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狩人クライシス ~月下の導き~

2012/11/12

「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うるぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


昼下がり、水没林の一角に熱い雄叫び(×2)が響き渡る。

「………はぁ」

また始まるのか……とモモは呆れるようにため息をつく。
すると、それと同時に小規模の爆炎が目の前の男達を包み込んだ。

「うわぁ!?」
「ぐぉお!?」

同時に反対方向に吹き飛ぶ二人。
その場に残ったのは脚を引きずるロアルドロス一匹だ。
離れにいたモモは呆れ顔をしつつも素早く矢をつがえ、弱った水獣の眉間を的確に射抜いた。

「ウルルゥ……」

急所を射られたロアルドロスは力なく呻いた後、地面に横たわり動かなくなる。


【目標を達成しました】


「ふぅ………『クエスト』は無事に終わったな」

周りを確認し、一息ついてモモは大弓を背にかける。

さて…………問題はこの後なのだ。

「おっちゃん! 砲撃するときは周り見ろってあれだけ言っただろ!?」

「小僧こそ無闇やたらに斧を振り回しおって! 少しは位置取りを考えて立ち回ったらどうだ!」

「やはりか……」

険しい剣幕で焦げ臭い二人がまたもや言い合いを始めている。
ガルルと睨み合い、一発触発の雰囲気である。

「あのさぁ、とりあえず小僧ってやめろよ! オイラもう20過ぎてんだぞ!?」

「儂からみれば10も20もケツの青いガキに変わりないわ!」

「んだと!?」
「なんだやるか!?」

「二人とも、少し落ち着い……」

「モモは下がっていろ!」
「モモねぇは下がってて!」

「ぐぬ……」

二人は同時に振り向くと、モモに同じ言葉を吐く。 綺麗にハモっていたが、そんなことを言ってる場合ではない。

「………ううむ、一体どうすれば」

尚も言い合いを続ける二人を見据え、モモは困り果てて天を仰ぐ。一本に纏められた長い黒髪は、そんな主とは裏腹にさらりと風に泳いでいた。


    ◇


ハルクとヨルヴァの喧嘩が起こり出したのはハンマーさん達がパーティーを抜けてからだ。
元々一時的にパーティーを組んでいただけではあったが、別れの日が訪れた時はやはり名残惜しかった。

『ごめんね……私達もまだいたいんだけどさ』

『すみません……待ってくれてる人がいるので』

『そんな寂しそうな顔しないでよ! ハンターなんだ。また何処かで会えるよ』

『あ! なら連絡取れるようにしましょうよ!』

『それだ! ………ほら、これで。何かあったらいつでも頼ってよね!』


ギルドカードは情報の掲示だけでなく、ギルドを通せばカードの持ち主がいるギルドまで手紙を出すことが出来るという事を私はこの時初めて知った。
方法は簡単。カードにそれを許可する特殊な署名を書き足せばいい。
しかし重要な個人情報の為、信用のおける間柄でないと行ってはいけないという鉄則があるが。


ともあれ、二人と別れた後、私とハルク、ヨルヴァの三人は『パーッと狩って寂しさを紛らわせよう』とクエストに行ったのだ。だが早くもそこで気が付かされた。

あの二人は極めて優秀なハンターだったということに。
一つ分かりやすい例を挙げれば、人と人との繋がりを円滑にすることに長けていたのだ。

考えてみれば、ガンランスとスラッシュアックス、そしてハンマーか太刀……これらは近接ではかなり個性的で癖を持つ武器。
慣れないパーティーでそんなものを好き勝手に振り回せば他人に影響を与えるのは必至であったのだ。

案の定、向かったクエストではハルクの砲撃にヨルヴァが巻き込まれ、ヨルヴァのスラッシュアックスはハルクの攻撃を何度も妨害。加えて私の矢も二人に襲いかかるという散々なものであった。

何故上手くいっていたか……その理由に気付くいたのは愚かにも二人が居なくなってからだったのだ。

あの二人の戦闘中の指示を思い出す。

『ハルクは翼を重点的に! ヨルヴァは尻尾を! 私は頭で、モモも私の攻撃の合間に頭を狙って!』

『ヨルヴァ君は足元を! ハルクさんは固い顎をお願いします! モモさんは柔らかい腕を!』

今思い出しても惚れ惚れするほど的確な指示だった。
各武器の特性とその立ち回りを配慮しながら絶妙なタイミングでそれを伝えていたのだ。

聞いてみればハルクもヨルヴァも、加えて私もほとんどソロで活動していたハンターでパーティープレイの経験値が圧倒的に少ないのだ。

「大体小僧こそワシのことをいつまでもオッサン扱いしおって!」

「オッサンにオッサンっていって何が悪いのさ!? 少しは自分の歳を自覚したほうがいいって!」

「まだまだ現役だ!!」

「よさないか! もうじき帰還時間だぞ!」

――にも関わらず、狩りが上手くいっていたのは自分たちが優秀だからだと過信していた結果がこれだ。
指示を真似しようとしたこともあったが勝手が分からずに反感を買い、結局おのおのが好きに行動してしまった。

今回は私が仲介役をしているが、口論に交じることも多々ある。
それを止めてくれるのは、情けないことにネコタクを引っ張ってくるアイルーなのだ。

「ふん、次は気を付けろ」

「そっちこそ」

「…………」

このままではパーティーの解散は近い……そう感じさせる雰囲気で三人はギルドへと帰還した。

何とか策を考えなくては……。




      ◇




恥ずかしい話だが結論から言おう。
困りに困った私はハンマーさんの元へ相談の文を綴った。

二日と経たず返事の文はギルドに届いていた。
返って来ないのでないかと不安だったので彼女に心から感謝したのだが……。

届けられた文には、思わず首を傾げるような内容が綴られていた。

『広い視野と広い心をもって、最後に大きな一つ決断をしなさい。モモにはその才能があるよん』

書かれていたのはこれだけだ。

あんまりだよん。

「…………?」

申し訳ないが全くをもって分からない……。
まさか更に困惑することになるとは思わなかった。
そして文末の『よん』……。
些か腹が立つ。

「不味いな………」

頼りにしていた友人のG級ハンターの言うこと不明で、あの二人も今のところは酒場で騒げば喧嘩は収まっているが何時までも続くとは思えない……。

(決断……? 何を決断しろというのだろうか……?)

うむむむ、と悩んでいるとヨルヴァが慌てた様子で駆け寄ってくるのが見えた。

「モモ姉! なんか凄そうな人が一緒に狩りに行きたいって!」

相変わらず恥かしい呼びかたを変えない少年だが、問題はそこではない。

「凄そうな人が?」

「うん! ほらあっちに………ぶふぉ!!??」

「!?」

後ろを振り向いたヨルヴァの目の前には何時の間にか妙齢の女性が立っていたのだ。
寝むそうにも見える細目に、腰まで伸ばされた黄緑色のポニーテールをしていた。

ほぼ0距離だったため、ヨルヴァは勢い良くそんな彼女の豊かな谷間へと突っ込んでいた。

ハルクがこの場にいたなら『何とも羨ましい!』と豪快に笑っていただろう。
喧嘩中? きっと構わずに笑う。彼はそんな男だ。

「ぷはっ……ごごご、ゴメンナサイ! オイラそんなつもりじゃ!!!」

目を回し、顔を真っ赤にさせたヨルヴァが尻餅をつきながら必死に弁解している。
生意気を言うわりには意外とピュアなようだ。

「……気にしてないわ。それより貴方達のパーティーに参加したいの」

「えっ……」

足元で騒ぐヨルヴァを気にも止めない様子で、彼女は澄んだ眼をジッと私に向けてくるのだ。少しどぎまぎする。

「それは別に構わないんだが……何故私達のところへ? 他にもっと優秀なパーティーがいると思うが?」

「…………」

何故そんなことを訊いたかと言えば、彼女の装備がそれを語っていたとしか言いようがない。
彼女の身に纏った防具はガブルSというもので(酒場の男達は『ちゃいな!』『ちゃいなだ!』と意味の分からない言葉を発していたが……)それほど珍しい類いではない。眼を惹いたのは持っている武器だ。

蒼い海竜の甲殻で作られたバレル。少し形は違うが同じ色のフレームとストックを組み合わせたヘビィボウガン。

聞いたことがあったのだ。砂漠に建てられた街『ロックラック』。そこでは一般のハンターが使っているボウガンとは違い、パーツを組み合わせることによって様々な性能のボウガンの作成が出来る、と。

「……あ、あの、素晴らしい武器をお持ちのようで……少し拝見してもよろしいですか?」

気付けば、今するべき内容では絶対にない言葉が私の口から漏れていた。

「……別に構わないけれど」

この時の彼女の「……」が決して嫌そうだったり、怪訝な雰囲気を浮かべていなかったことをまず弁解しておきたい。
あくまで無表情。
彼女は喋る前に一度相手の顔をじっと見る癖があるようなのだ。
ほんとに。



話は飛躍するが、何を隠そう私はボウガンが大好きなのだ。
ただ死ぬほど残念なことにボウガンとの相性が悪かった為使うのは諦めている。

「凄い……雷迅砲サンダークルスのバレルにあえて雷砲サンダークルスをセッティングか……なるほど、これで撃てる弾が………素晴らしい………!」

「モモ姉……目付きが怖いよ?」

目を光らせ、息づかいを荒くしてボウガンを凝視している私にヨルヴァは若干距離を置きながら、傍らの女性に話しかける

「おねーさん、名前は?」

言われた彼女はスッとギルドカードを差し出した。
名前の部分には『am』と記されている。

「……アム?」

「……アンよ」

無表情で即訂正された。よく間違われるのだろうか。

「ふーん、ねぇアン姉さん。それでどうしてオイラたちのとこに?」

常識人なはずのモモが戦闘不能のため、ヨルヴァが代わりを勤める。

「……気分ね。たまたま」

「ふーん、そっか。で、お姉さんは何を狩りたいの?」

並みの人間なら威圧されそうな程の無表情で話すアンにヨルヴァは気にせずに質問を続ける。

「……黒轟竜」

「黒ティガ……か。うん、分かった。……でもオイラ達の今の現状、ギルドから聞いてはいるよね?」

二人が抜けて以降、些細なことで争いが絶えずクエストを失敗し続け、今ではロアルドロス程度のクエストにしかこなせなくなっていたのだ。

「……私に任せて欲しい」

「……オッケー。でもこれでダメならこのパーティー……マジに潮時かもね」

ヨルヴァはボソリと悲しそうに呟くと、『モモ姉! クエストだよ!』と未だボウガンにへばりつくモモを引っ張っていった。


     


大量の溶岩を噴射する巨大な火山の麓にあるベースキャンプ。離れていても熱帯並みの温度が辺りを包んでいる。

「小僧、分かってるな?」

「おっさんこそ」

クエスト開始から険悪な雰囲気が立ち込め始める。
お互いクエストを無事に終わらせたいと思っているだけなのに何故か噛み合わない。

「二人とも……」

「……行きましょう」

たしなめようとしたモモに被せてアンは三人を促す。
ハルクより高いランクのG級ハンターの言葉に二人は睨み合うも渋々としたがった。

「見当たらんな……」

「隠れてんのかな?」


いくつものエリアを黙々と進み、クーラードリンクの空き瓶が二つばかり転がった頃、


「……いたわ。構えて」

「しゃあ! やってやるぜ!」

「速攻で終わらせてやるわ!」

「よし………」

遂に目的を発見し、四人は武器を構えた。



――しかし


「……モモ。あなたは下がっていなさい。戦闘に参加しなくていい」

アンの口からあり得ない言葉が出たのだ。

「そんな!? 一体何を考えて……!」

「……黙って。静かにそこで、しっかり見ていなさい」

「………っ!」

有無を言わさないアンの剣幕に押され、モモは何も言うことが出来なかった。

(何故!? 最後の狩りになるかもしれないのに………!)

モモも薄々感じ取っていた。ヨルヴァが、恐らくハルクもそう考えていることに。
だからこそ絶対に成功させるべく念入りに支度もしたのに。


(この様は何だ!?)


もうあんな女の言うことなど無視して狩り場に出てしまおうか……そう考えた時、私の目に映ったのはあり得ない……いや、懐かしい光景だった。

「はぁ!」

「せやぁ!」

二人がお互いを邪魔することなく攻撃をしている。

何故……と思ったが答えは目の前にあった。

アンの撃つ弾は二人の間をすり抜け、黒轟竜の額に直撃し怯む。

「……ハルク、後ろへ」

静かだがよく通る声でアンはハルクに指示を飛ばした。

「む!」

「そりゃぁ! おっさんナイス立ち回り!」

それを聞いたハルクが後ろに回り込み、切り上げを始めると、前にいたヨルヴァがティガレックスの頭に属性解放突きを撃ち放っていた。

「凄い………」

モモは怒りを忘れて驚いていた。

ヨルヴァの独特な動き、ハルクの癖、そしてそれを察して指示を出しながら攻撃するアン。
彼らの動きを外側から見ることによって、モモは自分の視界が遥かに広がったのを感じた。

そして理解した。
アンの指示は二人の動きを的確に読んで行っていて、同時に少しでも間違えると即、大事に至ってしまうことも。

そんなリスクを私は負う覚悟があっただろうか?
いや、無かったから半端な指示しか出来なかったのだ。


「そうか………」

あの手紙の意味がやっと分かった。


【目標を達成しました】


「すげぇ! きちっと狩れたよ!」

「うむ! 素晴らしい指示だった!」

クエストが終わった後、二人は直ぐ様アンに駆け寄っていた。

「……ありがとう」

やはり無表情だったが、二人は久々の大成功に舞い上がり全く気にしていない。

「アン姉さん! よければパーティー組もうよ!」

「ワシからもお願いしたい!」

指示以外でも彼女の働きは常軌を逸していた。ポーチから他のボウガンのパーツを取り出し、その場で組み替え、あらゆる弾丸をばら蒔いていたのだ。ロックラックのガンナーでもパーツの変更は加工屋に任せているはずなのだが……。
彼女のパーツ変更は間違いなく加工屋のそれよりも素早く行われていた。
そんな彼女をパーティーに引き込みたいと思うのは当然だ。

「……それは無理ね。私はもうここを発ってしまうから」

しかしあっさりと断られてしまう。

「そんなぁ……」

ヨルヴァは心底ガッカリしたように肩を落とした。

「でも、代わりに指示を出せるリーダーを紹介する」

「何?」

「代わりって?」



「……モモ、もう大丈夫でしょう?」

「……」

アンの後ろから、モモはゆっくりと顔を出した。

「モモ姉が……?」

「モモがリーダーに?」

二人とも少し不安そうな顔を浮かべる。
それもそのはずだ。初めての狩り以来、活躍という活躍は全員が出来ていなかったのだから。

「二人とも、私は今回アンさんに多くのことを教わった。まだ未熟なところはあると思うが、二人のことは誰よりも見てきたと断言っきる。だから私に二人の命……預けてくれないか」

モモの黒い瞳は凛と輝いていた。
その眼を見て二人はニッと笑う。

「……ふん、ちょっと目を離した隙に随分と逞しい眼になりおって。なぁ?」

「うん。モモ姉……なんか凄く頼もしくなった」

「そんな面と向かって言われると……照れる」

「あはは! モモ姉、顔赤いよ!」

三人は久々に沢山笑った。これから、もっと笑えるようにしたい。
モモは今日得た教訓をしっかりと心に刻み込んだ。


「…………」

それを見ていたアンは、少しだけ微笑んでような気がした。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「いやぁ……! 久々の温泉だぁ!」

「ハンマーさん! ちゃんとタオルは巻いて……あぁ! 全くもう……」


ユクモの温泉にドボン! と大きな湯柱が立つ。


「いやぁ~、久しぶりの温泉は最高だねぇ!」

「そうですねぇ。ポッケからここに来たのが二年前になりますからね……。まさかまた旅に出るとは思いませんでしたけど」

「やぁ~、有意義な旅になったんじゃないかな? にしても……やっぱりユクモの温泉は格別だわ」

「それは納得ですね……。それにしても良かったんですか? モモさんにあんな意地悪な手紙書いて」

「んにゃ、『あれ』は人によって見方が違うからね。私があれこれいうと逆効果になりかねないんだ」

んー、と伸びをしながらハンマーは答えた。

「あっなるほど。ハンマーさんも色々考えてはいるんですね」

アクアは感心したように頷く。

「何か失礼なこと言わなかった? あとね、その道のプロにもお願いしておいた」

「プロ? 誰ですか?」

「私の知り合い。一部じゃ伝説なんだよ?」

「へー、じゃあハンマーさんより凄いんですね」

「その言い方は何か悪意があるよね………でもあながち間違いじゃないから困るかも。ま、もうじき紹介するよ」

「……そろそろですもんね。皆、集まればいいんですけど」

「まぁ何とかなるでしょ」

「ふふっ……相変わらず前向きなんですから」

月光が温泉の湯気を照りつけ、どこか幻想的な雰囲気を作り出している。
その中で二人はカチリと酒杯を交わした。

久々の故郷で二人はのぼせるまで語り合った。
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楽太郎

Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
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