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ガイドポストは龍の調べ 第二話

2012/10/18

ーポッケへの軌跡ー


「……だからそのモンスターを討つ為に。モンスターを狩るためには、ギルドの協力を得るのが一番ですからね……」

そう言ったアクアの眼は酷く冷たかった。

「そっか……ごめん。辛いこと思い出させたね。でもさ、敵を討つ為だけの人生なんて」

「私の生きる目的はそれだけなんです!!」

ハンマーの言葉を遮ってアクアが初めて声を荒げた。

「アクア……」

「……すみません。でもあいつは私の全てを奪っていきました。絶対に許す訳にはいかないんです……」

「アクアが狩りの時、『変わってしまう』のはその強い気持ちが原因なのかな?」

「……分かりません。そんなことが起こるようになったのはハンターになってからなので……」

「ハンターになってから……か。アクアがここに来ることにのもそれが原因?」

「……はい。あまり面白い話ではないかもしれませんが……」

アクアは小さな声で語り始めた。



     





アクアはハンターになった後、装備も揃えずにすぐに村のクエストを受注していた。

(すぐに功績を上げて、あのモンスターの情報を掴まなくちゃ……!!)

焦っていたアクアは初心者ハンターの基礎クエストである特産キノコの納品などを無視し、無謀にもアオアシラの討伐クエストに向かっていた。

「ここが渓流の狩り場……。こんな奥には来ること無かったから緊張するな……」

アクアはひとまず地図を見ながら狩り場の地形を確認していた。

「ん? あれは……ハチミツ! 調合用に採取しておこっと」

アクアはハチミツをポーチにせっせと詰めていく。
初めての場所、初めてのクエスト。
そこで見つけた貴重なハチミツは彼女を夢中にさせるのに十分だった。



だから気付かなかった。



迫りよる足跡と獣特有の臭いに。


パキリ! 枝の折れる音にアクアが咄嗟に振り返ったのと、アオアシラが地響きのような音を立てて吠えたのは同時だった。

「グオォォォ!」

「――――!?」

間近でアオアシラの咆哮を聞いて、アクアは身構える暇もなく固まってしまった。
その咆哮は飛竜の放つバインドボイスには遠く及ばないものだったが、初心者のアクアを硬直させるには十分なものであった。

ハンターにとって、一瞬の隙は命取りになる。

ハンターについてのそんな勉強は十分にしていたアクアだったが、想像と実戦では伝わる衝撃はケタが違った。

「グオォォ!!」

アオアシラの重く堅い棍棒のような腕が振るわれ、アクアの腹部に痛恨の一撃が叩き込まれる。

「うっ……げほっ!!!」

五メートルは吹き飛ばされただろうか。
アクアは気を失いそうな痛みを何とか堪えていた。
この場面で意識を失うことは命を失うことと同意義だ。

「ど、どこに……」


まずは見失ったアオアシラの位置を掴まなくては、とアクアはかすむ視界で必死に辺りを探した。

しかし一向に見当たらない。

「よかった……逃げたのかな」

ホッと胸を撫で下ろそうとしたその時、ズシリ…と真横で足音が聞こえた。

背筋が冷水を浴びたように冷たくなる。

「っ……!」

急いでその場から跳んで避けるのと、元の場所に太い腕が振り下ろされたのはほぼ同時だった。

「こっそり忍び寄るなんて……何て嫌なクマ!」

そう悪態をつきながら状態を整える。
痛みは動けるまでには回復していた。

「ここからは反撃ですよ!」

太刀を構えながらそう言うと、不意にアオアシラと目が合った。

「……っ!?」

その瞬間、異変が起こった。
自分の体が芯から氷のように冷たくなって、意識が沈んでいくような感覚が襲い掛かったのだ。

「何なの……これ……」

次第に視界が暗くなるのを感じ……やがてアクアは意識を手放した。



     



「ん……え……?」


アクアの意識が戻った時、初めに視界が捉えたのは目の前で倒れていたアオアシラだった。
あちこちを切り裂かれており、激しい攻撃を受けたのだろうとアクアは、ぼんやりとした頭で考える。

「一体誰が……」

そして、次第にハッキリとしていく意識の中で驚愕の事実に気付く。

「嘘……嘘……!? 何で……こんな……!!」

恐怖で体の震えが止まらなくなる。


「私が……やったの!?」



自分の手には血まみれの太刀が握られていたのだ。






その後どうやって村に帰ったのか覚えていない。
気が付くと自分の部屋のベッドに眠っていた。

赤黒い染みがベッタリと付いた装備のままで。

(夢じゃ……ないんだ)

着替えて外に出てみると、期待の新人ハンターだという自分の噂が村中に広まっていた。


その後も意識の途切れてる内に討伐が完了しているという異常な出来事は続いたが、いち早くハンターランクを上げたかったアクアは一人でクエストを受託し続け、駆け上がるように上位へと進んでいった。

クエストの中、気が付いたら血だらけになってることにも、もはや動じない。
彼女の頭はとっくに麻痺してしまっていた。



     



この話をハンマーは黙って聞いていた。

ここまで一気に話したアクアは水をコクリと一口含んで、続きを話り始める。

「上位になって少しした時、初めて他人と一緒に狩りに行ったんです―――」


アクアは狩りをしている時の記憶が無いのが怖く、他のハンターを避けていた。
しかしある日、アクアの名声を聞き付けた猟団が協力を依頼してきたのだ。

「ギルドからも指令が出ていて、引き受けざるを得ませんでした……」

仕方なく協力したアクアだったが、狩猟が終わってアクアが見たものは無惨に事切れたモンスターと傷だらけで呻く猟団のハンター達の姿だったのだ。

「私はハンターを……人を殺しかけたんです!」

幸いにも全員が軽傷で済んだこともあり、その猟団長は『二度と関わらないでくれ』という条件で事を穏便に納めてくれた。

「その時に言われたんです……『お前には化物が住んでる』って」

「酷い……。でも、今も意識が飛んじゃうんだよね?」

もしそうなら、先程もアクアに斬りかかられる可能性もあったのだろうか?

「はい……でも私もその後、必死に衝動を抑える訓練をしたんです! 今は突然襲われたり、武器を持ってモンスターが近づかなければ正気を保てます。……人も、襲いません」

「………一人でよく頑張ったね」

「そんなこと……ないです」

話終えたアクアは唐突に席を立ち、ハンマーに頭を下げた。

「……話を聞いてくれてありがとごさいました……私、村を出ます。 私と居ても危ないだけですから……」

「ちょっと待ってよ!」

そのまま走り去ろうとするアクアの腕をハンマーが掴んだ。

「離してください! これ以上迷惑はかけれません!」

「何言ってんのさ! アクアはこれから私の家で生活するんでしょ?」

アクアはキッとハンマーを睨むと、声を荒げた。

「どうしてあなたは私を避けないんですか!? 普通ならこんな不気味な人間、すぐに突き放しますよ!?」

それに対してハンマーはケロッとした顔で答えた。

「残念だけど、私はそんじょそこらのハンターとは育ちが違うからね。敵討ちや、アクアの不思議にも興味津々なの。 あとさ、私達もう友達じゃん? 困ってる友達は見捨てられないよ」

ハンマーが真っ直ぐな目で笑いかける。

そんな視線に耐えきれず、アクアはフイッと目を逸らしながら、

「……本当に……本当にいいんですか?」

消えるような声で、そう聞いた。

「二度は言わないよ? もちろんだって!」

アクアが再びハンマーを見ると、その目は変わらず、優しくアクアの目を見つめていた。

「………っ」

アクアの眼から不意に涙が溢れる。

噂は否が応でも広がり、村では恐れられて誰もが彼女から目を逸らした。
守ってくれる両親もすでにいない。
目的のモンスターも見つけられず、何も信じられなくなったアクアは、逃げるようにポッケ村へと移ってきたのだった。

そんな自分に再び居場所が出来た。

今までの悲しみは、彼女の眩しい笑顔に全て消し飛ばされた。

「改めてよろしくね? アクア」

ハンマーはそう言ってアクアの頭を撫でた。

「ハンマーさん……」

(『悲しい』以外でも泣けるんだ……)


アクアは、生まれて始めての嬉し泣きをした。


ハンマーはアクアが泣き止むまで頭を撫で続けた。


   
    



酒場での出来事の後、二人は家に帰ってきていた。

「またここに帰ってこれるなんて……」

アクアがまだ少し赤い目を綻ばせていると、ハンマーは呆れたように肩をすくめる。

「んな大袈裟な……てかもうアクアの家でもあるんだからさ。好きに使ってよ?」

「えっ、いきなりそんなこと言われても……こ、困りますよ」

「ま、そのうち慣れるさ。 さ、酔い冷ましにお茶でも飲もうよ。まだ聞きたいこと沢山あるしね」

「私も手伝います!」

ハンマーはアイルー達にお茶を淹れるように頼み、アクアはキッチンに椅子を二人分用意した。

「これからは二人で住むんだから、色々と準備しないとね。まぁ大体の物は揃ってるんだけど」

アイルーが淹れてくれた雪山草のお茶を啜りながらハンマーが呟く。

酒場でかなりの時間を過ごした為、薄暗い部屋の窓からはすでに明るい月の光が差し込んでいる。

「そういえばこの家、ハンマーさん一人しか住んでない割りには随分と大きいですよね」

ふと思いついたようにアクアが尋ねた。
他の家が一階しかないのに対し、彼女の家は二階建てで大きさも二倍はある造りだったので、疑問に思っていたのだ。

「あぁ、ここは昔とある猟団の宿舎だったんだよ。大分古くなってたのを私が安く引き取って、改築したんだ」

「この大きな建物をですか!? すごい、ハンマーさん大工も出来るんですね!」

「トンカチがあれば何でも作れるよ。匠と呼んでもいいよ! むしろ呼んで」

「いえ……それはちょっと」

「………」


ハンマーの自慢話が終わったところで、会話は酒場での話題に戻った。

「そういえばさ、アクアの話で気になるとこがあるんだよね」

「どの辺でしょうか?」

「アクアの探してたモンスターってユクモ地方じゃ見つからなかったんだよね?」

「はい……私も手を尽くして探したんですが見つからず終いで。もともと幼い頃の記憶なので外見も曖昧ですし……」

「幼い頃……か。思い出させて悪いんだけど、その時の話を聞いてもいい? 何か分かることがあるかもしれないから」

「構いませんよ」

アクアは湯気の立つ湯呑を両手で押さえながら、話し始めた。



「あれは嵐の酷い夜でした………」






◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆





――いいかいアクア、絶対に外へ出て来てはいけないよ。
――すぐに戻るから心配しないで待ってなさいね。

「うん! きをつけてね!」

十数年前、アクアはいつものように両親を見送った。
アクアの両親はハンターで、狩りの依頼を受けながら生活をしていたので、朝でも夜でも依頼が入れば二人はすぐに出掛けていた。
なのでアクアはいつもの事だと二人を見送ったのだ。


一人、夜の家の中には激しい雷が鳴り響く。

「すごい嵐……おとうさんたち、だいじょうぶかなぁ……」

留守番には慣れていたアクアだったがやはりまだ幼く、嵐の激しい物音に怯え、寝付くことも出来ずに不安になりながら両親の帰りを待っていた。

彼女の一家はユクモ村から少し離れたところに住んでおり、辺りには誰もいない。

しかし嵐は収まるどころか更に勢いを増していった。


数時間が過ぎただろうか。
いつまで待っても両親は帰って来ない。

待っている時間が永遠にも感じられた。

「家がこわれそう………」

叩きつけるような雨と狂ったような暴風がアクアの家を襲う。

「おかあさん……おとうさん……こわいよ……」

その瞬間、猛烈な雷音が鳴り響いた。

「ひぃ……っ!?」

そして雷音の中、耳をつんざくような咆哮と人の悲鳴が聞こえたような気がしたのだ。









本当に不安で不安で仕方なかった。





その音がそれに歯車をかけた。




だから






「おかあさん!? おとうさん!?」








少女は咄嗟に家のドアを開けてしまった。










月明かりもない真っ暗な闇。激しい風と雨を浴びながらもアクアは両親を探した。


するとカッ! と光がまたたき、辺りが一瞬照らされたのだ。


「あ……………」



その瞬間アクアが見たものは、翼を持った巨大な生物と、血まみれで倒れる母を守るように戦う、ボロボロになった父の姿だった。


「おとうさ……!?」

駆け寄ろうとした時、巨大な生物と眼が合った気がした。



――そこでアクアの記憶はプツリと途切れた。




◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆



「眼を覚ましたら、村長に保護されていました」

慌てて村長にモンスターと両親の話をすると、モンスターは去った後で両親はもう手遅れだったと、村長は悲しい顔で伝え、アクアを強く抱き締めた。

その後アクアは村長の家に住み、手伝いをしながら暮らし始めた。

しかし、幼かったアクアの心に出来た傷は癒えず、何も出来なかった自分を強く責め、ハンターになってあのモンスターを倒すと誓うことで、密かに鍛錬を積むことで心の傷を必死に押さえていたのだった。

「……以上が私が体験した出来事です」


「ありがとう……ごめんね。辛いこと思い出させて」

「いいんです。もう気持ちにけじめは付けましたから」


「でも収穫はあったかも。私、そいつに心当たりがあるかもしれない」

ハンマーがニッと笑う。

「本当ですか!?」

アクアの顔に驚きが浮かぶ。

「激しい嵐を呼び、翼をもった巨大なモンスター……『風翔龍 クシャルダオラ』」

「クシャルダオラ……?」

初めて聞く名前だった。

「そう。『古龍』って呼ばれてる生物」

「古龍………」

古龍とは、生物学的な分類が出来ない生物の総称で、特殊な力を持つ謎の多い生き物である。ただそこに『いる』だけで天災となり、ギルドでは今でも研究が続けられている対象である。

「こっちの地方には様々な古龍種が目撃されているんだ。その内の一匹、クシャルダオラは嵐を引き連れてくる力がある」

「嵐を引き連れて……あの時も嵐だった……もっと教えてください!」

「体は鋼の甲殻と大きな翼を持ち、風の鎧を纏っていることから、『鋼龍』や『風翔龍』とも呼ばれているよ」

「………私の記憶にあるモンスターと共通点があります! 確かに風を纏ってた気がします……でもやはり、見ててみないとなんとも言えないですね……」

「見て……あ! そういえば絵があったかも!」

ハンマーは思い出したように顔を上げた。
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非公開コメント

No title

うーん、いいなあ
自分もこんなふうに書いて見たい!

閲覧ありがとうございます!


感想頂けてとても嬉しいです( ゚Д゚ )八(゚Д゚ )ノイエーイ!!!

引き続き更新していきますので、良ければよろしくお願いします(`・ω・´)
プロフィール

楽太郎

Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
(・◇・@)

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