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ガイドポストは龍の調べ ~Last Guidance,~ 第二話

2013/02/17

「んん~、朝風呂って最高!」

「……ここ一週間ずっとそれ言ってませんか?」

早朝、ユクモ村の大浴場には2つの声が響いていた。

「朝の日光を浴びて煌めく湯煙、瞬く水面、輝く私。この良さは最近の若者には分からないか……」

「やれやれ」とわざとらしく溜め息をついたのは、薄桃色の髪を肩下まで垂らした女性。
通称はハンマーさん。
本名はマリディア。

しかし彼女は本名で呼ばれるのを酷く嫌がる。

「失礼な! ここは私の故郷ですよ? 温泉の良さは誰よりも分かってるつもりです。煌めく湯煙、瞬く水面、もっと輝く私! 素晴らしいじゃないですか!」

飛沫を飛ばしながら立ち上がり、憤然と言い放ったのは他でもない、私ことアクアです。

ユクモを離れてから二年が経った……と言っても容姿が劇的に変わったなんてことは無く、二人とも髪が少し伸びたくらい。
やれ『何年後……』などと書くと急成長を遂げた主人公達が颯爽と現れたりします。
しかしそんな話は物語の中だけ、現実はこんな程度です。

「さてと、何時もならもう上がってるとこだけど……今日はもう少しのんびりしようか。温泉にゆっくり浸かってられるのも、これが最後かもしれないしね」

「……そうですね」

そう、今日は皆と交わした約束の日。
待ちきれなくて一週間前からユクモに来ていた私たちは、もはや恒例となっていた最後の温泉を満喫している最中なのでした。

「アクア、緊張してるでしょ?」

「……ちょっぴり、です」

「いいよ、私だって不安だ……でもやるべきことは全部やってきた。そこだけは自信に思おう」

鹿威しが小気味良い音を立てる中、ハンマーさんは今までのことを思い返すように目を瞑った。


「……ですね」

そうは言ったものの、日増しに強くへばりついたこの感情は、最後の時まで拭えはしないだろう。

『彼女』が世界を破滅に導くと言ったのは今日この日。
もう何時何が起きるか解らない……そんな瞬間を過ごしてるかと思うと胸は締め付けられるように苦しくなり、温泉で暖まってるはずの体には震えが走る。

……でも心には諦めの言葉なんかは微塵も入り込んでいない。
何が起きても動じない覚悟は、この二年間でしっかりと培ってきたから。

だからここで言えるのは一つだけ。

「絶対に負けるわけにいかないですもんね!」

「……その意気よ、頑張りなさい」

「きゃ――――!?」

私の背後、無人な場所からの声に二年間の努力は早速無に還された。

「お、アンさんじゃん。もう来てたんだ」

湯煙の中から現れたのは、ライトグリーンの長髪と鼻から下を覆ったタオル (後から聞いたら温泉仕様とのこと) が特徴的な女性だった。

「……思いの外、早めに来れてね」

「なるー。あ、この前はありがとね! 大丈夫だったでしょ?」

「……ええ。問題無いわ」

「ん、じゃあ手筈通りに?」

「……えぇ、もう外に」

「ちょ、ちょっと! 置いてきぼりにしないでくださいよ」

「あぁ、ごめんごめん。ほら、この前紹介するって言ってた『その道のプロ』だよ」

「あぁ! 『あの』!?」

この一週間で何度も耳にしていた言葉だ。

「じゃ、じゃあ『伝説のハンター』なんですね?」

「……そんな大袈裟なものじゃないわ。私はアン、話は聞いてるわ……よろしくねアクア」

「はい、こちらこそ……」

そう言ってからハッとする。

「このタイミングでここに来たってことはもしかして……」

「そ、アンさんも今回の件に協力してくれるんだ」

「……利害の一致ってやつね」

水面に自分の髪を浮かべて遊びながら彼女は答える。

「あ、あのアンさん!」

「……何かしら?」

ハンマーさんから聞いた彼女の逸話をどうしても聞いておきたかったのだ。

「ボウガンをその場で組み替えて狩りが出来るってのは本当なんですか?」

「……えぇ、そうよ」

「わ、凄い! じゃ、じゃあ狩りでは新鮮な弾を使うために毎回ジャギィとかを解体(バラ)してカラ骨を補充してるってのも本当なんですね?」

「…………え?」

「アクア! ……ちょっと!」

何故かハンマーさんが焦った声で何かを言っていたが、ちょっと興奮して耳に入んないです。

「あと、イビルジョーがアンさんを見ただけで服従のポーズを取ったり、竜の卵の納品クエストの時にはリオレイアが自ら卵を差し出したとか!」

「……………」

「わーわーわー!! アクア――!!」

「そのマスクの下には伝説級のモンスターが封印されてて、それを外すと世界が滅びるんですよね……凄すぎます」



「……マリディア?」

「ちょっ! 何でその名前……」

ハンマーさんはそれ以上言葉を発することは出来なかった。

「……私の情報網を甘く見ないことね。……それよりも、あの子にあることないこと吹き込んだのは……貴女よね?」

「い……いやぁ、ソノデスネ……じょ、冗談っていうか……」

私は目を疑った。
青ざめているハンマーさんの顔から数センチ横、背もたれにしていた岩には先程まで無かった大きな窪み(くぼみ)が出来上がっていたのだ。


(あながち、さっきのも嘘じゃないのかもしれない……)


「……次はこの『水鉄砲』、当てるわよ?」


「すみませんでしたぁ!!」


「……以後慎むように」


そして私は水中土下座というものを初めて見たのでした。




      



「アクアー。私もう嘘も冗談も言わない真っ当な人間になるよぉ……」

「はい。無理でしょうがそれがいいと思います」

などと軽口を交わしながら私たちは温泉を上がり集会所に向かっていた。

先に上がった(途中でいつの間にか消えていたので多分そうだ)アンさんの話だと、他にも助っ人をギルドに呼んでいるそうなのだ。

「一体どんな人なんですかね?」

「アクアもすぐに分かると思うよ」

「え? それってどういう……」

「あ、船酔いのアクア姉ちゃんじゃん! ハンマーの姉ちゃんも!」

私が言い終わる前に一際明るい声が響く。
声の主は癖っ毛の銀髪に尖った耳をした見覚えのある少年だった。

「ヨルヴァ君!? 何でここに?」

「アンさんに呼ばれたんだよ。ほら、皆も一緒だぜ?」

「アクアさん、ハンマーさん! 先日は……」

「おぅ、二人とも! あの時は世話になったな!」

モモさんの挨拶を食い気味に、吠えるような声を出したのはハルクさん。

「ハルク殿! 台無しではないか!」

「そうだよ! おっちゃん声でかいんだから」

「おぉ! すまんすまん!」

「……皆さん相変わらずのようで何よりです」

でもこの三人がいるだけで雰囲気がグッと暖かくなるのだから不思議だ。

「それじゃ皆さんがアンさんの言っていた助っ人なんですね?」

「うん、話はアンさんから聞いてるよ。任せて、どんな奴が出たってオイラ達がいれば百人力さ!」

「皆さんには返しきれないほどの恩義があるからな。精一杯助太刀させてもらいます」

「なに、久々に腕が鳴るってもんよ! なぁヨルヴァよ?」

「そうそう! オイラ達の新コンビネーションを見せてやるぜ! ね、モモ姉?」

「うん、任せてくれ!」


何があったかは分からないが、三人の絆が一週間前よりも深まっているように見えた。
きっとこれがアンさんの手腕の成せる技なのだろう。

「で、アクアの姉ちゃん! これから一体何が起こるんだ?」

「えぇっと……それがね、まだ分からないの」

やる気に満ちた少年には悪いが、今はまだそうとしか答えられなかった。
外の景色は至って平穏そのもの……もっとも、まだメンバーが集まっていない内に何か起きても困るのだけれど。




「……誰か来たわね」

それからしばらく、待機という名目で雑談を繰り広げていた六人だったが、不意にアンさんがドアの方に目を向けたのをきっかけに静まり返った。

確かに遠くから尋常ではない足音が聞こえていた。
まるで遠方から休まずに竜車を飛ばして来て、こちらへ急いで駆けてくるような足音。
それは迷うこと無くギルドの入り口まで辿り着き、ドアを勢い良く開け放った。


「おい! 全員揃ってるか!? 緊急事態だ!」

「フレアさん! チョモさん!」

肩で息をしながら飛び込んできたのは、赤髪と白髪の長髪を揺らした男女。
ギルドナイトの二人だった。

「のんびりしてる場合じゃねぇ! やられた!『こっち』じゃなかったんだ!」

「数時間前に私たちが待機してた港町に連絡が入ったの……正体不明の巨龍が二体、シュレイド城とラティオ火山の奥地に突然現れたって」

「それがもしかしてあの時の……!?」

「間違いねぇ。今、俺たちの騎士団がシュレイド城の方へ回ってるが圧倒的にG級ハンターが足りないんだ」

「なら早く加勢にいかないと!」

「でもシュレイド城や火山って向こうの大陸だろ? 今から行って間に合うのか……?」

「心配無いよ、二人とも。もう手は打ってある」

ハンマーさんが私たちをなだめるようにニヤリと笑った。
……まるでこのことを予知していたかのように。

「……一ついいかしら?」

「どうしたんですか? アンさん」

今まで黙って話を聞いていた彼女の口から出た言葉は、更に事態を重くさせるものだった。

「……その報告が真実なら、出現する龍は二体じゃないわ。三体よ」

「そんなバカなっ! その辺のモンスターじゃ比べ物にならない大きさだぞ? もう一匹いたら気付かないわけがない!」

「……場所が『古塔』で、まだ『出現』してないなら?」

「なっ……!?」

フレアを見据えた、アンさんの目が怪しく光る。

「……『ミラボレアス』。霊山の頂で赤衣の女がそう言ったのよね?」

「あぁ……確かにそうだ」

「……ミラボレアスという名はそのまま運命の戦いを意味するの。この名が初出するのは、古シュレイド王国の創設者が裏切りのうちに命を落としたとき、いずこかより現れた赤衣の詩人の詠じたという唄の中においてよ」

そしてアンさんは淡々と古い言葉を紡ぎだした。

『数多の飛竜を駆逐せし時、伝説はよみがえらん。 数多の肉を裂き、骨を砕き、地を啜った時、彼の者はあらわれん。土を焼く者、、鉄を溶かす者、水を煮立たす者、風を起こす者、木を薙ぐ者、炎を生み出す者……その者の名は「ミラボレアス」。その者の名は、宿命の戦い。その者の名は、避けられぬ死。喉あらば叫べ……耳あらば聞け…………心あらば祈れ。ミラボレアス……天と地とを覆い尽くす彼の者の名を。天と地とを覆い尽くす、彼の者の名を。彼の者の名を』

「その言葉……あの時の……」

アンさんの言葉は、あの時赤衣の女でありハンマーの姉である『マリアン』が唄ったものと同じものであった。

「……私は昔からミラボレアスについて調べて回っていたの。古い文献によればミラボレアスは全部で三体。『黒龍』『紅龍』『白龍』が存在しているわ」

「白龍……」

『白龍』。
その言葉が何故か心に突き刺さった。

「白龍は……塔にいるんですね?」

アンさんは私の言葉に驚いたように目を見張ったが、やがて納得するように頷いた。

「…………そうよ」

「なら私は塔に行きたいです! 行かなきゃならない気がするんです!」

「アクア、焦る気持ちは分かるけど少し落ち着いて。今から三ヵ所に全員を割り振るから……」

「ハンマーの姉ちゃん、そんなの後にして早く港に向かおうぜ? 船しか行く方法ねーんだからさぁ」

「ふふん、ヨルヴァ。手は打ってあるって言ったでしょ? もうじき着く頃なんだけどな」

「着くって何が……?」

ヨルヴァが小難しそうに首を捻っていると、外から村中に響くような大音声が響いたのだ。

『皆いるー? 遅れたわね!』

「な、なんだ!?」

驚いて皆が外に出ると、村の上空には巨大な船が浮かんでいた。

『ドンドルマ発、ユクモ行き! 気球船「シエラ号」、只今到着よ!』

鳴き袋を加工して作られた「拡声器」で上空から声を響かせる金髪の少女。
イーゼンブルグ家当主、シャルワナ=イーゼンブルグ……シャワの堂々たる登場であった。
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Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
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