聞きつけたのか、集落の住人であろう一人の老人が声をかけてきたのだ。

「あ、はい。ちょっと迷ってしまっ……「水を浴びれる場所はありませんか!?」

事情を説明しようとするシャワを遮り、バルスは勢いよく老人に話しかけた。

「アンタねぇ……女の私が我慢してるってのに……!」

シャワがワナワナと震えながら言うも、

「はい! あっちに井戸が? ありがとうございます!」

「ってちょっと!? 待ちなさいよ!」

バルスは一目散に井戸へ駆け出していった。


(アイツ……あとで頭叩き割ってやる……!)


「あの、ちょっとよろしいか?」

怒り心頭――といった様子でバルスの背中を睨み付ける彼女に老人は勇敢にも話しかけた。

「……何かしら?」

驚くほど冷たい声が出た。

『見知らぬ怪しい男に親切にするこいつもこいつだ』とでも言いたそうに、シャワは刺すような目付きをそのままに老人を見る。

「実は最近森が騒がしくての……危なっかしくて仕事に行けんのだよ。ハンターさんなら何か知らんかと思ってな」

そんな視線には全く気付かない老人の言った言葉に、ピクリとシャワの頬が引き釣った。

「……………」

その理由は簡単。
シャワとバルスが樹海を走り回ったから。
縄張りを荒らされたモンスターが芋づる式に荒れまわったのだ。


「し……知らないわね。私たちも最近来たばかりだから……」

まさか自分達が元凶だとは口が裂けても言えない。
バレれば借りれる井戸も借りられなくなる。

「で……でも私達が歩いた感じだと、モンスターも大分落ち着いてきてるみたいよ?」

そもそも三日もかかったのはモンスターの警戒が解けるまで身を潜めていたからなのである。

だからその点は保証できた。

「そうかそうか! ハンターさんが言うなら安心できるわい! どうもありがとうよ!」

老人は余程嬉しかったのだろう、村人に『おーい! もう大丈夫だとよ!』と大声で村人に伝えた。

「と……当然のことをしたまでよ」

終始苦笑いのシャワであったが、そこであることに気付く。

(あれ? そういえば私……知らない人と普通に話せてる……!)

なぜかしら? と首を傾げる。

なんと一癖も二癖もあるバルスと行動するうちに、彼女の人見知りは次第に消えていたのだった。

(あいつのお陰……なのかしら? なら少しは感謝しないと……)

「いやぁ~さっぱりした! 」

そこに当の本人がピカピカのスカルフェイスを拭きながら小躍りでやって来たのだ。

「あ、シャワちゃん次いい……オフゥッ!?」

躊躇なく拳を振り抜いていた。
「バルスだったもの」は地面と平行にトリプルアクセルを決め、黒いスカルフェイスを再び泥をまみれにして動かなくなった。


「ふぅ……やだ、ちょっと汗かいちゃった。どうしようかしら……ねぇ? おじいさん?」

「………」

その後シャワは老人の好意でお風呂を用意して頂いた。



少しばかりの礼として一泊の宿と夕食をご馳走したい、という老人――もとい村長の提案を二人は快く受けた。

樹海を抜けたとはいえギルドへはまだかなり遠い。
ネコタクを手配してくれるギルドの出張所がある村も歩けば半日はかかるというので、出発は明日の朝として二人は村人たちと小規模ながらも素敵な宴を楽しんだ。

「……ねぇバルス」

「はい、何でしょうか」

宴が終わり、村人も寝静まった夜、シャワとバルスは焚き火に当たりながら虫の声を耳を澄ましていた。

湿布を顔(スカルフェイス)に貼ったバルスはビクリとして彼女の呼び掛けに答える。敬語で。

「もう怒ってないわよ……あのね? 言いたくないならいいんだけど……いつかは聞かなきゃならないって思ってたのよ……」

「………」

ハキハキ(バルスへのみ)としたシャワには珍しく、歯切れが悪い。

内容は何となく分かる。

「あなたのスカルフェイス……それ普通じゃないわよね?」

殴れば腫れ上がり、ヒビは決して入らない。
決して取ることはない……取れない。

「……本当に申し訳ないんだけどね、僕にも分からないんだ」

「それって……どういうこと?」

「僕は五年前……記憶を全て無くしたみたいなんだ」

静かに語るバルス。仮面のせいでその表情は読み取れない。

「五年前……戦争が終結した年ね」

忘れるはずの無い、あの長く続いた忌々しい戦いの歴史の終わりの年。
まだ幼かった彼女にも人々の歓喜に満たされた叫びは記憶に刻まれている。

「僕はその年最後の紛争に参加していたらしい」

「その時に何かあった……っていうわけ?」

「それは分からない……気が付いたら敵国の収容所にいたんだ」


全てが真っ暗だった―――


        


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





ーー不審な男がいる

そんな報告を受けたフレアは国の収容所まで足を運んでいた。

そんな男一人なら現場の兵士でも事足りるだろうと言ったのだが、どうも様子がおかしいらしい。

「ったく、こっちだって仕事が山積みだってのに」

国の依頼を断れないのがギルドナイトの辛いところである。

お待ちしていました、と門前の兵士から会釈を受けた後、フレアは兵士の話を聞いた。

「……死神だぁ?」

きな臭い言葉が兵士の口から出た。

「私も見たときは驚きましたが……頭が不気味な骸骨なんです」

「……実際に見てみないと分からんな。でもまずは長官のとこだ」

こんな下っ端の話を全て真に受けていては任務など勤まらない。

下積み時代に世話になった恩人が、今はここで長官をやっているらしい。

「たまにはコネでも使わせてもらうか」

挨拶がてら、詳しい話を聞きにフレアは収容所へと入っていった。


        


ポタリ、水滴が落ちる音と共にカビ臭いが鼻を刺激する。

「ここに『そいつ』がいるのか」

堅牢な牢屋の前でフレアは立ち止まる。
日の光が入らないせいで中は暗く、よく見えない。

これじゃ昼か夜かも分からないじゃないか、と訊いたところ、兵士はそれが目的で作られたのです、と答え淡白な目をして続けた。

時間も天気も分からないここにいるだけで、狂ってしまう者は数多くいるのです。見ていて気分のいいものではありませんが、その分私たちの仕事も減りますので……。

何とも胸くその悪い話だ。

「……にしても」

と愚痴が出そうになるのを舌打ちして押し止める。

少し老けた長官からはそれほど詳しい話は聞けなかった。

どうやらその男は、戦場の中心から少し離れた場所で倒れていたところを連れて来られたらしい。

聞けたのはそれだけである。

(ってことは上層部も何も知らねーってことじゃねぇか……やる気あんのかね?)

そんなことを思いながらも、フレアは牢屋の中へ視線を戻す。

本当にこの奥に人がいるのかと思うほどの闇であった。

「おい、明かりくれ」

まずは本人を見なければ話にならない。
兵士から松明を受けとると、フレアは牢内が見えるように明かりをかざした。

「なっ………!」

フレアは思わず松明を落としそうになった。
そこに現れたのは鎖で両腕を吊られた首なしの男。

ではなく、

完全に闇と同化するような漆黒の髑髏を頭につけた男であった。

寝ているのかピクリとも動かない。

「……驚かせやがって。で、何でこの男は牢屋に入れられながら拘束されてるんだ?」

「目を覚ました男が暴れましたので、最後は5人掛かりで取り押さえました」

「5人掛かりねぇ……まぁ兵士が暴れればそんなもんだろ? 少し大袈裟なんじゃねえか?」

「途中で負傷した者を合わせると30人を越します」

「…………」

十分な理由だった。

「ま、今は安全なんだろ? 失礼するぜ」

「待ってください! そんな軽率に……」

兵士が止めるも遅く、フレアは牢屋の中へ踏み込んでいた。

「よう、起きてんだろ? ちょっと質問に答えてくんねーか?」

「………」

チャリ、鎖が音を立てると同時に髑髏が顔を上げた。

「何者だ? あんた」

どちらの国にも登録されていない兵士。
燃やされでもしたのか、半分炭化した皮の鎧を身に付け、頭は黒い髑髏。
常人ではあり得ないほどの戦闘力。

全力で引っ張っても髑髏は外れなかったらしい。

我々は生ける死神を捕らえてしまったのだ、と長官は言った。
そして今さら解放するのも報復が恐ろしく、このまま留めてもどんな不幸があるか分からないと泣きつかれたのだ。

(ちっ……結局のとこ自業自得じゃねぇか。流石のギルドナイトさんでもこんなのは専門外ですよ、と言えないところが御役所仕事の泣けるところだわな)

「……俺は」

くぐもった声が牢屋に広がる。

「……僕は」

「……私は」

「……何?」

死神は淡々と喋った。

「記憶が無いのか?」

そう訊くも、男はブツブツと呟くだけだった。

「………よし分かった」

何が分かったのだろうか……、と首を傾げた兵士はこの後信じられない光景を目にすることになった。

「じっとしてろよ?」

「フレア様!? 一体何を!?」

フレアは男を吊るしている鎖と拘束具を外し始めていた。

「こんな所にいたら聞ける話も聞けねぇよ。だから外に連れていく」

「そんなこと許される訳が無いでしょう!? 今すぐ戻してください!」

止めたくてもこの男はギルドナイト。返り討ちに合うのがおちなので、兵士は顔色を赤へ青へと変えながら必死にフレアを説得しようと試みた。

「大丈夫大丈夫、長官もこのほうが喜ぶと思うぜ? なんせ不安の種が無くなるんだからよ」

――捕虜の無断解放。それの幇助(ほうじょ)。事情を知らないものからすればただそれだけの重罪だ。

フレアは軽くそう言って男を背負うと、固まっている兵士の肩を叩き『長官に説明よろしく』と、恐らく兵士にとって最悪であろう伝言を残して足早に外へと向かっていった。
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Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
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