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狩人クライシス ~新たなる風~

2012/11/07

「竜・撃・砲! 点火ぁ!」

いい年をしたオヤジが豪快に吠える。

「属性解放突き……フィニッシュ!!」

同時に銀髪の少年が叫ぶ。

「溜っ……さん! スタンプ!!!」

それに続くように桃髪の女性が、担いだ大槌を力の限り叩きつける。

一瞬にして、目の前が爆風に包まれた。

「おぉ………」

あまりの衝撃に思わず吐息を漏らしてしまう。


【目標を達成しました】


「お疲れさまぁー! いやぁ! 今の良かったなぁ!」

「ああ! やっぱ最後は大技でドカーンだな!」

「だよねぇ! わかるわかる!」

「「「あっはっはっはっ!!」」」

三人は肩を組み、すっかり意気投合して笑っている。

(仲むつましいのはいいことだな………ん?)

そこでふと思った。

(……あれ? これ、もしかすると私……所謂空気というやつなのではないか?)

先程の激闘を熱く語る三人の傍らで弓使い――モモは一人、愕然とした表情でたたずんでいた。


        ◇


――桃姫(ももひめ)。
この名前は大袈裟で嫌いだ。
普家の生まれの私にこんな大層な名前をつけた両親が少々恨めしい。
その為普段、他人と接する際には『モモ』という略称で通している。

さて、突然ではあるがここで少々自己紹介をしてみようと思う。

私はこの大陸でいう『東の国』と呼ばれる国々の出身で、修行の為この地で狩人を営んでいる。

なぜ先程、他の狩人達と温度差が出来ていたかって?

うむ……しかしあれは私が悪いのであろうか?


始まりは、私がとあるギルドの酒場を訪れた時のことだ――



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「それでは! この依頼書にサインをお願いしまーす!」

昼間から騒がしく、酒の臭いが立ち込める酒場――大体どこのギルドに行ってもうるさかったが――の喧騒に負けないように声を張り上げる受付嬢に若干申し訳ない気持ちになりながら私は署名……サインをした。

「これでお願いする」

「んん?? この何て読むんですか??」

受付嬢の表情には『はてな』の記号が読んで取れる。やはりそうなるか……。

「すまない、東の国の文字なんだ。言葉は慣れたのだが……どうにもこちらの文字は苦手で」

すると受付嬢は『ああ、東の国の』と言うと、慣れた様子で他の受付嬢に呼び掛けた。
呼ばれてきた彼女はどうやらこちらに精通しているらしい。契約書をペラリと眺め、把握したように顔を上げる。

「お待たせしました。桃姫様ですね。確かに契約を承りました」

「恩に着る」

「では受注板に書き加えますので、準備が出来ましたら申し付けください」


何とかクエストの受注を終わらせる。
今回は割とスムーズに出来たが、このやり取りをクエスト終了後もやらなければいけないかと思うと、些か肩が重くなる。

もはや契約書もモモで通してしまおうかとも思うが、契約不履行だなどと面倒事が起こるのは御免なのでそれは止めておきたい。

「さて……」

そう言ってモモはクエストの受注板の前に立ち、酒場を見渡した。


クエストは貼った。
後は協力者が申し出てくれれば心強いのだが……。

そう思いながら声をかけるに値する狩人を探す。


何せ今回の相手は……


「お、黒ティガじゃん! 何々? お姉ちゃんが受注者?」

私の横、丁度肩下の位置から声をかけられた。
顔を斜め下へと傾け、声の主を確認する。

「あぁ……そうだが、少年はハンターか?」

「あぁ! 姉ちゃんも俺をガキ扱いすんだな!?」

そう言われても……と言葉に詰まる。
齢は十五程だろうか、銀髪に浅黒い肌の少年が『お姉ちゃん』などと呼び掛けてくるのだ。
依頼人かとも思ったが違うようだ。

「オイラはこれでも23! れっきとした上位ハンターだぜ?」

「何だと!?」

少年は腕を首の後ろに組み、私をキッとした目付き(しかし上目遣いかジト目にしか見えない)で睨み付けている。

流石に嘘だと思ったが、よく見ると背にはこちらの大陸で普及している武器だという剣斧……スラッシュアックスが刃を光らせているし、何より目についたのが……銀髪から覗いている尖った耳。
これには心当たりがあった。

「少年は龍人族か?」

「だから少年じゃないっての! ……そうだよ。爺ちゃんが龍人族だから『くおーたー』っていうらしいけど」

龍人族は人間や獣人とは別の種族で、人間よりも遥かに長い寿命を誇り、鍛冶や調合などの高度な技巧を備えている。しかし反面人口は少ない。
ポッケ村のギルドマネージャーや村長、行商婆さんなどがそれにあたる。

「龍人族のくおーたー? ……あぁ、少年の龍人の血は薄いのだな」

聞き慣れない単語が飛び出したが、頭を回転させれば意味くらいは理解できる。
覚えなければいけない言葉はまだまだ多いな。

「薄いっつってもその辺のハンターよりかは頑丈に出来てるぜ! なぁ、オイラも丁度腕試しがしたかったんだ! 連れてってくれよ!」

手を合わせ、今度こそ上目遣いで覗き込んでくる。
こうしてお願いする姿はどこまでも少年なのだが、これで私とあまり変わらないとは……。

「いいだろう。こちらこそ宜しく頼む」

「任せといて! オイラはヨルヴァ。お姉ちゃんは?」

「モモと呼んでくれ。それと『お姉ちゃん』はやめてもらいたいんだが……」

どうも呼ばれ慣れない。

「分かったよモモ姉ちゃん!」

「…………」

ニシシとヨルヴァは笑う。……さてはこの少年もどき、遊んでいるな……?

一言いってやろうと口を開きかけた時、後ろから心臓が止まるかと思うほどの大声が飛んできた。

「おぅおぅ! 黒ティガだな? ワシも参加させてくれい!」

「……っ!」

驚いて振り返ると、更に驚いた。

アオアシラと見紛う程の巨体。厳つい顔つきに色濃く強調するヒゲ。鍛えられた体は鎧の上からでもはっきりと分かる。

そして何より……

「何だよこの馬鹿デッカイおっさんは!!?」

ヨルヴァが驚きの声を上げる。

「おっさんではない! 今年でまだ40半場だぞ!」

「それはもうおっさんだって……」

そう、彼が纏う雰囲気は圧倒的な中年……もといベテランのオーラだった。

「ほれ、これがワシのギルドカードだ」

「あ、オイラのも! はい」

「私のも受け取ってくれ」

三人はギルドカードを交換し合う。
ギルドカード交換はこの世界での挨拶代わりである。
相手の力量もおおまかに分かる。便利なものだ。


「ハルクヴィン・ベルンハイト……凄い名前だな」

どこぞの貴族の生まれなのだろうか?
しかもG級だ。
まじまじと大男を見上げる。

「ハッハッハッ! 大層な名前だろう? 面倒臭いからハルクと呼んでくれ」

ハルクは豪快に吠えると、手を出してモモとガッシリと握手を交わした。

「私はモモだ。宜しく頼む、ハルク殿」

「俺はヨルヴァ! ヨロシクな! ハルクのおっちゃん!」

「どのぉ? そんな呼び方せんで普通にハルクと呼んでくれ。そのほうが気兼ねせんでいいわ。それよりも小僧! ワシはまだおっさんじゃないと言ってるだろうが!」

「ワシなんて言ってる時点でもうおっさんだよ!」

唸るハルクにヨルヴァが食って掛かった。
大柄なハルクに物怖じせずに怒鳴り返す。

そこなのか?
そこなのか??

モモも急に繰り広げられた口論に混乱してるのか、些かずれたことを考えながら二人を見ることしか出来なかった。

険しい剣幕で口論する中年と少年……見ているこっちがハラハラする光景だ。

しかしそんなこんなで口論は五分ほど続いた。

はぁはぁと肩で息をしながらハルクはヨルヴァを睨み付ける。

「ふん、ハッキリとよくモノを言う小僧だ。嫌いじゃないぞ」

そしてニッと笑い手を差し出した。

「ヘヘッ! あんがとよ!」

後で訊いた話だと『魂を分かち合った』らしい……そんな二人がガシリと握手を交わしたところで、モモは二人に話しかける。

「もういいだろうか? 二人の腕が確かなのはギルドカードを見れば分かったが、相手はティガレックス亜種だ。出来ればもう一人欲しいと思うんだが……」

ティガレックス亜種……通称『黒轟竜』。
温泉地で有名なユクモ村のギルドが発見した、いないとされてきたティガレックスの亜種。
通常種より凶悪かつ狂悪な行動、咆哮というレベルを超えた衝撃波……どれをとっても全力を尽くさないと一瞬で命を落とすだろう相手だ。

「確かになぁ。モモ姉ちゃんは弓だろ? ならもう一人近接がいたほうが大分安定するね」

ヨルヴァの翆色をした眼がキラリと光る。
流石は上位ハンターだ。戦略の話になると雰囲気がガラリと変わった。

「ならワシに心当たりがあるぞ」

それに続いて、むすっとした顔(後にこれが普通だと分かるのだが)のハルクが口を開く。

「本当か?」

モモがハルクを見上げた。G級ハンターの見立てなら期待ができる。

「ほれ、あそこの席に二人組がいるだろ? あの二人は恐らく相当やるぞ」

ハルトの指した方向には確かに二人の女性ハンターが座っていた。
一人は寝ているのだろうか? 昼間から飲み潰れているなら少し不安になる。

「私が声をかけてこよう」

オイラも行こうか? と言うヨルヴァに大丈夫だといってモモは二人の席へと向かい足を進めていった。

頼み事をするのだから複数でいくのは礼儀に反する。

近付くていくと、二人の会話が聞こえてきた。

「アクアー? 大丈夫?」

桃色の髪をした女性が机に伏せているポニーテールの女の子に声をかけているようだ。

「無理です……海越えはやっぱりキツいでした……」

「言葉がおかしいよ……こりゃしばらくはダメだなぁ」

「ちょっと失礼する」

困ったようにポリポリと頭を掻く彼女にモモは声をかけた。

「ん? 何か用?」

「実は――」

きょとんとこちらを見る彼女にモモは訳を話した。

「黒ティガかぁ~。私まだ戦ったことないから是非とも参加したいんだけどね……」

ちらり、と机の少女に目をやる。
やはり彼女が心配なのだろう。

「うぅ……ハンマーさん、私はしばらく休んでるので……行ってきてください」

具合の悪そうな声でアクアと呼ばれた少女は机に伏したままハンマーにそう言うと、再び動かなくなった。

どうやら船酔いらしい。
この酒場のあるギルドは小さな港を構える町にある。話によると、やはり彼女たちは他の大陸からやって来た旅のハンターだった。

「ん~じゃあせっかくの頼みだし、アクアは受付嬢に頼んで見ててもらうとするか」

そう言った彼女のギルドカードを見るとこちらもG級。ハルトの見立ては正しかったようだ。

「あ! モモ姉ちゃん交渉成立?」

ハンマーを連れて二人のところに戻ると、それを見たヨルヴァが駆け寄ってきた。

「私はハンマー! どうぞよろしく!」

「カッコイイ名前だなぁ!」

「まったくだ! やはり期待できるな」

「本当? 嬉しいねぇ」

そして四人は自己紹介と軽い雑談を交わした後、準備を済ませて黒轟竜が住まう火山へと向かったのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


そして冒頭のシーンに戻る。

三人の働きは素晴らしかった。
ハルクは隙の無い豪快なガンランスの攻撃で的確に黒轟竜を弱らせ、ヨルヴァは素早い身のこなしで剣斧を振り回し、ハンマーさんはその名の通り巨大な鎚を盛大に敵に打ち付けた。

その後ろで私は黙々と弓を射る。
三人のような豪快な技は無いけれど、この武器が私に一番合うと思っている。


龍木という特殊な素材を東の国の技術で加工して出来たこの弓――龍弓【日輪】。

相棒であるこの弓は、この大陸に伝わる『曲射』という技術こそ出来ないものの、大変優れた性能をもつ武器だ。

だからそれはいい。

だがこの『あうぇい』感は流石に寂しい。

「皆……お疲れ様。手伝ってくれて感謝する」

おずおずと話しかけたモモ。

すると、どういうことだろうか

「お! 今回のMVPのお出ましだ!」

ハンマーがモモを見るなりそう言った。

えむぶいぴぃ……?

どういう意味だろう?


困惑するモモを『待っていました!』とばかりに取り囲み、三人が口々に話しかける。

「ありがとな! モモ姉ちゃんのお陰でスッゲー楽に動けた!」

「うむ、特に突進してきた時の奴の牽制! 見事だったぞ!」

「よくあんなとこ狙えたよねぇ! 狩り中なのにちょっと感心しちゃったよ!」

「あ………あの?」

初めて贈られる称賛の嵐にモモは挙動不審になってしまう。

弓なら援護して当然、そんなことを言われてきたモモにとって、三人の言葉は胸に染みるものだった。


「皆だった最後の大技、本当に感動したぞ!」

負けじと称賛の言葉をかける。

「お! やっぱりモモ姉ちゃんから見ても凄かった?」

「やっぱりさっきの、外からみたら凄かったでしょ? 私も見たかったなぁ」

「仕方ないだろう。 ワシ達はずっとモモの弓の技術を堪能したんだ。最後くらいワシ達も目立たんとな!」

「そんな……それは買い被りすぎだ!」

「あ、照れてるの?」

「ち……ちがう!」

「モモ、自信を持たなくては駄目だぞ?」

「そうそう。私なんてほら! 自信の塊だし」

「……モモ姉ちゃんはこうなっちゃダメだからね?」

「えー? なんでよ?」

「「「あはははは!」」」

お互いを誉め、認め合う。それがとても大事なことなのだと改めて思い知らされた。

「さぁ! 次は何に行こうか?」

「ワシは強い奴なら何でもいいぞ!」

「あー! 私ももう少しこのメンバーで狩りたいなぁ。アクアに言ってもう少し滞在しようかな」

「そうしなよハンマーのねーちゃん! モモ姉も喜ぶよ! ねぇ?」

「もちろん! 是非とも宜しくお願いしたい!」

「オッケー! 今度はアクアも紹介するからね!」

「っていうかヨルヴァ……その呼び方は流石に恥ずかしいんだが……」

「いいじゃん! 似合ってるって!」

「全く……」

胸がまだ暖かい……

そうか私はこれを学ぶ為にここに…………


「モモねー! 次はジエンモーランだって!」

「!? 流石に急すぎるだろう!」

「大丈夫大丈夫! この私に任せときなさい!」

ハンマーが私の肩を叩く。

「ワシの力とどちらが上か、比べてやるわ!」

ハルクが高らかに吠える。

「おっちゃん、そんなことやったら砂漠に落とすからね?」

ヨルヴァの呆れた声が聞こえてくる。


仲間と打ち解けるのは簡単なことなんだ。
自分の心を開けばいい。
そうすれば時間なんていらない。

「私は大タルGを持っていくぞ!」

「えぇ!? じゃあ起爆合戦だ! ジエンの戦闘中に飛び交う爆発……カッケェ!」

「なら私はマタタビ爆弾かなぁ。ピンク色にしてやる!」

「ガンランスの威力を忘れてもらっちゃ困るな!」

四人の笑い声が火山の岩場に響く。


ただ狩るだけが狩人じゃない。
そんな簡単なことに今気づいた。
こうして人の輪は広がっていき、世界が広がっていく。


その世界はどのくらい輪を広げれば包むことが出来るのだろうか?


モモはクスリと笑った。


これからの狩りがとても楽しみなんだ。
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楽太郎

Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
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