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ガイドポストは龍の調べ ~Last Guidance,~ 第五話

2013/04/04

『……貴女の両親から遺言を預かっているわ』


「…………え?」

ドクン、と心臓が跳ね上がる。
突然の話に頭がついていかない。

「……正確には手紙だけれどね。受け取るか受け取らないかは貴女の自由よ」


「み、見せて下さいっ!!」


考える前にそう答えていた。
何故アンさんが?
とか
何故今になって?
などという質問は端っから頭に浮かばなかった。

私は『両親の手紙』という言葉に、自分でも驚くほどに反応していたのだ。

そんな私を見て、アンさんはゆっくりとした動作で頷いた。

「……そうよね。なら、まずは貴女に今まで黙っていた理由から話さなければならないわ」

「理由……」

静かに話すアンさんの言葉に、私は徐々に落ち着きを取り戻すことが出来た。

アンさんは私の気持ちを汲んで、分かりやすく順序立てて話してくれているのだ。

「……私は貴女の両親とは昔からの付き合いでね。自分達に何かあった時のために、貴女宛の手紙とそれを渡す為の条件を聞いていたの」

「条件……ですか?」

「……ええ。まず一つは20歳の誕生日を迎えること」

それならもう満たしている。なら後の二つに理由があるはずだ。

「……二つ目に仇討ち以外の理由でハンターをやっていること。三つ目に私が認める程の人間になっていること……この三つよ」

「ちょ……ちょっと待って下さい!」

私には、どうしても聞き逃せないものがあった。

「……何かしら?」

「私がアンさんみたいな方に認められてるって言うのも夢みたいな話ですが、その前に私がハンターになった理由は……仇討ちなんです。両親の手紙を受け取る条件は……満たしてないんです……」

『……なら、駄目ね』

そんなアンさんの言葉を覚悟して、私はギュッと目を閉じて俯いた。
流石のアンさんでも知らなかったのだろう。
まさか本当にそんな理由でハンターになってしまってたなんて……。


「……勿論知っているわ」

「……え?」

私はまたも耳を疑った。

「な、ならどうし――」

「……貴女は今そんな理由でここにいるのかしら?」

静かな声が私の言葉を遮る。

「い、いえ……今は違います。でも初めの理由は――」


「……初めの理由なんか関係無いの、問題は『今』、『どうあるか』でしょう? そんなこと、何時までも背負うようなものじゃないわ」

再び私の言葉を遮った静かな声。
その声には不思議な説得力があり、私の反論は喉から先へ向かう前に泡のように消えてしまった。

「……受け取ってくれるわね?」

「…………はい」

上手く言いくるめられてしまった。
私が諦めたように頷くと、アンさんはその言葉を待っていたかのように眼で微笑み、少し待つように言い残して部屋の中へと入っていった。

とたん、風の音以外何も聞こえなくなる。

「………お父さんとお母さんからの……」

嬉しいような、悲しいような。
昔ちゃんと克服したはずなのにそんな気持ちが溢れてくる。
今でも時々、両親の死を受け入れようとしない自分が出てくるのだ。家に……今はもう誰も住んでいない家に、当たり前のように待っていてくれているのではないかと、そんな想像をしてしまう私が。

そうだ。
私は思う。
いつか割り切ろうとそう考えていたけど、ずるずると引きずっている私への絶好の機会じゃないか。

そう考えて潤みかけた瞳を擦っていると、後ろから唐突に「待たせたわね」と声をかけられた。

「……いえ、そんなことな――」

流石にもう慣れましたよ、と内心ドキドキの自分を隠すように振り向いた私だったが、そんな付け焼き刃は速攻で叩き折られた。

「な、何ですか! その大きな袋は!?」

アンさんの脇に置かれていたのは、彼女の腰程までに膨れ上がった大袋だった。地味に防水仕様のやつ。

「……貴女の両親は大層な心配性でね。『もし娘がハンターにならなかったら』とか『もし何処の馬の骨とも分からない奴と交際していたら』とか……数百通りのパターンの手紙を用意していたのよ」

ため息混じりにアンさんが言った。

「へ……?」

思わず変な声が漏れる。

アンさんのため息は後でシャワちゃんに話したところ『五年に一度つくかつかないかの激レア』だったらしいけれど、今はそれよりも私の両親へのイメージが大分崩れたのが問題だと思う。

あれ……?
もっと真面目な人たちだった気が……。


「……真面目だから故の親バカなのよ」

「な、なるほど」

もはや心の声を読まれてることに違和感を覚えなくなってしまった。

「……とりあえず、アクア。これが今の貴女に一番ふさわしい手紙よ」

そう言ってアンさんが手渡したのは、少し(センスが)古びた便箋に入れらたずっしりとした手紙だった。

「……何でこんなにずっしりとしてるんでしょうか?」

「……私が知りたい所ね」

彼女は何年もの間『これら』を持ち続けていたのだ。
その期間を私が伸ばしてしまっていたことに対し、大きな罪悪感がのし掛かって来る。
絶対に早く渡してしまいたかっただろうに……律儀に待っていてくれたアンさんを正直、申し訳無さすぎて直視できない。

「……私が好きで承諾したことだから気に病むことはないわ。それより、早く読んでしまいなさいな……風に飛ばされてしまう前に」

「は、はい」

急かされて、私は慌てて便箋を開ける。
やはり中には何束にもなった手紙が入っていた。

「では読みますね……」

恐る恐る一枚目の手紙を開く。
両親が最後に残したメッセージ……私はゆっくりと読み上げていった。

「『やっほー☆ アクアちゃん! 二十歳の誕生日はもう終わっちゃったかな? ごめんね……遅れたけど誕生日おめでとう~! パチパチ!』…………すみませんちょっといいですか」

反射で手紙を閉じてしまった。
……これ読み上げれない!

「……………ごめんなさい後は一人で読んでくれるかしら」

アンさんがお腹を抱えて悶絶している。
これもシャワちゃんにも教えたかったけれど、この事は誰にも言えそうにない。
ていうか言いたくない……。

その後も延々とやけに華やかな文章が書かれていたが、最後の一枚だけは文体が違うのに気がついた。

「これは……お父さんの字かな……『アクア、俺の言いたかったことは全部彼女が書いてくれてるから、俺は必要なことだけを書こうと思う』……間違いないですね」

「……続きを」

アンさんも既に顔を上げて私が読み上げるのを待っている。

「はい……『ドンドルマのイーゼンブルグ家を訪ねろ。俺たちが残したものがお前の力になることを願う』……イーゼンブルグって!」

「……図らずも行き先は同じということね」

「シャワちゃんの実家に何が……?」

そんな思惑が止まないまま、気球船は目的地であるドンドルマに近付いていった……。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「アンさんは入らないんですか?」

「……ええ。私は何かと嫌われているから」

「すみません師匠……すぐに戻りますから」

私達はドンドルマの外れに気球船を止めた後、徐々に混乱が増し始めている街中をフィリアちゃんを庇いながら進み、イーゼンブルグの屋敷の近くまで辿り着いていた。

「それにしても驚きよね。まさかアクアさんの御両親が私の家に……お父様に何かを預けてたなんて。世間ってやっぱり狭いのかしら?」

歩みを進めながらシャワちゃんがそんなことを呟く。

「うーん……そんな言葉で片付けちゃいけないような……。それにしてもちょっと緊張するなぁ……シャワちゃんのお父さん怖いから」

「いや……ここだけの話なんだけど、この前お父様……今度は私に『パパ』って呼べだなんて言ったのよ?」

「それは……ちょっとキツいな……」

「でしょう!? 今更何をって感じよね。……まぁ今まで敢えて厳しくしてた反動が来たんでしょう」

久し振りに出会った直後は少し固くなってしまっていたが、会話に花を咲かせている内に私達はかなり打ち解けていた。

「でも……お父さんがいるっていうのはやっぱり楽しそうだね」

「あ……ごめんなさい! ついアクアさんの前でこんなこと……」

「あっ、そんな意味で言ったんじゃないです! ただ単純に会うのが楽しみになってきてね?」

「んん……そんな期待されてもイメージ通りだと思うけれど……」

「お姉さま! パパは優しいですよ?」

「あなたいつの間にパパだなんて……! ダメよ。お父様と呼んでやりなさい」

「はい、お姉さま。お父様は優しいです」

「よろしい」

「……お父さんよりお姉さんの方が優先なんですね」

「まぁ普段はそんなものよ。立場的にも今は私の方が偉いしね」

そう言って子供っぽい意地悪な笑みを浮かべるシャワちゃん。

そんなことをしている間に、私達はすでに屋敷の門を叩いていた。

門の前には怖そうな兵士が二人立っていたが、シャワちゃんの顔を見るなり敬礼して道を開けた。

「わぁ~やっぱり偉いんだ」

「余り自慢してもしょうがないものだけどね」

流石に会話も抑え、屋敷の中を道なりに進んでいく。

地味過ぎず、豪華過ぎずの装飾に関心しつつ階段を上っていくと、シャワちゃんの足が一つの扉の前で止まった。
どうやらここがダイガスさんの部屋らしい。

「じゃ、入るわよ」

シャワちゃんはそう言うと扉を二度ノックし、重装のドアノブをゆっくりと回した。


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