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ガイドポストは龍の調べ~Black Contract~ 最終話

2012/10/30

―道標―


「そんな……どうして?」

激しい衝撃を受けながらも、頭の中で必死でその理由を考える。


ギルドの契約を切った!? どうして何も言わずに……?
約束だって………まだ……


「あ………!」

そこで気付いた。


そして走り出していた。


(私はバカだ………バルスはあの夜からそう決めていたんだ)

なぜあんなに素直に自分の素性を話したのか。
私が怒ると知っていただろうに、なぜあんな話をしたのか。
別れの時、普段言いもしないお礼なんかを言ったのか。



何でいきなり消えたのか。

全部が全部私から離れるためだったんだ。

「あいつといることが危険だってこと……そんなことは分かってたわよ!」

どこまでが彼の考えか分からない……けれどまだ追い付けるはず! まだ間に合うはず!

「はぁ……はぁ……」

シャワは街の入り口までひたすらに走り続けた。

しかし辿り着いた城門に。
そこから伸びる道にあの見慣れた黒い背中は見えない。

「……流石にこんな別れは……あんまりじゃない」

ぺたりと地面に座り込む。


彼のことだ。
きっと他のハンターと狩りをした時は事情なんて話はしなかっただろう。
したところで信じてもらえる確率なんか知れている。
そして素顔を決して見せない髑髏のハンターは訝しがられ、疎まれ、怖がられてきたのだ。

『僕が怖くないのかい? みんな不気味がって近寄らないっていうのに』

『変態を怖がるほど繊細じゃないわ』

『…………なんか嬉しいな』

『その言動がもはや変態じゃない!!』

『それは違うよ!?』

砂漠でそんな会話をしたこともあった。

「バカ……これじゃまた一人じゃない……」

もう手の届かない所にいるだろう彼にそう呟く。

もう少し上手くできれば、理解者だって出来るはずなのに。
でもこんな風にしか出来ない。
どこまでも不器用なんだ……と彼女は思った。





「やぁすいません! 急にお腹が痛くなったもんで……」

「いいよいいよ。それじゃお気をつけて」

「守衛さん、じゃあ行ってきます」

「はいよ」


「…………ん?」

聞き慣れたくぐもり声が後ろから聞こえたような気がした。

「………え!? シャワちゃん?」

「……………バルス?」

街門の守衛小屋から出てきたバルスは黒いギルドスーツを身に纏っていた。

「何でここに……」

「ふざけんじゃないわよ!!!」

まずは怒りが噴き出した。

「シャワちゃ……」

「あんた私をそんなにやわだと思ってるの? あんたの背負ってるものなんて関係ないわ! そんなことで何も言わずに去ろうなんて偽善もいいとこよ!!」

何故か知らないが、次はボロボロと涙が零れ落ちた。

「……私も一緒に旅に出る!」

「えぇ!?」

突然泣き出したシャワにそんなことを言われ、目に見えてバルスが慌てているのが分かる。

「待って! それって………」

「分かってるわ」

「そういうことじゃ……」

「私は前から旅に出ようと思ってて、目的もある!」

「だから………」

「だからお願い! 連れてきなさい!」

「ちょっ待って! 最後まで喋らせて!」

バルスが両手を突き出してシャワを制した。

「…………」

「……何か勘違いしてないかい?」

「……え?」

赤い目を擦りながらシャワは頭にクエスチョンマークを浮かべる。



「確かに僕は近々この街を離れるつもりだけど、今はギルドナイトとしての仕事に行くだけで昼には帰る予定なんだよ?」








「は……?」

カァと頬が熱くなるのがわかった。

「そっそれじゃ、ギルドの契約を切ったってのはどういうことよ?」

「え? 確かに街を出るときに備えて今度、契約を切るって話はしたけど……」

顔がますます赤くなる。

「シェリーのやつ……!」

思わずまた名前を名前を呟く。
つまりは、計られたのだ。

うつむいて押し黙るシャワをバルスがおずおずと覗き込む。

「シャワちゃん……何かごめん……。とりあえず僕は仕事にいかないと……話は昼に……」

「うっさい早く行け!!」

「ごふっ!?」

ブンと振るわれた腕がバルスの顎を捉える。

もう怒ってるのか恥ずかしいのかも分からない。
シャワは倒れ込むバルスをそのままに、足音を荒げながら宿舎に帰っていった。



――――――――――――

「支度は出来たかい?」

「ええ」

二日後の街門に、荷物を背負った二人が今度はしっかりと並んでいた。

「気を付けてね、シャワ」

見送りに来たシェリーがニコリと笑う。
そんな彼女が顔を真っ赤にしたシャワに胸ぐらを捕まれて揺さぶられたのは昨日の話だ(ちなみに彼女はその時もニコニコとしていた)。

「私が気を付けなきゃならないのは貴方だってよく分かったわ……」

むっすりとするシャワにシェリーはくすりとして訂正した。

「そうね、言い直すわ。上手くやりなさいね、シャワ」

「何をっ!?」

またもや赤面したシャワが投げたペイントボールをシェリーはひょい、と可愛らしく小首を傾げて避けた。

余談であるが、後に巷で広がることになる『受付嬢、最強のハンター説』はこれを間近で見たハンター達が発端である。

「……? じゃあそろそろ行こうか」

「うぅ……」

何が起こってるのか分からない様子のバルスが、今だに唸っているシャワを促す。

「ええ、早く行くわよっ!」

もう泣かせちゃダメですよー、などと言っている受付嬢から退散するため、シャワはバルスの背中をどつく。

「はぁ……当分ここには戻りたくないわね」

「え? いい街だったじゃないか?」

「…………」

やっとのことで街門を出ると、いくつもの道がのびているのが目に入った。

「ねぇ、どの道を行くの?」

気持ちを切り替えたのか、シャワは期待を込めて軽やかに言った。

「僕らの目的は地道に探すしかないからね……いつも通り自由に」

「気ままに?」

「うん。あ、でもあの二人から手紙が来ていたか」

バルスが思い出したように手を叩く。


「そうだったわね。それじゃ最終目的地はそこにして……とりあえずはゆっくり行きましょうか?」

「悪くないね」

「それじゃあ」

「うん」

一人で旅立つのは不安だった。
だから私は待っていたのかもしれない。
心の開けるパートナーが現れるのを。
始まりはただ踏ん切りのつかない自分への甘えだったのだが。
それでも素晴らしい巡り合わせは起きた。
なら、少しは感謝しないといけないのかしらね。



「「ユクモへ!」」



ここまで私を導いてくれた沢山の小さな道標(みちしるべ)。



――それは、これから先も続いている気がする。


                          【次章へ】
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Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
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