スポンサーサイト

--/--/--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

女神と呼ばれたハンター 第二話 【外伝】

2012/11/02

父親の言葉は大きな衝撃をフレアに与えていた。


「血を見ると錯乱してしまうのはその為だろう……」

「チョモは今どうして……!?」

聞かずにはいられなかった。

「大丈夫だ。少し時間が経てば落ち着くだろう」

「よかった……」

安心したフレアだったが、父親の次の一言で再び驚愕することとなる。

「フレア、もうすぐお前は10になるだろう」

「え、そうだけど……」

「いい時期だったのかもしれないな。領主の息子…いや、私の息子として命令する。知識をつけ、鍛練を積むために街へ出なさい。そこでお前の未来を決めてこい」

「街へ……? でも……」

「確かに急な話だ。お前が納得するまで話をしよう」


父親の話はチョモの、そしてフレアの為にも重要な話であった。
今のチョモにこれ以上刺激を与えれば心身共に危険にさらすことになる。
これ以上チョモのような子供を増やして欲しくない、そのためにはお前の力が必要なのだ――父親の言葉はフレアの心に正義の心を芽生えさせるに十分であった。


――次の日の朝、フレアは村を静かに後にする。


しかし顔はすでに希望で満ちており、その胸には秘めた熱意があった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



当時の私は大人しい子供だったらしい。

貧しくも、明るい父親と優しい母親と一緒に暮らしていた。

だけど、あの時……

私の目の前は一瞬にして真っ赤になった。

その後の事はよく覚えていない。

気付いたら知らない天井を見ていた。

するとシスターという女性が、涙の止まらない私をいつまでも抱き締めてくれたのを覚えている。

「ねぇシスター。どうして他の子は居なくなっちゃうの?」

ある時私はシスターにそう聞いたことがある。

すると、

「あの子達は新しい希望の光を見つけたのよ。大丈夫……あなたも直に見つかるわ」

と言っていつものように抱き締めてくれた。

「……? シスターはいなくならない?」

「えぇ。私はいなくなんてならないわ、あなたが自分を取り戻すまでは」

シスターの説明はよく分からなかったけれど、シスターがいてくれるならそれで良かった。

しばらく経つと、私以外の子供はついに一人も居なくなった。

シスターによると、

「それは良いことなのよ」

と言っていたが、何が良いのか全く分からなかった。

一人で一日の大半を過ごすことに慣れた頃、私は柵の外の世界に思いを馳せることが多くなっていた。
ぼんやりと覚えている外の記憶……でもよく思い出そうとすると頭が痛くなるからやめた。

そんなある日だ、私は一人の少年と出会ったのは。

フレアといったその男の子は、私の憧れていた外の子供だった。

「外に出てみようよ!」

彼は私の憧れを一瞬で現実にしてくれた。

彼と遊ぶことは今までのどんなことより楽しく、新鮮なものだった。

シスターにバレないかと不安だったが、何とか誤魔化せていた。


「俺さ、ギルドナイトになるのが夢なんだ」

森にある小さな湖、そのほとりである日、寝そべりながら彼は夢を語った。

「『ぎるどないと』って?」

初めて聞く言葉に私は首を傾げる。

「悪い奴やモンスターを倒して平和を守るカッコイイ人達なんだ! 俺の憧れの存在だぜ!」

そう言ったフレアの目はキラキラと輝いていた。

「そんなカッコイイなら、私もなりたいなぁ」

思わずそんなことを呟く。

「チョモならなれるよ! 一緒に村の平和を守ろうぜ!」

「うん!」

私とフレアは指切りを交わした。

「ずっと一緒な!」

「ずっと一緒!」

約束を交わすというのがこんなにもドキドキするものだったなんて、私は嬉しくてたまらなかった。

でもその後、一緒に森を走り回って遊んでいたフレアが転んだ。

大丈夫? そう言って駆けつけた後の記憶が、私にはない。




――そして目が覚めたら



フレアは村からいなくなっていた。




騙された。


裏切られた。


約束を破られるのがこんなに辛いものだなんて、私は胸が今にも張り裂けそうだった。

その頃からだろうか、私の心がネジ曲がってしまったのは。



それから数年経った頃、孤児院を出た『アタシ』はハンターになっていた。


――理由?

報酬がいいから。

それを期に髪はバッサリと肩まで切った。

邪魔だったから。

昔から『アイツ』と森で罠などを作って遊んできたせいか手先は器用だったから、ギルドの規定年齢なんて簡単に偽造できた。


私が選んだ武器はハンマー。

苦手な血があまり出ないからだろうか……自然にこの武器に手が伸びていた。

初めのうちはアタシも一生懸命戦っていた。

けれどアタシはすぐに気付くことになる。


自分には狩りのセンスが無かったと。

大量の血を見ればまだかすかに震えてしまうし、殴り付ける感触も慣れなかった。

そんな当時のアタシの面倒を見てくれたのは、夫婦で狩りをやっているというハンターの二人組だった。

彼らはとても優しく、

「君はそこで見てればいいから」

と笑って、二人で狩ったモンスターの報酬を無償で分け与えてくれた。

彼らも初めのうち位は…… と考えていたのだろうが、

私はそれにヤミツキになってしまっていた。

何も働かないで報酬だけを貰う。

こんな楽なことがあるだろうか?

その夫婦も暫くはそれを許してくれていた。

だがある日、急に別れを告げられた。

その時私が思ったのは、悲しみでも怒りでもなく、
「あぁ、次の相手を見つけないと」という無機質な考えだった。

それからは一緒に狩りをしてくれるハンターを転々とし、様々な理由をつけて彼らから報酬を奪っていった。

しかしそんな横着が永遠に許されることはなかった。ある日、噂を聞き付けたギルドナイトが私に警告を伝えにやって来たのだ。


それがフレアとの再開だった。



「お前……チョモ……か!?」

「………あんた、フレア?」

彼を見た瞬間、懐かしさが一気に込み上げる。

実に五年ぶりの再開だったから。

「お前……今までどこに居たんだ! 俺は必死に……」

「うるさい!」

でも私の口から出たのは拒絶の言葉だった。
懐かしさと一緒にそれ以上の憎しみが浮かび上がってきたのだ。

「私を置いて村を出て……もうお前の事なんか知らないんだよ!!」

それでも……。

「チョモ……俺は……」

嗚呼…… とアタシはそれでも自覚した。

アタシは……私はこんなにも寂しかったのだと。
一番強い思いは悔しいことに喜びだったのだから。

その後もアタシは活動をやめることなく、その度にフレアはアタシの元へとやって来た。

初めは激しく拒絶していたが、フレアのあまりのしつこさにアタシも拒絶することを諦め、昔とはだいぶ違うが、普通に会話を交わすようになっていた。


そして今に至る。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



ずいぶん長く回想をしていた様な気がする。

夕方の草むらに寝そべっていたチョモは足音を聞いて起き上がった。

「あ、フレア……」

やけに哀愁を漂わせながら歩くフレアを発見したのだ。

フレアからは死角になっていてこちらの姿は見えない。

(あ……そういえば領収書置いて出ていっちゃったからなぁ……もしかして皿洗いでも?)

彼女の小さな良心がチクリと疼く。

(でもアイツが怒鳴り込んでくるから悪いんだ!)

そうやって一人で弁護していると、

「あいつがああなっちまったのは……やっぱり俺のせいだよな」

彼らしくない、えらく沈んだ声が聞こえてきた。

(……フレア)

彼が自分が倒れたのがきっかけで村を出たことは、後で村人から聞いて知っていた。

(違う……確かにきっかけはそうだったかも知れないけど、その後は私の……)

「おい! ついに見つけたぞ!」

「………っ!?」

突如、チョモは後ろから何者かに後頭部を殴られ、彼女は静かに意識を落とした。


             ◇

ピチャン、と水滴の落ちる音でチョモは目を覚ました。


「…………ここは?」

辺りは暗く、様子は分からない。

「……うっ!」

頭に激痛が走る。
だいぶ強く殴られたようだ。

少し目が慣れてきた。
どうやら倉庫のようだが、周りはやはり暗くてよく見えない。

「………っ! 体が動かない!?」

ここでチョモは腕と足を強く縛られていることに気付いた。

「おっ、目が覚めたみてぇだな」

「誰!?」

不意に後ろから声をかけられ、チョモはそちらに顔を向ける。

「は? まさか俺を忘れたわけじゃないよな?」

「……お前っ!」

そこに立っていた男は以前チョモが手柄を横取りしたハンターの一人だった。

「まだまだいるぜ?」

ぞろぞろと後ろの暗がりから現れたのも今までチョモが騙してきたハンター達だった。

「私たちはねぇ……分かると思うけどさ、アンタの被害にあった連中の集まりよ」

またもや見覚えのある一人の女がそう言って睨み付けた。

「散々ギルドに文句を言っても全く被害が減らねぇからよ、調べたら一人のギルドナイトがてめーのことを庇ってるやがった! ギルドナイトが庇ってんならラチがあかねえ……だからこうして集まって直接お前に報復してやろうって決めたんだ」

(まさか……フレアが?)

チョモの頭に彼の姿が浮かぶ。

「でもお前の周りにはいつもその邪魔なギルドナイトが引っ付いてやがって……今日は運が良かったぜ」

『いつか必ず後悔するぞ!?』

(フレアはアタシがヤバイことを知ってたからいつも近くに………?)

「よくもこんな人数を手玉に取りやがったな……生きて帰れると思うなよ? っておい! 聞いてんのか!」

倉庫中に怒声が響き渡る。

「……っ!」

怒鳴った男が近くに落ちていた角材を拾うと、それを持ってチョモに近付く。

「全く反省してないようだからな、この際しっかり反省させてやるよ! 死ぬまでな……」

(コイツら……本気でアタシを殺す気だ……)

「す、好きにすればいいだろっ!」

そうは言ったが体が恐怖に震えるのを止められない。

「その威勢がいつまで持つかな? 順番にコイツでぶん殴っていこうぜ、まずは俺からだ」

(これが報いなの……?)

「覚悟しろよ」

冷たい低い声でそう言うと、男は角材を振りかざす。

「ひっ……!」

それを見たチョモは咄嗟に目を瞑る。



(ごめん……フレア)




その瞬間、鈍い音が倉庫に響いた。






「ぐあぁぁ!?」

チョモは驚いて目を開いた。
初めに目に映ったのは角材を落として吹き飛ぶ男の姿。


――そして

「ちょっとは反省したか?」


「え……?」


そして次に映ったのは紅。


「てめえ! 何で邪魔しやがる!」

取り巻きの男が怒鳴る。




「てめぇら……チョモに手ぇ出してんじゃねーよ!!!」

フレアは叫び、長く赤い髪が宙に舞う。

その瞬間、フレアはハンター達を一蹴していた。

その髪は倉庫の合間から入り込んだ月の光に照らされ、まるでルビーのように輝いていた。

「あ…………」

一瞬で目を奪われる。

「チョモがこんなことをしちまったのは俺の責任だ! だからな、コイツに危害を加えてみろ! 全員ぶっ飛ばすぞ!」

「ふ……フレア!」

フレアは鬼神のような形相でチョモの前に立ちはだかっていた。

「ちっ……! あのギルドナイトかよ……だがよ! お前のやってることは正しいのか!? ギルドナイトだったらまずソイツをとっ捕まえろよ!」

ギルドナイトは並みのハンターでは太刀打ち出来ない強者の称号。

すでに大半のハンターは逃げ出しており、追い詰められた男はフレアにそんなことを口走っていた。

「俺がギルドナイトになった理由は2つ。1つはあらゆる戦争を終わらせること」

そしてもう1つは……とチョモを指差した。

「コイツを守ってやることだ! 分かったらとっとと失せやがれ!」

「……くそっ、いかれた野郎め! 覚えてやがれ!」

フレアの一括に男は完璧な捨て台詞を吐いて、慌てて逃げ出していった。

「ふぅ」

場が収まると、フレアは軽く息を吐く。

「フレア……?」

初めて本気で怒ったフレアを見て、チョモが恐る恐るといった様子で声をかける。

「俺はさ、あの日からお前を守るって誓ってたんだ」

フレアはチョモに背中を向けたまま話り始めた。


「だから親父から街へ行けと言われた時、チャンスだと思った。あの時の俺はまだ何も持っていなかったからな」

「フレア……私は……」

「だけどな! 今は違う。5年間ギルドナイトになるために必死でやった!」

フレアはそう言ってチョモの方に振り返った。
額から赤い筋が何本か流れた。
角材が当たっていたのだろう。

「お前を置いてきちまったことを悪いと思ってたから、今まで様子を見ちまったがな! こんなことになるならもう遠慮はしねぇ! 引っ張ってでもお前を更正させてやる! 二度と目を離さねぇから覚悟しとけよ!」

ビシッ! とチョモに指をさすフレア。

急な展開にポカンとしていたチョモだったが、

「へへっ……よろしくね! フレア」

昔のような眩しい笑顔をフレアに向けた。

「あ……ああ! 任せろ!」

昔同じような会話をしたような気がした。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

楽太郎

Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
(・◇・@)

お客様カウンター
こんなお時間ですニャ
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
最新トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。