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ガイドポストは龍の調べ ~Last Guidance,~ 第六話

2013/04/16

ギィ、と木材と金属の擦れる音がして、明かりはあれどまだ夜の暗さを抱え込んでいた廊下に、部屋の暖かな光が溢れ出た。

「お父様、入るわよ」

「お父様しつれいします」

「し、失礼します」

先に入って行った姉妹の後に続き、私も部屋に足を踏み入れる。

「む……シャルにフィリアか」

渋く低い声が、部屋の奥から聞こえてきた。
彼女らの声に気付いて顔を上げたダイガスさんは、部屋の奥にある机で書類を読み込んでいる最中であった。

「わ……すごい」

私はつい驚くように部屋を眺めてしまった。
ギルドの集会所と間違える程に大きな部屋。
その一面に壁代わりの本棚が置かれており、唯一本棚が無い場所には嵌め込み式の大窓が一つ、月明かりを招き入れている。
その他の家具は大窓の前にあるダイガスさんの使っている作業用の机と、客用であろう椅子とテーブルが空いた部屋の真ん中にポツリと置かれているだけ。
書斎なんてものではない、図書館と呼んでもおかしくない程の見事な部屋だった。

「よく帰ったな。予定よりも遅かったから心配していたのだぞ」

そんな空間に一人溶け込んでいる彼には、以前ユクモで見た粗暴な印象はまるっ見受けられない。
私の認識は既に博識で厳格な男性という印象に変わっていた。

「……だがフィリアよ、何故私の呼び方が変わっている? パパと呼びなさいと言っただろう!」


「………」

博識で厳格な印象を受けなくなった。


「はい。でもお姉さまがよくないって言ったのでやめました」

「何……だと……? シャルワナ! またお前は私の……私の楽しみを一体何だと――!」

「そんなこと知らないわよ! ファザコンにしても程があるわっ! それよりもほらっ、お客様よ!」

「何っ?」

たった今気が付いたようで初めて私に目を向けるダイガスさん。

「ど……どうも」


どうも私が人に持つイメージというのは崩れやすいようで。
ちょっと気まずい雰囲気の中、取り敢えずエヘへと笑ってみせる私。

「……それは失礼した。む、確かユクモにいたハンターの一人だったな?」

「お久しぶりです。アクアと申します。実は私の両親から遺言を預かっていまして――」

私は早速手紙の内容をダイガスさんに話した。
時間も母の尊厳を陥れようとする気持ちも無かったので、手紙の内容は少し(九割大)割愛したけれど。

ダイガスさんは私が話し終えると同時に苦々しい顔をして、大きくため息を漏らした。

「なるほど……お前が『奴等』の娘だったのか。確かに、忌々しくも面影があるか。それに……いや、それは後だ」

『奴等』……?
ダイガスさんと両親は親しい間柄では無かったのだろうか?

「ダイガスさんと私の両親の間に何かあったのですか……?」

「それについては話すことは何も無い」

質問は予測していたのだろう。質問はすっぱりと切り捨てられてしまった。

「そうですか………」


気を落とした私に「だから」とダイガスさんは続けた。

「結論から言ってしまおう、確かにこの家にはお前の両親からの預かり物……形見がある」

「本当ですか!?」

「ああ。それに関しては遺言通りお前に渡すとしよう。ただし、私から一つ条件があるがな」

「条件……ですか?」

「あぁ……何、手間は取らせん」

そう言うとダイガスさんは一人の使用人を呼び出し指示を出すと、大きな箱が二つ台車に乗せて運ばれてきた。

「……アクアよ、その前に背にある太刀を私に見せてくれないか」

箱が運ばれて来るのを見届けた後、ダイガスさんは席を立って私たちの方に歩み寄りながらそう言った。

「は、はい。……どうぞ」

渡したのは私が長年愛用している太刀『霊刀ユクモ・真打』。
以前クシャルダオラと戦った時に破損してしまったが、ポッケ村の加工屋さんに再び叩き直してもらった代物だ。

「ふむ……」

それ受け取ったダイガスさんは刃を鞘から抜き放ち、一通り眺めた。

「………はぁ」

そして一言、聞き間違えたんじゃないかと思うような一言を私に言い放ったのだ。


「よくも今まで、こんなもので生き残って来れたな」

そう言って、




私の太刀を叩き折ったのだ。



「――――――っ!?」


驚きで声が出なかった。


「お父様!? 一体何を!? アクアさんがどれだけその太刀を大事にしてたか分かって――え? 何よ!? 何で止めるのよアクアさん!?」

「……待って」

呆然となりながらも、今にも父親に掴み掛かろうとするシャワちゃんを止めながらも、必死に頭を働かせた。


凄まじい違和感が私を襲っていたから。


「……違う」


そして気付いた。

「何が違うのよ!? 現にあなたの太刀が折られてるのよ!?」

「え? え? え?」

フィリアちゃんは何が起きてるのか分からないようで私たちの後ろでオロオロとしている。

「……おかしいんです」

「おかしいってどういう―――あっ……」

どうやらシャワちゃんも同じことに気が付いたようだ。


今、私たちが見たのがどれ程『あり得ない』光景だったのかを。




ダイガスさんは今、私の太刀を折った。


飛竜の堅固な甲殻を切る為の、耐久性は折り紙付きのハンターの武器を『素手で叩き折った』のだ。


こんなこと、私の太刀に何か理由があったからだとしか考えられないのだ。


改めてダイガスさんの方を向き直る。


すると彼はゆっくりと、確認するように口を開いた。

「……加工屋に何か言われなかったのか」

「い、いえ……」

「この武器、ユクモ村の伝統武器だろう?」

「はい……そうです」

「それを別の村で強化した……そうだな?」

「……」

黙って小さく頷く。
何となく、理由が分かってきた。

「その村の加工屋の技術は素晴らしかったのだろう。この武器をG級でも扱えるように鍛えられている。だが、元は異国の技術で作られた武器……僅かずつだが軋轢が生まれていたのだ」

「確かに……太刀の強化にはユクモの堅木でなく、他の木材を使ってもらいました」

ユクモの堅木を入手するためにはユクモ村に依頼をしなくてはならない。
当時の私はそれを嫌がってポッケ村の加工屋に無理を言ったのだ。

「理由は他にもあるだろうが、恐らくはそれが一番の原因だろう」


ダイガスさんの言葉が深く胸に突き刺さる。
メンテナンスにも、折れた時の修理にも私は太刀に本来の素材を使ってはいなかった。
もしこのまま討伐に向かっていたら……考えだけでも背筋が凍る。
だけど何でダイガスさんが……? そう考えているとダイガスさんはふん、としかめっ面をして(この仕草はシャワちゃんとそっくりだった)、箱の一つに歩を進めた。

「……両親に感謝することだな」

「………え?」

言葉の意味が分からない。そんな私の様子にダイガスは再びため息をつく。

「全く……。何処までが奴等の考えか……考えるのも恐ろしいわ」

そして一つの箱を勢い良く開け放ったのだ。

「これは……!?」


箱の中身に私の目は釘付けになる。


太刀。


それも相当な代物だという雰囲気を纏わせた一振りが、丁重に仕舞われていたのだ。

「『九十九牙丸(つくもきばまる)』と呼ばれる物らしい。お前の両親が預けた、生産法も何もかもが不明の東国の業物だ」

「アクアさん……太刀の素人の私でも分かる。これ……かなりの武器よ」

「ええ……」

恐る恐る手に取ってみる。ずっしりとした重みが腕に掛かる……鞘を抜くと、吸い込まれる様に鋭利な波紋が刃に刻まれていた。

「こんな太刀を私に……? でも両親は私が太刀を使うことなんて知らないはずなのに……」

「……さぁ、アクアよ。余興の時間だ、『これ』をその太刀で切ってみろ」

ダイガスさんは私の言葉を無視してもう一つの箱に手をかけた。
入っていたのは金属光沢を煌めかせた、一抱えもあるずんと重々しい黒い塊。

「これ……ウラガンキンの顎ですか!?」

「そうだ。とある商人から仕入れた代物でな。その太刀ならば切ることが出来るはずだ」

固い甲殻を持つ爆鎚竜の部位の中でも特別固いと言われている顎。
いくつもの鉱石を溶岩の熱で塗り固めて作られたそれは万物を弾かんという光を放っていたが、ここで引く訳にはいかない。

「や……やってみます」

そう言って私は太刀を上段に構える。
腕先から太刀の先端まで、身体の延長と思えるまでに意識を張り巡らせて集中させた。

「やぁぁぁぁぁ!」

気合いと共に九十九牙丸を振り下ろす。

「!?」

「アクアさん!?」

嫌な金属音が部屋に響いた。

振り下ろした太刀は飛沫を飛ばし、再び上に上がっている。


弾かれたのだ。


ダメだった……一瞬諦めかけた私だったが、そこであることに気が付いた。

「飛沫……? この太刀……水属性なんですね」

「……そう言えば、お前の母親はやけに水属性の武器を愛用していたな。何やら水属性を扱うことに長けた体質だとか言っていたが……まぁ、信じるには値しない話だがな」

「お母さんが……」

そう言えば今まで水属性の武器を使ったことは無かったな……もっと水を意識しないと。
そう考えながらもう一度、太刀に意識を浸透させる。
意識を水面に広がる波紋の如く広めるように。

さっき飛沫が上がったのは水の属性を上手く扱えていなかったから。
もっと集中して……切っ先に水の力が加わるように……。


「はぁぁぁぁぁぁ!」


「むっ」


再び振り下ろした太刀は、浮き上がることはなく、飛沫も上がらなかった。
しかし私も結果が怖くて頭を上げることが出来ない。



「やった……やったわよ! アクアさん!」

「………」

シャワちゃんの歓喜の声に恐る恐る顔を上げると、そこにはしっかりと二つに割れた塊があった。

「やった………!」

思わず喜びの声を上げると、ダイガスさんはやや悔しそうな顔をした後に腕を組んで後ろを向いた。

「条件を満たしたからには仕方ない。とっとと持って行ったらどうだ、時間が無いのだろう?」

「もう! お父様のせいなのに!」

「……ありがとうございました。さ、シャワちゃん行こう」

「そうね……」

「フィリアちゃん、騒がしてごめんなさいね」

「と、とんでもないです。お姉さまたちも頑張ってください!」

「ありがとう。また会おうね」

「じゃあ、いい子にしてなさいねフィリア」

そう言って私たちが部屋を出ようとすると、後ろからシャワちゃんを呼び止める声がした。

「……何? お父様」

「………いや。……やはりお前も行くのか?」

「当たり前でしょ! 大事な友達との約束なのよ?」

「そうか」

その後、ダイガスさんは一瞬黙ったが、後ろ向きのまま言葉を続けた。

「……今度は早めに帰って来るんだぞ」

と。

「……もちろん。フィリアを待たせたりはしないわ!」

ふふ、と胸を張ってそう言ったシャワちゃんは、何故かとても嬉しそうに笑っていた。


                                       
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モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
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