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ガイドポストは龍の調べ ~Last Guidance,~ 第四話

2013/04/01

「すっげぇぇぇ! 気球船ってこんなに高く上がるんだな!」

ユクモの村人全員からの送迎を受けて、気球船『シエラ号』が空高く飛び立ったのはつい数分前のことです。


「ヨルヴァ、あまり下を覗き込んだらダメだぞ。も、もし落ちたりしたらどうするのだ!」

「そうだぞ小僧。うぅむ……しかし、この歳でこんなものに乗ることになるとはな……いや、べ、別に怖くなどないがな!」

甲板ではヨルヴァ君達が三人で騒いでいる。何を話しているのかは分からないけど、遠くから眺める分には結構楽しそう。

「でも本当に凄いなぁ……」

荷物を部屋に置きながら、思わず呟いた。
凄いと言ったのはもちろん気球船の広さのこと。
どれ程かというと、ウラガンキンが大体5匹分。

……いや、全員が武器やアイテムを積み込んでも十分にくつろげるスペースがある、と言った方が分かりやすいでしょうか?
こんな代物、貴族でも手に入れるのは容易ではないはずだけど……。

「ふぅ……これで全部かな?」

それはともかく、持ち込んだ荷物は戦いに備えた物のため、量は相当。
そのため私も含めて、他の皆もまだ荷物を整理している途中なのです。
ちなみにヨルヴァ君達はまだ荷物すら置けていません。
さっきは楽しそうなんて言いましたけど、恐らくは搭乗した直後から甲板に張り付きっぱなしのヨルヴァ君をモモさんが引き戻そうとしているだけなのでしょう。
……ハルクさんが目をギュッと閉じ、心無しか内股気味になっているのは少し気になりますが。

「アクアー! もう荷物は置き終わった?」

後ろからの声に振り向くと、大荷物の間からハンマーさんがピョコリと頭を出していた。
大きな眼をキラキラとさせて、いつもよりテンション高めだ。

「はい丁度。ハンマーさんも終わったみたいですね」

「もちろん! さ、私たちも甲板に出ようよ。今ならなんとシャワのガイド付き!」

荷物の裏からこちらに回り込みながらそんなことを言うハンマーさん。
肝心のシャワちゃんがいないだろうと思いきや、彼女はしっかりとハンマーさんの横に捕まっていた。
……どうやら荷物の裏からでは身長差で見えていなかっただけのようだ。

「また勝手に……ていうか、どうせまだ海しか見えないわよ」

そんな私の視線に気付いたのか、ハンマーさんの言動にほとほと呆れたのか、シャワちゃんは少しムスッとした表情を浮かべている。

「それに、悪いけど私はちょっと用があるの」

ムスッとした様子とは裏腹に、「用がある」と言った彼女の言葉には若干の申し訳なさが混じっている。
どうやら本当に用事があるようだ。

「用って?」

すかさず問いただすハンマーさんに、同意するように私もと「うんうん」と頷く。

「別に隠すようなことじゃないんだけどね。実は皆に言わなくちゃいけないことがあって……その準備をしないといけないの」

「そうなんですか。私でよければお手伝いしますよ?」

「気持ちは嬉しいんだけど、こればかりは私じゃないと……」

その時、大部屋の奥にある扉(『関係者以外立ち入り禁止』と書かれている)が唐突に開いた。

扉の中から現れたのは、金髪ショートの小柄な女の子。
彼女は部屋に入った瞬間、ハッと驚いたように目を見開き、甲高い悲鳴を響かせたのだ。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!? ひ、人が一杯いますぅ!」

そしてその女の子は直ぐ様シャワちゃんの方へ駆け寄り、抱きついた。

「お姉さまぁぁぁ!!」

「フィリア!? まだ向こうにいなさいと言ってたじゃない!」

「お姉……さま?」

フィリアと呼ばれた少女は、近くで見るとシャワちゃんにとてもよく似ていた。
シャワちゃんの長髪をショートに揃え、いつもの強気なつり目を優しそうな垂れ目にし、身長を少し低くすればそれだけで目の前の少女になるのだ。

「だ、だっていつまでも一人で……不安になってしまったんですもの……」

そんな彼女は大きな瞳を今にも泣きそうに潤ませて、抱きついたまま離れようとしない。

んー、しかしあれだ。
おどおどとした表情で弱気な瞳を浮かべるシャワちゃんそっくりな彼女を見ると……。

「『どうにも少し楽しい想像をしちゃうなー』……なんて考えてそうな顔してるけど大丈夫かしら? アクアさん」

「と、とんでもない! や、やだなぁシャワちゃんったらもう!」

とんでもない所か的中である。

「アクアはすぐ顔に出るからねぇ……でもその気持ちは凄く分かるっ!」

「ハンマーさんはちょっと黙っててくださいよ! 話がややこしくなるじゃないですか!」

「ふふ……今日はやけに誉められる――」

「誉めてませんっ!」

「――なになに? 何の騒ぎって……あらら、どうしたのこの子?」

騒ぎを聞き付けてチョモさんがフレアさんとバルスさんを連れて(引っ張って)やって来た。

「バルス……お前ついに顔だけじゃなく誘拐までやっちまったのか……」

「いやいや、僕さっきまで君たちと話してたじゃないか。もし疑うとしたら明らかにシャワで……ごめんなさい冗談ですそんな目で見ないで!!」

「もう……しょうがないわね」

「これ以上騒ぎにも出来ないし」、そうため息がちに言うとシャワちゃんは、後ろに隠れていた少女をくるりと手前に押し出した。

「お、お姉さま!?」

「少し早いけれど紹介するわね。この子はフィリア。私の妹で、ついこの前まで修道院にいてやっと実家に帰ってきたばかりなの」

「み、皆さん初めまして。フィ、フィリアです……。 こ、今回はその、どうしても気球船に乗ってみたくて……す、すみません!」

彼女はペコリと頭を下げると、またすぐにシャワちゃんの後ろに隠れてしまった。

「この子は結構人見知りなとこがあって……。それに、ずっと修道院にいたから男の人とかほとんど見たこと無くてね、ちょっと緊張してるのよ。だからあまり刺激しないであげて。特に男性陣!」

「シスターさんって訳か……ちょっと感慨深いな。しかし……はぁ……初めて会った男がフレアとバルスって………。フィリアちゃん……もっとましな男は沢山いるからさ、誤解しないであげてね?」

「は、はいっ……」

「チョモ、お前な……」

「フレア……実は彼女、初めて僕に会った瞬間気絶したんだよね」

「お前……くっ……心中察するぜ……」

なにやらフレアさんとバルスさんが肩を組んでいるが、そんなことを気にしている場合ではなかった。
もし、私が昔聞いたシャワちゃんの話が本当だったなら……。

「妹さん――フィリアちゃん――が修道院から出たっていうことは、シャワちゃん……」

「ええ」

シャワちゃんは私に小さく頷いて見せると、それ以上は何も語らなかった。
きっとフィリアちゃんには何も伝えていないのだろう。

「おめでとうございます」

「ふふっ。ありがと!」

その満足そうな笑顔が、彼女の今までの頑張りを体現しているように思えた。

「さてと、紹介も終えたしフィリアはまた部屋で休んでいてもいいわよ?」

「はい、お姉さま。あ、あの……皆さん、お騒がせしました……」

「またねー、フィリアちゃん。後で話を聞きに行ってもいいかな?」

「は、はい。私なんかの話で良ければ是非……」

「ちょっとハンマーさん。あんまり意地悪したらダメよ?」

「分かってるよー。しっかしシャワも立派なお姉さんになったねぇ」

「何でニヤニヤしてるのよ!」



そんな楽しい会話をしていたのも、気球船が航路の半分を飛ぶまでだった。


「大変だ! 姉ちゃん達! 早く甲板に出てくれ!」

「どうしたの!?」

ヨルヴァ君の尋常じゃない様子に急いで甲板に出た私たちの前には、想像を絶する光景が広がっていた。


「ハンマーさん……あれって……」

「……うん。大陸のあちこちに火と煙……」

大陸のあちこちから上がる黒い煙。それが最初に私たちを出迎えた光景だった。

「……あれはモンスターによるものだけではないと思うよ。僕たちが気球船で飛び立つ前にも、巨龍騒ぎに乗じた騒動が結構起こってたんだ」

後から来たバルスさんが冷静に、拳を強く握りながら言った。

「ということは、人が……?」

「ええ……苦々しい話だけれど。ドンドルマはギルドが混乱を抑え込んでるからまだ何とかなっているけど、それもいつまで持つか分からないわ……」

シャワちゃんも、顔を強張らせている。

「そんな……」

「こりゃ早く原因を何とかしないとね……」

ハンマーさんもいつになく真剣な表情で。

皆が皆、焦る心を必死で抑えていた。

「……まずは一度ドンドルマへ。話はそれからよ」

「師匠!? ……分かりました。バルス! 操縦室に戻るわよ! いつまでもチョモさん達に任せるわけにはいかないわ」

「了解!」

そう言って走り出す二人の傍らで、ヨルヴァ君はギリリと歯を噛み締めていた。

「アクアの姉ちゃん……オイラ、ちょっと不安だぜ。こんなことになった原因の巨龍を許せねぇ! って気持ちと、そんな巨龍をオイラ達だけで何とか出来るのか? っていう気持ちがグルグルして……狩りの時のワクワク感が全然沸いてこねぇんだ」

気持ちは痛い程分かる。

「ヨルヴァ君……私も同じだよ」

「アクアの姉ちゃんも?」

「うん。でも、ここで持たなきゃならないのはそのどっちの気持ちでもないの」

「どっちの気持ちでもない……? じゃあ一体なんなんだ?」


それは私が今までかかってやっと見つけた答え。
もっとも、まだ答えを出した『つもり』であって確証はないのだけど。



「それは繋がりの持つ力を信じること。私たちが持たなきゃならないのは人間としての、ハンターとしての絆の強さを信じて戦うこと。そしてそれを築き上げたことを誇りに思う気持ち……それを忘れないことだと思うの」

「うーん……? なんか難しいなぁ」

「……私もまだ、まとめれてないみたい。でも、私がハンマーさんと出会ったように、ヨルヴァ君がモモさんとハルクさんと築いた絆は素晴らしいものでしょ?」

「それはオイラもそう思うけどさ……」

今一、ピンときてない様子のヨルヴァ君。

「なら、それを無駄なことなんかには出来ないよね?」

「当ったり前だい!! モモ姉は……あとハルクのおっちゃんも、オイラの大事な仲間だからな! 無駄なことなんか一つもありゃしないぜ!」

「おい小僧今何で……むぐっ!?」

(ハルク! 今は黙ってないと駄目だ!)

「……きっとその気持ちが一番の力をくれるはずだよ」

「そっか……何となくアクアの姉ちゃんの言いたいことが分かった気がしたぜ。ありがとな! もう大丈夫。そうと決まれば、おっちゃん! 空飛んで足がなまったらいけないから、アップしとこうぜアップ!」

「こ、ここでやるのか!? 小僧よせっ、やるなら中で……揺らすんじゃないっ!」

「二人とも! こ、ここで暴れるのは本当にやめてくれっ!」







遠ざかる三人の声を聞きながら、まだ遠い大陸を見つめていると、いつの間にかハンマーさんが横に並んでいた。

「――アクアさ、半分位自分に言い聞かせてたでしょ?」

「……えへへ、バレました?」

「何年一緒にいると思ってんの?」

「何十年も一緒みたいに言わないでくださいよ。まだ三年です」

「三年か……」

「ええ、今までで一番長い三年でしたけどね」

「まだ始まったばかりじゃん。これからでしょ、アクア」

「……そうですね。 生き残るためにも私たちの絆の力、ぶつけてやりましょうか!」




「……なかなかに臭い台詞ね」

「アンさん!? いつの間に後ろに……さっき中に入ってませんでした?」

「……瞬間移動はプロハンターの嗜みよ」

「……それは……嘘ですよね?」

「……ええ」

「……」

「……」

突っ込みづらい!
咄嗟にハンマーさんに助け船を求めて横を向いたが、すでに居なくなっていた。
まさかあの人も嗜んでいたのか……。



私とアンさんの二人しかいなくなった甲板。
そこに特に意味を感じなかった私だったが、そこでアンさんがポツリと発した言葉に私は耳を疑うことになる。








「……貴女の両親から遺言を預かっているわ」

「……え?」

甲板に流れた風が、私たちの間を強く吹き抜けていった。
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楽太郎

Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
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