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氷ノ皇子

2013/01/30

「いやぁ、アイスさんマジでカッコイイですわ!」

「…………」

悪天候な凍土の夜。
普段なら透き通った空に満天の星と光の幕が絶景なのだが、今夜は一メートル先もまともに見えない猛吹雪に見舞われていた。

「うっひゃー! マジ寒い! アイスさんは何で平気なんスか?」

「…………」

ハンターどころか氷の世界の生き物でさえ滅多に出歩かない吹雪の夜。

そんな中でハンターは言葉を交わしながらたった二人の行軍を続けていた。

「なるほど! しゃべらずに無駄な体力を使わないことが大事なんスね! 流石ッス!」

「…………」

言葉を交わすと言ったが、先程から喋っているのは後方の男で、前方の男はそれに一切答えずに先を歩いている。


「ちょちょ! 速いですって! 待ってくださいよぉ!」

「……………」

例えるなら陰と陽、氷と炎。
この物語はそんな二人の会話をただ聞くだけの話だ。


「いやしかしホントすげえっス! 氷属性の片手剣しか使わなくて、防具も氷属性限定! こだわりがもうすげぇ!」

先程からひたすらに喋っている男の名前は『ショウコウ』。
変わった杖をつき、黒い『着物』と呼ばれる衣服を纏っているハゲ。
それ以外は知らない……というのも、コイツは凍土の探索中に出会った『ただの他人』だからだ。

「…静かにしろ」


「なのに狩り場は凍土限定! ……とかじゃなくて火山とかも行っちゃうとかアイスさん、まじヤバいっすよねー! いや良い意味でねっ!?」

なのにこっちの名前やら何やらを知っていて、怪しい事この上ない。


「…黙れ」



「アイスさんってば見かけも寒そうなのに言葉まで冷たいんだもんなぁ! あと氷属性の装備なのにマフラー常備! 寒いのか寒くないのか! 一体どっちなんだー! マジ噂通りっすよ! 流石『氷の皇子』! かっけぇス! ってわわっ!?」

……その呼び名は好きじゃない。

「…それ以上喋るなら、…その舌を落とすぞ」


「ごめんなさいごめんなさい! そんなつもりじゃなかったんスよ! だからそのナールドボッシュを下ろしてくださいってぅ! 俺はただアイスさんが気に入って……ってうぉぉっ!?」


「…躱した、か……」


「マジだ! マジに殺りにきた! すみません! もう黙ります!」

「…………」


「……ブファっ、だっはっはっはっはっ! ダメだ! 俺黙ってんの無理なんすよ! うひゃはははは! 」


「…地に還れ」


「うぉぉぉぉっ!? 頭かすった! 髪散ったよ! って俺ボンズスタイルだった! 髪無かった! セーフ! あはははは!」

「…っ!」

「危ない危ない危ないっ! すげぇ! 片手剣っていってもそんな速さ有り得ないですって! やばいやばい当たる当たるっ! 当たるから!」

「…………お前は一体何なんだ」

この一連のやり取りを見て、それ以外のことを思う人間はまずいないだろう。


「え? 俺? 俺っスか!? 俺はアイスさんに憧れて着いて来た、只のファンですよ! てかやったぁ! やっとアイスさんが俺に興味を! もう相棒でいいっすか? 相棒でいいっすか!? 相棒でいいですよね?」

「…帰れ」

「そぉんなこと言わないでくださいよぉ! 俺、アイスさんのサポート、バッチシしちゃいますんでぇ!」

「…この剣を躱せるなら実力は相当だろ。他を当たれ」

「いやいやいやへやん! やっべ噛んだ! あはは! 違いますよ! 俺はアイスさんの人柄に惚れこんだんス! あっ理由聞いちゃいます? 長くなりますよ? ……あれはまだ俺がこっちに来て間もない頃……あ、俺東の国出身で『ボーサン』って職業やってんすよ! そんでお師匠様に『お前は見聞を広めてこい!』なんて言われちゃって! それで別の大陸に島流しにあって、右も左も分かんないときにアイスさんが通りかかって、直感で『この人パネェ!』って………っあれ!? アイスさんちょっと待ってくださいよぉ!?」

「…興味がない」

「ここからがいい話なのにぃ! ん? どうしたんスか? 急に止まったりして」

コイツの大声に呼ばれたか……全く面倒な奴だ。

「…来た」

「来たって何がッスか? 別に何も見え……うおぉ!? なんスか!? 地震!?」

「…早くそこを退けろ」

喰われたくなかったら、だ。

「は、はいッス! これくらいでいいす……どわぁぁぁぁぁぁ!?」

「ギュオォォォォ!」

「何だこいつでけぇぇぇぇ! さっきの俺の足元から出てきた! なにそれこわいっ!」

「…下がってろ、俺の獲物だ」

アグナコトル亜種。
今此処等を縄張りにしてる奴だ。

「流石アイスさんカッケェ……って本当に大丈夫なんスか!? そいつ氷が友達って面してますよ!?」

「…黙ってろ」

「コココココ……」

「ヤバイ! アイスさん、あれなんかヤバイんじゃないすか!?」

「…ふっ!」

こいつのパターンは見飽きている。

「ギュオ……!?」

「すげぇ! ブレスをかわして柔らかい腹に剣を刺したぁ!? でもそれだけじゃ………あれ?」

「……ォォ」

「…………」

「うっそぉ!? たった一撃であの巨体が倒れた!? アイスさんどんな魔法使ったんですか!?」

「…どんな奴でも中身は生き物である以上体温がある。だからそれは奪えるし、凍る。俺は奴の急所を狙っただけだ」

「す……すっげぇ! 常人が出来ないことをそんな簡単に! どんだけサイコーなんすかアイスさん!」

「…御託はいい。いい加減本当の理由を話したらどうだ? …わざわざこんなところまで着いてきた訳があるだろう?」

これ以上付き纏われるのも面倒だしな。

「へ? や……やだなぁ! 何もないですよぉ! 俺は単に……」

「…まぁ『あの女についての情報を聞き出せ』。そんなとこだろう」

「げ」

「…どうせ依頼主はギルドの物好きなジジイ連中だろう」

「うはぁ……全部お見通しだったんすね」

ここまで隠すのが下手なやつも珍しいと思うが。

「…当たり前だ。そうでもなければ俺に着いてくる奴なんていない」

「でもでもっ! 俺がアイスさんに惚れ込んだのはマジですからっ! というかここに来てから正直依頼のこと忘れてました! やっべこれ怒られる! あははは!」

「…お前、相当のアホだな」

「よく言われるっス! よっしゃあ! 俺、このままアイスさんに着いていきまっす! 依頼主には怒られちゃいますけど!」

「…俺の知ったことではないが、奴等は腐るほどお前みたいな奴を雇ってる……もともと数撃てば当たるだろうっていう考えの連中だ」

「じゃあ一人二人消えても問題無いってことっすか!?」

「…まぁそれ以上に俺に付きまとう途中でおっ死ぬ連中が多いがな」

「……じゃ、じゃあやっぱさっきのはガチで殺りに来てたんスね……殺気だけに」

「…この環境についてこれなかった奴が多いだけだ」

「ってことは手を出したのは俺だけってことじゃないスか!! しかも突っ込みなしとか!!」

「…悪いがお前とはここまでだ」

「へ? いきなりどうしたんスか?」

「…これをやるから帰れ」

「これモドリ玉じゃないスか! ってもう煙出始めてるし!」

「…最後に一つだけ教えてやる。どこで知ったか知らないが、俺の名前は『Is(イズ)』だ」

「そうだったんスか!? てっきりアイスって読むもんだと……」

「…読み間違えるな」

「いやホントは俺あなたのこ…… 」

緑色の煙が立ち上ぼり、同時に男の姿も消え失せた。

「…行ったか」

「…ならこれを引き抜くとするか……」

そう言って足元にある一本の柄に手をかける。
かつて浮岳龍ヤマツカミを葬った片手剣『氷牙』。
奴を帰らせたのはこれを見られるわけにはいかなかったからだ。


「…またこれを使うような敵が出るってことか……まぁ姉さんの呼び出しなら仕方ないが」

「――ほほぅ! イズの兄貴はあの古龍ハンターの弟さんだった訳ッスね!」

「…っ!?」

頭上を見上げると、そこには一抱え程の大きさの昆虫に捕まって飛んでいるショウコウの姿があった。

「ニンポー身軽の術! なんてのは嘘で崖上から相棒に頑張ってもらって滑空しただけ……ボハァ!?」

重かったのだろう、昆虫に腕を離されてショウコウは雪に上半身を埋める形でめり込んでしまった。

「…………」

呆れて言葉も出ないが、
ベースキャンプからここまで再びやって来たこと徒労を認めて引き上げてやる。
するとショウコウは調子に乗った様子で騒ぎ始めた。

「助けてくれたってことはあれッスね? 噂のツンデレってやつだ! えっ? 違う? そんなぁ!」





「…その昆虫は何だ?」

見たことのない虫だ。
気になって訪ねてみると、ショウコウは「あ、コイツッスか?」と言ってから杖を引き抜いた。

「コイツはこの『操虫棍』で操ってる相棒っス!」

「…操虫棍……?」

「知らないッスか? イズの兄貴にも知らないことがあるんスね!」

杖だと思っていた先端には刃が取り付けられており、確かに奇妙な形をした武器であることが窺えた。

「さぁ! どこまでも着いていくッスよ!」

「…もう勝手にしろ」

騒がしいバカだが、慣れたのか不思議と悪い気はしない。

長い付き合いになりそうな予感がした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


パーティーを組んで数分後。


「…あぁ、ところで俺はこれからとある難関クエストに向かうが、お前のHRはいくつだ?」


「え? 1っスけど?」

「…………」

「い、いや、俺まだ登録したばっかりで……」

「…ランクを上げてから出直してこい」

「そんなぁ!?」

「……………」


パーティーは早速一時解散した。



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楽太郎

Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
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