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ガイドポストは龍の調べ ~Last Guidance,~ 第一話

2013/02/06

「――私、すぐにドンドルマに帰らなきゃならないの」




早朝、皆が朝食を取りにギルドに集まった時のこと。

大きな円卓を囲むように座り、それぞれが注文したメニューに舌鼓みを打っている最中だったが、シャワの唐突な一言に皆はギョッとして顔を上げた。

「……あとバルスも一緒に。しばらくは狩りも出来そうにないわね」

「そんなっ!?」

突然の告白に私―アクア―は、噛み切ろうと格闘していた『頑固パンとレッドチーズ、砲丸レタスの激辛サンドイッチ』を思わず取り落とすところだった。

「霊山での件についてまだ落ち着いて話も出来てないのに……もう少しだけ何とかなりませんか?」

アマツマガツチの一件の後、ハンマーの捜索やダイガスの来訪、ギルドへの報告など慌ただしい日々が続き、今朝やっとまともな朝食を取れたところなのだ。
彼女もそれは分かっているようで、おもむろに立ち上がると私たちに深々と頭を下げた。

「ごめんなさい。それは分かってるのだけれど……一刻も早く戻って指揮を取らないと駄目なの。…………守る人間がいないとあの家はまた……」

最後の方は小声でよく聞き取れなかったが、テーブルを向いた彼女の顔には焦りの色が浮かんでいた。

昨日、父親に向かってあれだけの啖呵を切ったばかりなのだ……今、この少女が背負っている責任には計り知れないものがあるのだろう。

「そういった事情なら仕方ないですね……。二年後への対策の、方向性だけでも話し合っておきたかったんですが……」

「ん! ……っあー、それなんだけど、ちょっといいかな?」

「何ですか? ハンマーさん」

先程までワイルドベーコンをその名の通りにがっついていたはずの彼女が、タイミングを見つけたと言わんばかりに真面目な顔をして立ち上がった。
――が、塩ミルクを急いで流し込んだのが原因だろう、口元には真っ白なひげが見事に生え揃っている。


「確かに二年後に何が起こるかは分からないけどさ、まだ時間は十分にあるんだ。だから今ここでどうこう考えるよりも、いっそもう今まで通りに行動したほうがいいんじゃないかな?」


「そ、それは話し合いなんかしないでもう解散しよう……ということですか?」

あまりに突拍子もない発言に思わず愕然としてしまったが、ハンマーは「そう!」と更に続けた。

「そんで二年後にまた『ここ』に戻ってくるのさ」

「ユクモに……?」

「私らがここで悩んで分かるような問題ならさ、それこそ悩む必要なんか無いと思うんだよね。二年間も気なんか張ってられないし、皆が各自で行動してれば気付くことも出てくるはずだしってことでこれが一番いいと思うんだけどどうかな? フレア達だって、何時までもここにはいられないでしょう?」

「……」

彼女の言葉にはしっかりとした説得力があった。その言葉に勇気付けられ、肩が軽くなった気もした。
まだ遠い未来に悩んで、足踏みしてしまうのは確かにもったいない。


しかし言葉では表せない、何か妙な違和感を覚えたのも確かだった。

しかし他の人たちは微塵もそんなことは思わなかったようで、賛成の声が次々と上がり始めた。


「そうなると俺らの情報収集はギルドの仕事をしつつになるか。だけど俺も忙しい身だからなぁ……なんか分かったら教えてくれると助かるわ」

頭を掻きながら、少し眠たげな声でそう言ったのはフレアさんだ。
先程までお皿に乗っていた七味ソーセージは綺麗に無くなっていたが、嫌いなのか付け合わせのミックスビーンズだけは隅によせられている。

「またフレアはそうやって楽しようとするんだから。休暇目的だった私たちが言っても信用ないっしょ!」

真面目な話をしているフレアさんに嬉々として茶々を入れるのはチョモさん。
真っ赤なシモフリトマトを指先で回して器用に弄んでいるのが何故かよく似合う。

「うっせ! チョモよりは仕事してるわ!」

「豆を残してるお子様には言われたくありませーん」

「このやろ……っ!」

「あのっ……二人とも……」

これではまた話が脱線してしまう……。

そんなことを危惧していたら、ハンマーさんが「まぁまぁ」と仲裁に入ってくれた。

「夫婦喧嘩は後にしてもらいたいもんだ。ねぇ、アクア?」

「な、なんで私に振るんですか!?」

そんなやり取りで場はすぐに収まってしまうのだ。
本人には言わないが(ていうか絶対言いたくない)、やっぱりこの人はリーダーに向いてると思う。

「……でもフレアの言う通り、確かに情報交換くらいはしておきたいね。何か分かったらギルドを通して連絡すること! これ絶対ね!」

「シャワちゃんも二年後には来てくれるかな?」

その問い掛けに少女は力強く頷いて見せる。

「ええ、必ず間に合わせるわ。ね、バルス?」

「………」

「……ちょっと? ねぇ聞いてる?」


返事がない。ただの屍のようだ。

「……バルスー?」

シャワは彼の顔の前で手を振ってみたり、肩を揺さぶったりしていたが、しばらくして困惑顔でこちらを向いた。

「………何故か座ったまま気絶してるわ」

道理で大人しいはずである。

「何でそんなことに……?」

「ったく、どうしたってんだ…っておい、これもしかして……!」

フレアは固まっている彼の手元の料理を見て表情を青くさせた。

「このオッタマケーキ……材料、間違ってるぞ……」

確かにバルスが手をつけたであろうオッタマケーキには、普通とは『ちょっと』違う着色がなされていた。
明らかに人が食べてはいけない色をしている。

「昔でチョモに喰わされたことあるやつだ……何というか……意識の遠退く味がするんだよ」

見るのも嫌なのかテーブルから顔を背けた彼の横で、チョモさんは「懐かしいなぁ……」と何故か誇らしげに腕組みをして頷いていた。

「店ではまず出さねぇ……作ったのは誰だ?」

「……私」

恐る恐るといった様子で手を上げたのは金髪ロングの少女。

シャワちゃんだった。

「シャワちゃん! 私だって最近はちゃんと出来るようになったんだから! 練習すれば大丈夫だよ!」

「私……チョモさんより下手なの?」

若干泣き顔になって動揺するシャワ。
いやそれは流石に失礼じゃ……。

「いや、チョモ……お前今も大差ねぇから」

「嘘ぉ!?」

「嘘な訳あるか! この前だってなぁ――――!」

なかったようである。



――その後も朝の食事会は盛大盛り上がりを見せ、笑い声はがギルドを抜けて村中に響き渡った。


皆が別れを惜しみながら、それぞれの道を踏み出したのはそれから少し後の事。

そして驚いたことに、この食事会から二年の間、皆が一同に揃うことは一度もなかったのだ。

当時はそれを寂しく思ったりもしたけれど、
皆、何となく二年後の再開を大事にしたかったのだろうと、今になっては思う。

解散した後、私とハンマーさんは一緒に各地を回りながら情報を集め、積極的にクエストをこなす日々を過ごした。
その中でも私は戦法や技術を身に付けることに専念し、ハンマーさんは情報収集や他のハンターさんへの根回しをしてくれた。

でもそんな話はここでは割愛して、そろそろ次の話に移りたいと思います。



長いと思っていた二年も毎日を必死に過ごしていると案外短くて、
気付けばユクモに集まる日は間近に近づいていました―――。






私はこの出来事を決して忘れることはないでしょう。

深く、深く胸に刻み込むべき、この導かれし物語を――――

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Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
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