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ガイドポストは龍の調べ ~Lost memory´s~ 第五話

2012/11/26

「私、薬とか得意なんだ。 空腹に見せるお薬やお姉ちゃん達に使った痺れ薬もぜーんぶ手作りだよ。痺れ薬の使い方は簡単、ここに塗ってチョコッと引っ掻くだけー!」

じゃーん! とルシャは得意気にアイルーの双剣を見せつける。
パペット人形に棒が付いたそれだけの物に見えるが、その小さな腕の先端にはギラリと細長い爪が光っていた。

「てかほんとね、いくらマリさんの指示だからってあんな演技やだよ! 人に媚なんか売りたくないし! それに……」

ぷくりと頬を膨らませるルシャだったが、次の文句は隣の人物に手に阻まれることになる。

「んむっ!?」

「ルシャ、お喋りはそこまでです。奴の眼が回復しますよ」

「むぐっ!」

リノプロヘルムのせいで声はくぐもっていたが、ぞくりとする冷たさが感じられる女性の声だった。

「あいつ痺れさせる?」

「必要ないです」

そう言うと女は背中から大剣を取り出した。
はらりと落ちた黒布。その中から出てきたのは怪しい紫色の光を纏った、見たことの無いほど歪(いびつ)な武器。

「ギュオォォォォ!!」

視界の回復したアマツマガツチは、一番近くにいた女に目掛け巨大な水の塊を吐き出す。
しかし女は大剣を片手で軽々と振るい、まるで煙でも払うかのように水弾を掻き消してみせた。
大剣を包み込んでいる光はその輝きを増し、陽炎(かげろう)が大剣をまるで生きているかのように揺らめかせていた。

「ハンマーさん……」

ハンマーの横からアクアが小さな声で呟く。

「あれは……あってはいけない剣だと思います……」

その声は微かに、震えていた。

「……私もあんなに不気味な武器は初めて見るよ。しかも大剣……今までで一番嫌な気持ちだ」


気持ちが悪い。

今すぐ逃げ出したい。

そんな気持ちに刈られたが、動かせるのは首から上だけの状況では会話するくらいしか出来ない。
後はただ、ただ見ているだけ。

「ギュオォォ!!」

自分の攻撃が効かなかったと分かったのか、激昂したアマツマガツチは風を纏って突進を仕掛けた。
巨体は風に乗り、恐るべきスピードで女へと向かう。当たればひとたまりもないだろうその攻撃を女は何故か避けようともしない。

「あの人死ぬ気ですか!?」

そう叫んだアクアは次の瞬間、異常な出来事を見ることになる。

「手負いの古龍なんて片手で十分です」

女はそう言うと大剣を高く振り上げ、体を大きく捻り勢いよく剣の腹をアマツマガツチの頭部に振り下ろした。





信じられない、と誰しもが思った。
黒い雷が散ったと同時に、何とアマツマガツチは地面へと叩きつけられたのだ。固い地面に頭が半分ほど沈んでいる……相当な威力で無ければああはならない。


「ルシャ、血を」

「はーい」

この出来事に全く動じていない様子で、ルシャは懐から注射器を取り出して動けないアマツマガツチから血を抜き取る。

「採れたよー、アマツマガツチの『生き血』」

「上々です……なら、もうこれは用済みですね」

女は再び大剣を振り上げると、瀕死の古龍に今度は切っ先を向けて躊躇無く振り下ろした。

「そんな……」

自分達が弱らせたとはいえ、たった二撃でアマツマガツチを沈めてしまったのた。
素顔の見えない女にアクアは得たいの知れない恐怖を感じた。返り血を浴びたリノプロヘルムがより一層の不気味さを醸し出している。

「さて、と」

目的を達成したのか、貴重なアマツマガツチの素材に見向きもせずにこちらに体を向ける。

「ルシャが『お世話』になりました。私はマリアンと言います」

「よく言うぜ! 全部てめぇ等の作戦だったんだろ……っ! ……ん?」

その時フレアがハッとした表情になった。

「お前……この前の古龍化騒動の時に目撃されてたリノプロ女か!?」

「おやおや、目撃されてましたか」

「あの事件の……関係者?」

アクアの目が大きく見開かれる。

「あなたが……あのクシャルダオラやモンスターの古龍化を?」

「まぁ、そういうことになりますね」

髪の毛が逆立つのを感じた。

「お前がっ…! お前が居なかったらお父さんとお母さんはっ!!!」

「アクア落ち着いて! 興奮すると毒が回っちゃう!」

「………でもっ!!!! ……っ、……すみません」

必死にアクアをなだめたハンマーだったが、そこに再び冷たい声が聞こえていた。

「彼女には可哀想なことをしました。しかし、貴女も落ち着いてる場合ですかね?」

「……どういう意味?」

「忘れたんですか? 随分と都合のいい頭をしてるようですね」

マリアンはそう言うとリノプロヘルムに手をかけた。

「え、マリさんそれ取っちゃうの?」

「元々そのつもりで連れてきましたからね。そう言えばルシャ。持って来させたリノプロの替えを薬草まみれにした件には、キツイ仕置きを用意しておきますからね」

「だ……だってリュック持てなかったし……丁度収まったし……」

「………」

「ご、ごめんなさい」

「………」

「い、いやぁぁぁ! オンプウオの踊り食いはもう嫌ぁぁぁぁ!」

「……少し黙っててください」

マリアンは躊躇無くルシャを大剣でかち上げる。
「あぁぁぁぁ」とルシャはアマツマガツチの上へとぽすりと落ちて動かなくなった。

「話がずれましたね。『ハンマー』と言いましたか? まずはこれを見てください」

マリアンはリノプロをゆっくりと外し、素顔を晒す。

「え…………」

ゴトリ、と置かれたリノプロヘルムの音は静かに木霊している。


「ハンマー……さん?」

全員が息を飲んだ。防具の下から現れた素顔はハンマーにそっくりだったのだ。

違うのはハンマーよりも冷たく鋭い目と、片側だけ長く胸元まで垂らされた、ウェーブのかかった髪だけ。

「何でそんなに私に………」

驚きの隠せないハンマーにマリアンは「はぁ」と息を吐くと、倒れたハンマーに近づき胸倉を掴んで吊り上げた後、後ろへと放り投げた。

「ぐ……っ!?」


「ハマちゃ……っ!? ……てめえ!」

「ハンマーさん!? 大丈夫ですか!? 何て事をっ……!!」

「記憶を二度失っている……そんなことは分かっているつもりでしたが、こうも憎く思えるとは」

「記憶を……二度?」

力の入らない状態で放り投げられたのだ。相当の苦痛だろうがハンマーは気丈に質問を返す。

「一つは傭兵施設に入れられた時。もう一つは紛争が終わった時。私が関係しているのは一つ目の記憶です」

「私が施設に入る前の記憶……? 私は紛争中に捨てられて……」

「まどろっこしいですね! それは施設ですり替えられた記憶でしょう!」

淡々と話していたマリアンが初めて声を荒げた。





「単刀直入に言ってしまいましょうか……私と貴女は双子です」

「……………っ!?」

「物語ではよくありますよね? 生き別れた兄弟や姉妹の感動の再開……良く出来ていますよねぇ? でも現実ではそんな夢物語は存在しません」

冷たい、冷たい嗤い。
そしてアクアは耳を疑うことになる。
マリアンはそのままの口調でこう続けたのだ。









「そうでしょう? ハンマー……いえ、『マリディア』」


「マリ………ディア?」

「そう。それがあなたの本来の名前です。今の名前はただの……」

「違う! この名前は私の大切な……っ!」

ハンマーが動揺を隠せずに叫ぶ。
しかしマリアンは「ふぅん」と嘲るように笑った。
他の者は突然の出来事に声も出せない。

「誰から貰ったかも分からないで、ですか?」

「!? 知ってるのか!?」

「ええ、知ってますとも。ですがそれを教える義理はありません。言ったでしょう? 私はマリディア、貴女を強く憎んでいます。殺されないだけでも感謝して欲しいものです」

「私が……何を?」

その瞬間、アクアはマリアンの冷たい目の中に一瞬儚げな色が揺らめくのを見逃さなかった。

「あなたは当時、やんちゃな子供でした。両親と私は仕事をサボって遊ぶ貴方の代わりに働いたものです」

「とは言ってもそれに強い不満を覚えることはありませんでした……あの日までは。あの日、紛争の被害はついに私たちの村にまで広がりました。あの時、皆と村から逃げず、家に隠れるという危険な選択を取らざるを得なかったのはマリディア、あなたがドジをして足を挫いていたからです」

「…………」

「父は優秀な兵士でした。父の率いる兵隊は村を守る最後の砦……しかし敵兵は村へとやって来ました」

マリアンは淡々と話を続ける。失った自分の過去……自分の咎……それを聞いているハンマーがどんな表情を浮かべているのか、アクアの位置からは窺うことは出来ない。

「私たちを残して家を飛び出した母親がどうなったか、想像するのは易いことでしょう。私は双子の姉として震えるあなたを抱き締めていました。母に任されていましたからね」

「敵兵は幾許(いくばく)もせずにやって来て家を叩き壊しましたよ。倒れてくる柱からあなたを庇い、大怪我を負って呻く私の目の前で無傷の妹は兵士に連れられていきました」


「取り残された私は酷く絶望しましたよ。結局自分以外の者のためにいくら尽くしたとしても、返ってくるものは無い。無いどころかマイナスになって返ってくる。この世界を憎みました。呪い壊したい程、ね」

「マリアン……お前……」

「瓦礫から自力で抜け出した後の経緯は省きます。下らないものですから」

結論から言います、そう言ったマリアンの次の一言は全員を戦慄させた。



「私はこの世界を壊します」

その言葉は重く、胸に食い込んだ。とても嘘とは思えない。それが出来るという自信を持った本気の言葉だった。

「マリアン! 憎いのはこの私だろ!? 世界は関係ない!」

「先程も言いましたが、私が憎んでいるのはそんな小さなものではありません。世界中を歩いて分かりました。弱いものが貶められ、自分の事しか考えれない金と権力の持ち主だけが得をする世界……こんなもの壊れて当然です」

「そんなこと……っ」

「『そんなこと無い』……本当に言えますか? 『ハンターになって世界を見る』でしたか? あなたが今まで見てきたのは、世界のほんの一部だって本当は気付いているんでしょう?」

「私は……」

「世界を見て回るだなんて言いながら、楽しむだけ楽しんで嫌なことには見向きもしない。好きなときだけ人助けを気取って満足して終わり。あなたのやってきた事は只の自己満足なんですよ」

「………っ!」

「そんなことありません!!」

「アクア……?」

アクアは叫ばずにはいられなかった。

――だって私が背中を追い続けたこの人は………。

「私はずっと見てきたから分かります! ハンマーさんは何時だって真っ直ぐでした。緊急性の高いクエストを進んで受けて、必要だと感じたら依頼以上のこともやってました。一緒に温泉に入ったとき気付きましたよ……身体中傷だらけ。どんなことにも全力でぶつかっちゃう不器用な人だけど……ハンマーさんは立派なハンターです!」

――そして私の一番の目標だ。

「熱弁ありがとうございます。でもね、アクアさん。その一時的な救済で一体何が変わると思いますか? たった一度問題を解決したところで人はまた繰り返す。上辺だけを取り除いたところで本質なんか変わりようがないんです」

しかしマリアンの言葉にアクアの心は揺らぐことは無かった。



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Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
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