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ガイドポストは龍の調べ ~Lost Memory´s~ 第一話

2012/11/16

とある山間(やまあい)の谷に湧き出た温泉を中心に築かれた村『ユクモ』。

季節によって色合いを変えるこの穏やかな山村には、「ユクモの木」と呼ばれる良質な木材が扱われており、さまざまな地へと出荷されている。
それに加えて、ギルドが運営する集会所と露天風呂をかねた大規模な入浴施設があり、その高い効能から観光地としても高い人気を博しているのだ。

「はぁ………」

そんな浴場で彼女は一人、ぷかりと温泉に浮かんでいた。
各地から特別な湯元を引いてブレンドされた湯は、その効能を示すかのように艶やかな色彩を揺らしている。
やわらかな湯煙の漂う中で、水面にゆっくりと波紋が拡がっていた。

「あ、いたいた! アクアー!」

「う……ハンマーさん」

足音と共に温泉に明快な声が響くと、アクアと呼ばれた少女は湯の中でむくりと体を起こす。

「探したんだよ? そりゃ村長に泣きながら迎えられたら逃げたくなるのも分かるけどさ……土地勘の無い私を残していくのはどうかなぁ?」

頭以外をナルガ装備で固めたウインドボブの女性――ハンマーはそう言いながらジトッと家(村)出娘を睨む。

その恨めしげな声にアクアは「……すみません。つい……」と言ってブクブクと鼻頭まで頭を湯に沈めてしまう。

「コラァッ、いい加減出てこーい!」

「…………」

そんな彼女の声にもアクアは無言のまま上目遣いで見つめ返すだけで、動こうとしない。

「アクアー? 早く私に村の案内と温泉のマナーを伝授しないと……」

ニコリとしながらゆっくり背中の大鎚を置くハンマー。その様子にアクアはゾワリと急激な不安に襲われた。

「えっ? ……ハンマーさん? ちょっ……何を!?」

「こうなるぞぉぉぉ!!」

「きゃぁぁぁぁっ!?」

ナルガもびっくりな速さで脱衣したハンマーが、脱いだそのままに温泉に飛び込んだのだ。

盛大に水飛沫が飛び散り、溢れたお湯が洗い場の桶を浴場の端まで押し流す。

「……ぷはっ! 何するんですか!?」

大量のお湯を浴びたアクアが頭を振るわせながら抗議すると、ハンマーはニヤリとして高らかに笑い始める。

「あはははは! うじうじしてるからそうなるのだー!」

「なぁっ!?」

その一言にムッとした表情を浮かべたアクアは、両手を筒状に重ね合わせ、標準を定める。

「喰らえ! ユクモ流水鉄砲!!」

その両手から発射されたお湯は、物凄い速さで直線を描き、ハンマーの額に直撃。水鉄砲にあるまじき着弾音を響かせた。

「いっっったぁ!!! 何その水圧っ!? ならこっちはポッケ式水鉄砲!」

「えぇぇ!?」

目頭に涙を浮かべながら両手を正面に突き出すハンマー。瞬間、アクアの目の前にお湯の壁が立ちはだかった。

「ぶわっ!? げほっ、げほっ! ただお湯被せただけじゃないですか!」

「勝てば、いいんだよ」

「めちゃくちゃ悪い顔してますよっ!?」

その後も二人はああだこうだ言いながら遊び散らし、お湯が半分になるまで続いたのだった。


     



「はぁ……疲れた」

ぐでーっと背中を岩場にもたれてハンマーが呟く。

「誰のせいですか誰の。てかタオル巻いてくださいよ。マナー違反ですよ? 混浴なのに」

「だって誰かさんが教えてくれないんだも……って混浴!? ちょちょ……タオルタオル!」

「更衣場にあったじゃないですか! まったくもう……」

慌てて更衣場に駆けていくハンマーを見ていたアクアであったが、不意に彼女の口から笑いがこぼれた。

「……ふふっ」

(本当に帰ってこれたんだ……ハンマーさんと一緒に)

「うーん」と足を伸ばしてアクアは、懐かしい温泉の香りに身を任せ、ゆっくり瞳を閉じる。

これからどうしようか、何をしようか……そんなことを考えながら。





この物語はアクアとハンマーがヨルヴァ達と出会う、およそ2年前の話である。




      



「うーん……のぼせたかも……」

「鍛え方が甘いんですよ!」

「こちとら雪山勤務だったんだから……しょうがないじゃん……」

これ見よがしにニヤリと言い放つアクアに、顔を蒸気させたハンマーはふらふらと言い返す。

「とりあえず一旦休憩にしましょうか。特製ドリンク飲みます?」

「うん……何かスッキリシュワッ! としたのない?」

「沢山ありますよ?」

「じゃあ何か適当なのをお願……」
「一緒に選びに行きましょう!」

「え、私は少し横に……ちょっ、引っ張んないでぇ……!」

力なく引っ張られていくハンマー。
後にも先にもアクアが主導権を握れたのはこの時だけだという。





「ぷはぁー、やっと生き返った!」

「そのボコボコーラってどんな味です?」

「ん、一口いる?」

「じゃあ私のユクモラムネもどうぞ」

二人が集会所の椅子に腰かけてドリンクを飲んでいると、入り口の方から騒がしい声が聞こえてきた。


「えー? いいじゃん、せっかくの混浴なんだよ?」

「だからなぁ! 混浴だからって必ず一緒に入らなきゃならない訳じゃねぇだろ!?」

やって来たのはアクアよりも少し年上に見える、浴衣を着た男女だ。女性は美しい白髪、男性は燃えるような赤髪をしている。

この集会浴場の階上や周囲には宿泊施設が造られており、怪我や万病に効くという効能を聞いて遠くから湯治にやって来る客やハンターは多い。

(浴衣を着ているってことは多分あの二人も……でもなにか様子がおかしいですね)

「何さ、減るもんじゃなし」

「そういう問題じゃねぇって言ってんだよ……てかまず手を離せ」

「いーやーだー」


浴衣(ご当地ギルド限定販売! 桃色アイルーダルマ(ver 1980z)の女性がニヤニヤしながら男性の腕を引っ張る。
赤髪の男性は抵抗しながら困り半分、イラつき半分にため息をつく。

アクアの感じた違和感は簡単に分かった。男は温泉に入ることを非常に嫌がっているのだ。

(あぁ……きっとインナーとタオル着用のことを知らないんですね。可哀想に思いっきりからかわれて……ん?)

アクアが不憫そうな顔をしている横で、ハンマーが二人の方を見つめながら、腕を組んで黙り込んでいたのだ。出会った頃からしていた、考え事をする時の癖だ。

「どうかしたんですか?」

「いやさ、あの子どっかで……」

ハンマーは浴衣の女性を見つめていた。

「知り合いなんですか?」

その質問にハンマーは「んー」と唸っていたが、突然表情をパッと光らせ嬉しい悲鳴を上げた。

「あぁぁ!!! やっぱりそうだ!」

ハンマーはすぐに手を振って駆け寄ると、浴衣の女性の手を取ってブンブンと振り回す。

「チョモ! チョモじゃん! 久しぶりー!」

浴衣の女性――チョモは突然の出来事に「わっわっわっ!?」と困惑していたが、ハンマーの顔を見た途端、こちらもパッと表情が輝いた。

「おぁぁー! ハマちゃんじゃん! ホント久し振り! どうしてここに? っておいコラ」

感動の再開。そんな雰囲気の中、浴衣の男はどさくさに紛れての逃亡を図ったが、ガッチリと帯を捕まれてしまい観念する。

「いやーマジで、ホントに久しぶりだね。五年ぶり位?」

「それくらいだね。へー、その様子じゃしっかりハンターやってるみたいじゃん! で、そっちの彼女は?」

ハンマーと握手を交わしていたチョモは、ハンマーの後ろで様子を伺っていたアクアに視線を向けた。
きらりと輝く白髪と笑顔が合間って思わずアクアはドキリとしてしまう。

「あっちはアクア。この村出身のハンターで、色々あって今は私の相方なんだ!」

「あ、相方ってそんな……」

面と向かってそんなことを言われると少し照れ臭くなってしまう。
そんなアクアを見てチョモはニヤニヤとしている。

「ふぅん、そかそか。ハマちゃん、ハンター以外もうまくやってるみたいだねぇ」

「いやーそれほどでも、ある」

「ハンマーさん何言ってるんですか!? てかさっきから呼ばれてるハマちゃんって……?」

アクアは突然のやり取りにすっかり困惑してしまっていた。

「ハマちゃんは単純に名前が紛らわしいから自然に」

「あぁ……納得です」

「あ、自己紹介が遅れたね。私はチョモ。んでこっちでムスッとしてるのがフレアね。二人ともギルドナイトをやってるんだ」

「ギルドナイト! 凄い……初めて見ました!」

アクアは自分の質問をサラッと躱されたことも忘れて驚いてしまう。
実質ハンターのトップが目の前にいるようなものなのだ。

「いやいや、普通のハンターが公務を嫌々こなしてるだけだから! そんな尊敬されるもんじゃないって」

そう言いながらも、にやけながら手をひらひらさせるチョモ。
まんざらでも無さそうだ。

「ん? 今フレアって言った?」

「そうだよ? こいつがフレア。あ、ハマちゃんはコイツとちゃんと会ったの初めてか」

「あの時はゴタゴタしてて言えなかったから、遅れたけど今言わせて。五年前は世話になったよ……本当にありがとう、フレア」

「たまたまだったんだ。気にすんな」

フレアはそれだけ言うとプイッと横を向いてしまう。

「何照れてんのよ! いいのよハマちゃん。こんな奴だから、もう恩義なんて感じることないわ」

「何でお前が勝手に締めてんだよ!?」

再び言い合いを始めた二人を尻目に、アクアはハンマーに小声で話しかける。

「あの、ハンマーさん……五年前って?」

「あぁ私ね、五年前の紛争でフレアとチョモに助けられたんだ。まぁ命の恩人って感じ」

「そんなことがあったんですか!?」

さらっと話された過去に驚きを隠せないアクア。
そんなアクアにハンマーは申し訳なさそうな顔になる。

「ごめん。別に隠してた訳じゃないんだけど、内容が内容だし……なかなかタイミングが、ね」

「いいんですよ。ちょっと驚いちゃいましたけど、時間は沢山ありますから。じっくり聞き出してやりますよ」

「あはは! 期待してるよ」

「ねぇねぇ! せっかく会ったんだしさ、クエストに行こうよ!」

口論が終わったのか(よく見たらフレアが膝を着いていた)、チョモが二人にそんな話を持ちかけてきた。

「お! いいね。じゃあ何に行く?」

「さっきさ、丁度いいのが貼ってあったんだよ。ほらこれ」

チョモがひらりと1枚の紙を取り出した。

「『雨に煙る、双子の山 』って……ど、ドボルベルク二頭ですか!?」

「水没林で探索隊が緊急信号を発信してるらしいの」

「なら急がなきゃですね」

「よし、じゃあ各自用意を済ませたらここに集合して、すぐに出発しよう!」

その後、それぞれが準備へと向かいおよそ10分が経過した頃、チョモを除いた三人は既に集会所に集まっていた。

「おっせーなぁチョモの奴……何してんだ?」

「まぁまぁ、私たちも今来たばかりですし……」

三白眼をギラギラとさせているフレアをアクアがなだめる。

「ふーん、フレアって大剣使いなんだ」

ハンマーがふとフレアに話しかけた。

「そういうアンタはハンマーなんだな」

フレアの武器は焔剣リオレウス。火竜の上鱗や翼膜、獄炎石をふんだんに使用した大剣で、ハンマーのデッドリボルバーと同レベルの威力を持つ武器であった。

「………」
「………」

二人は互いの武器をじっと見つめた後、何気ない一言を放った。

「ああ、火力バカなんだ」
「ああ、火力バカなのな」

一瞬、空気が止まる。

「はぁ!?」
「あぁ!?」
「えぇ!?」

突如険しい剣幕で睨み合い始めた二人にアクアはおろおろとする。

「おいおい、聞きづてならねぇな! 誰が火力バカだって? 俺はきちんと戦略立てて戦ってんだ! そっちの『トンカチ』と違って振り回すだけとは違げぇんだよ!」

「トンカチ!? 何言ってんの、私のちゃんと理にかなった立ち回りに鈍い大剣が敵う訳ないじゃん! ただの『板』が出来るのはせいぜいピロピロした尻尾を切るくらいだけでしょ!」

「板だと!? ふざけんなよ!」

「なにさ!!」

「あ……あの、二人ともあることないこと言わないほうが……」

少なくともハンマーさんの立ち回りは『理』にかなってはないです……。
静かに突っ込むアクアを意にも介さず二人が口論を続けていると、酒場の扉が開く音がした。
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Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
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