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ガイドポストは龍の調べ ~Lost memory´s~ 第二話

2012/11/19

少なくともハンマーさんの立ち回りは『理』にかなってはないです……。
静かに突っ込むアクアを意にも介さず二人が口論を続けていると、酒場の扉が開く音がした。

「お待たせー! いやぁ浴衣って脱ぐの難しいねぇ。こんがらが……って何してんの?」

「あ、チョモさん……実は……」

アクアは経緯を簡潔に説明したのだが、チョモはケロッとした表情で聞き終えてこう言ったのだ。

「ふんふん……なるほど。んじゃ、クエスト出ようか」

「ええっ!?」

この人は話を聞いていたのだろうか……そう思ってしまうほどあっけらかんとした顔をした彼女はすぐにクエストの手続きを済ませてしまった。
そしてトテテ、と口論真っ盛りの二人に近づく。

「へい! 野郎ども! ここで言い合っても仕方ないんだからさ、もっといい方法で決着つけなよ」

「いい方法で?」

「決着? てか私も野郎!?」

二人は興味が沸いたのか、口論を止めてチョモの方を向く。
そんな二人にチョモはニヤリとして言い放った。

「今回のターゲットはドボルベルクは二頭……。この意味は分かるね?」





     




「チョモさん……ホントに大丈夫だったんでしょうか?」

ジットリと湿った地面に足を取られないように用心しながら、アクアは不安な表情を浮かべて言った。

クエストの舞台である水没林はその名の通り、半分ほどが川に沈んでしまった湿林帯で水陸に対応した狂暴な生物が数多く生息している危険な区域である。

今は時期の関係で普段水没している場所も歩けるような水位に落ち着いているが、肌にまとわり付くような生ぬるい空気は変わらずに心地悪い。
水位が落ちているため海竜と呼ばれる危険な種類は息を潜めているが、代わりに姿を現すモンスターもいる。
ドボルベルクはその内の一匹である。
普段の二人なら問題ない相手なのだけれど……。

「大丈夫だって。アクアちゃんはハマちゃんが本気でそんな下らない理由で喧嘩すると思う?」

『私に考えがあるから』と喧嘩中の二人にドボルベルク一匹を任せた自称策士(と自分で言ってた)が言うのだから何か考えがあるのだろう、それは分かるのだが。

「んー……それは確かにそうですけど」

実際に喧嘩を見ているので答えが鈍ってしまうのだ。

「ま、ハマちゃんが大剣使いを、フレアがハンマー使いを苦手にしてるのは確かなんだけどねぇ」

「そうなんですか?」

これまた初耳である。
でもなんで……?

そんな表情を見て取ったのかチョモは続けて話し出す。

「んん……フレアのほうは私が原因なんだけども……」

チョモは「あはは」と恥ずかしそうに笑い、次に困ったような顔になる。

「実はね、ハマちゃんのほうはよく分かんないんだよねぇ……」

「話してくれなかったってことですか?」

「いや、どうやら本人も分かってないみたい。本気で嫌いな訳じゃないし、大剣の利点だって十分に理解してるっていうんだけど……何でか苦手意識が出ちゃうんだって」

「不思議な話ですね……知らずにトラウマとか抱えてたり?」

「あの子にトラウマとか全然想像出来ないけどね」

「同感です!」

「あはは! やっぱりそうかぁ……。ねぇ、ハンマーと会ったときの話聞かせてよ、ドボル探しがてらさ。向こうは問題ないはずだし」

「いいですよ。その代わりハンマーさんの昔話、聞かせてください。あの人……ほとんど話してくれなくて」

「……分かった、私の知ってることなら。でも許してあげて? アイツお姉さんぶってるから、あなたに弱いとこ見せたくないんだと思う」

「……それは分かってます。結構無理、させちゃってますから」

「そっか……なら教えるべきだろうね。でもそっちのほうが先だよ! その後でちゃんと話すからさ」

そんなチョモにアクアは「約束ですよ?」と言い、ゆっくりと思い返し始めた。忘れもしない、あの日。

「懐かしいですね……あれは、とある理由で私がポッケ村を訪れた時のことです……びっくりしましたよ、あの人屋根の上から―――」

二人はしばらくの間思い出話をし、アクアは『ハンマー』について、その過去を初めて知ることになる。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「いた!」
「いた!」

「俺が先に見つけたぞ!」
「私が先に見つけたよ!」

「……何っ!?」
「……なっ!?」

一方その頃。
話題の二人は相変わらずの様子で、蒸し暑い水没林の空気を更に居心地の悪いものにしていた。

「アンタは下がってろ。こいつは俺一人で仕留める」

「何言ってるの? ここは私だけで大丈夫だから二人のとこに行ってきなよ」

「ホントに強情だな」

「そっちこそ」

ぐぬぬ……と睨み合っていると、不意に辺りが暗くなった。

「な……何?」

「おいおいおい! ヤバイぞ上だ!」

「えっ……うわぁ!?」

二人が咄嗟に横へ飛んだ瞬間、その場には巨大な塊が深々とめり込んでいた。
圧倒的な質量による衝撃に二人はバランスを取れずによろける。

「くっ……あんなデカイ奴の攻撃に気がつかなかったなんてよ!」

体を軸にして尻尾を回転させ、その勢いで飛び上がり相手を叩き潰すドボルベルク最大の攻撃――通称『ムロフシ』。名前の由来は定かではないが、東方の島にいるという英雄の名から取られたというのが有力だ。

「言い合いなんてしてる場合じゃなかったね……!」

「全くだ……! んの野郎、俺がぶった切ってやる!」

フレアはドボルベルクの正面に回り込むと、反動で動けない隙をつき顔面に強烈な溜め切りを叩きつけた。

「ヴォォォォ!!」

呻き声と共に強固な角が片方砕ける。

「見たか! これが大剣の……っておい!?」

自慢しようと後ろを振り返ったフレアは、あり得ない場所で彼女を発見した。

「甘い! 弱点を直接、叩けばいいんだ、よ!」

ドボルベルクの巨大な背中を息を切らして駆け登っていたハンマーは、ドボルベルクのスタミナの源、そして弱点でもある露出したコブに向けて、デットリボルバーを勢いよく振り下ろした。

「あり得ねぇだろ……」

背中で起きる衝撃と爆炎。
呻き声と共に倒れるドボルベルクと、ドヤ顔のハンマー。

「………」

一撃でダウンを取ってしまった彼女にフレアは一瞬唖然とするが、すぐに自分の仕事を思い出し駆け出した。

「全部持ってかれて堪るかよ! 最後はきっちり頂くぜ!」

言うなりフレアはダウンして目の前にさらけ出された柔らかいコブに向かい、自慢の大剣を叩きつける。

「オォォォォ!!」

ドボルベルクの口から悲痛な叫びが上がり始めた。
切り口から溢れ出した炎がコブを一瞬で包み込み、たちまちに背中の苔や茸に燃え移ったのだ。

「どうだ! 俺の火力舐めんなっつんだ!」

「うわぁ……何この無茶苦茶な火力……」

そんな二人の視線の先で燃え盛る火炎は、ドボルベルクの驚異的な生命力までも飲み込み、水没林で猛威を奮っていた怪物を動かぬ山へと還したのだった。

「やるじゃん」

ふぅ、と息をつくフレアの元にハンマーは歩み寄っていた。

「別に。耐久度から見てもこいつは下位のランクだ。そっちこそ滅茶苦茶なもん見せてくれたな。確かに効率……のいい立ち回りだったわ」

「あんなのその場の勢いだよ。フレアこそ、何なのあの無茶苦茶な火力! 上位の武器にしちゃ強すぎでしょ」

「あぁ、加工屋に頼んだ特注品だからな! 扱いが少し難しいが頼りにしてんだ」

「あはは! 結局『火力命!』じゃん」

「うるせぇ! そっちだって結局は力まかせじゃねぇか」

「………」

「………」

再び沈黙が流れ出す。しかしその沈黙は、堪えきれずに吹き出したハンマーによって簡単に破られた。

「やめやめ! ごめんね、本気で言ってた訳じゃないんだ。ただちょっと熱入っちゃって……ね」

その言葉にフレアもフッと肩の力が抜け、バツの悪そうな顔になる。

「悪ぃ、俺もそうだ。アンタが本気で言ってないのは分かってたんだがつい……な」

こんがり焼け焦げたドボルベルクを背景に、二人の周りでよどんでいた空気は綺麗さっぱり消え去っていた。

「いやぁ……私、自分でもよく分からないんだけど大剣使いってのがどうも苦手で……」

「トラウマか? 俺も昔のトラウマでハンマー使ってる奴をつい警戒しちまう……」

「それ……もしかして、チョモのせいだったり?」

「……昔のアイツの話は知ってんだろ?」

「……一時は相当だったらしいね」

過去を思い返してげんなりするフレアに同情するような顔を浮かべていたハンマーだったが、何かを思い出したように慌てた表情を浮かべた。

「いけない、あと一匹いるんだった! 二人を手伝いに行かないと!」

「そうだった! ……ってちょっと待て」

「ん?」

ハンマーを引き止めたフレアはニヤリとして言い放った。

「焦る必要ねーよ。向こうにはいるのは俺のおっかない相方とアンタの相棒だろ?」

慌てていたハンマーも、その言葉にはたと思い止まる。

「ああ……確かによく考えたら……」

二人は彼女らが戦っている場面を思い描くと、アハハと笑って傍の切り株へと腰を下ろした。

「全然心配ないね」
「全然心配ねーわ」

むしろドボルベルクが可哀想に思えてくる。
後は向こうが終わるのを待つだけという結論に達し、くつろいでいるとハンマーが思い出したように口を開いた。

「あ、実は私の相棒も意外とおっかないんだよ」

その言葉にフレアは片眉を吊り上げ、意外そうな顔を浮かべる。

「マジか。そんな風には見えなかったけどな」

「いやいや、さっきだってさ……」

「嘘だろ? でもそんなこと言ったらチョモの奴はな……」



     



「……チョモさん、なーんか失礼なこと言ってますね」

「うん。ばっちし聞こえてる」

愚痴に花を咲かせる二人から、およそ五メートル離れた木陰。
そこには話題の相方達がとっくにドボルベルクを討伐して隠れていたのである。

「一応心配して来てみたら何なのあれ? 流石のおねーさんも怒っちゃうよ?」

「私も最近ハンマーさんに甘くし過ぎてたかなぁと思う節がありまして……」

二人分の冷たい視線が突き刺さっていることに当の二人はまだ気付いていない。

「――そこでチョモの奴が言うわけよ!」

「アハハハ! それだったらアクアだって――」

二人の盛大な笑い声に木陰の葉が次第に震えてくる。

「……いくか」

「ええ」

もし誰かがこの場にいたなら、木陰から迅竜が飛び出したと錯覚しただろう。

切り株に座って呑気に談笑していた二人がその殺気に気付いた時にはもう遅く、ピタリと背後まで迫られていた。

「うぐっ!? ……が……ぁ……チ……チョモ……さん?」

がっちりと裸絞めを決められたフレア。
色々な意味で血の気が引いていく。
そして追撃の如く、後ろから凍るような言葉が襲いかかってきた。

「おい。人が散々心配して気ぃ回してやったってのに何しくさってんだコラ。その鬱陶しい髪刈り上げてボンズスタイルにしてやろうか? あ?」

(やばいやばいやばいやばい……昔のチョモに戻ってるじゃねーか! しかも全盛期のだ……)

「黙ってちゃ分かんねーだろうが!」

「はい! すみません!」

(やっぱこっちの方が断然怖いだろっ!!?)

フレアの叫びは心の中で木霊し続けた。



「ア……アクア? この喉元を通って地面に突き刺さってるモノは……ひっ!?」

一方、アクアは突き刺した太刀をピタリと喉に押し付け、ゆっくりとハンマーの耳元に囁いていた。

「ねぇ……、ハンマーさん? 私そろそろユクモ天一式から装備を変えようと思ってるんですけどね? ナルガ装備にしよっかなぁ……なんて思ってるんですよ」

「アクア……さん?」

アクアが後ろでにっこりと微笑むのが分かった。

「その装備、ひん剥いていいですか?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!!」


(絶っ対にこっちがおっかないでしょ!!)

今後一生ハッキリしないであろう議題が浮かんだ瞬間だった。

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Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
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