スポンサーサイト

--/--/--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

―龍に愛されなかった娘― 【仮想空話】

2013/07/19

――この物語はアクアがまだポッケに旅立つ前、古龍の力に抗わず、受け入れてしまった場合の、あくまでも仮定の物語である。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「それ」は生まれた時から孤独だった



白い龍は我が子を見るように言った



一人は寂しいか



「それ」は頷かず、ゆっくりと龍の眼を見る



――龍達は静かに眠った





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



フラヒヤ山脈近くにある雪山の懐に抱かれた村――ポッケ村は、穏やかで美しい村の雰囲気と雪山の気候の過酷さを兼ね揃えており、温泉まで存在する。
そんな村に魅了されてやって来るハンターの数は少なくない。

「……ここがポッケ村、か」

そう言って、短めの青いポニーテールを左右に揺らした彼女――アクアもまた、その噂を聞き付けてやって来たハンターの一人だった。

容姿は女性と呼ぶには少し幼さが残っており、ユクモノ一式と、ユクモノ太刀という装備からユクモ村の出身だということが窺える。
しかしその瞳には年に合わない冷たく無機質な色が浮かんでいた。

「……」

吐く息が白い。
登山中から感じていたが、麓よりも気温が大分下がっていた。
そして昨晩から大量の雪が降ったのだろう、村に続く道は足跡以外にそれを示すものが無い程の積り具合だ。
足元を踏みしめるだけでギリリ、と雪が固められる独特の音が静かに響く。

「……まずは村長に挨拶しないといけないか」

少し気だるそうに呟いた後、アクアは村人に案内をさせて大きなマカライトの岩へと向って行った。



「貴女が村長ですか?」

「…………」

岩の前で焚き火にあたっていた小柄な老人に声を掛けるも、なぜか反応が無い。


「……ねぇ、声掛けてるんですけど」

苛立たしげにもう一度言う。

「んん? おぉ、すまぬすまぬ、最近耳が遠くてのぉ」

そういうと老人――村長はゆっくりとこちらに顔を向けた。
傍から見ればただの老人だが、しわだらけの顔の奥には聡明な瞳が凛と光っている。

「……で誰じゃったかの? 雑貨屋の娘じゃったか?」

どうやら気のせいだったようだ。

「……新しくハンターとして村に来たアクアといいます。一応、挨拶に」

「おぉおぉ、そうじゃったそうじゃった。ギルドからの手紙を受け取っておったわ。確かユクモの子だったの? 向こうの温泉はまぁずいぶんと体にいいと聞くに……」

「すみません、急いでいるので話はまた今度」

「そうか。あい、悪かったのぅ。何かわしに聞きたいことがあったらまた声をかけとくれ」

素っ気なく会話を切ったのだが、気にした様子もなくにこやかに笑いかけてくる。
食えない老人だ、そう思って立ち去ろうとしたアクアだったが、あることを思い出して再び振り返った。

「そういえば、この村にはもう一人専属のハンターがいると聞いてましたが、その人は何処に?」





村長との話を済ませた後、アクアは村の中を一人歩いていた。
ユクモとは違い、昼間でもずいぶんと冷え込む。

「……この辺りのはずだけど」


――そう呟いた時である。



「やっほー! そこのキミ! もしかして新しく来たって噂の……うわぁぁっ!?」

急に頭上から声を掛けられ、驚いたアクアは咄嗟に忍ばせていた投げナイフを繰り出していた。

「……あっぶなぁ!? 何してくれんのさ!?」

またも頭上から怒りの声が聞こえてきたが、無視してアクアは身構える。

避けられた……?
さっきも気配を感じることが出来なかった。
あいつ……強い。

「もう怒った! ちょっとそこで待ってろ!」

言うなり屋根上の人物は「とぅっ!」という掛け声と共に飛び降りて来た。
アクアは背中の太刀に手を掛け、素早く抜き放つ。

「よいしょ……ってうわぁぁぁ!?」

降りてきたのは女だった。
ズシン、という見かけに合わない、重量感のある着地音を立てて着地したところを間髪入れずに斬りかかる。
しかし、彼女は素早い身のこなしで手に持っていたスコップを突き出してアクアの攻撃を防いでみせた。

「なっ……!?」

「ちょっとちょっと! 村の中で人に向かって武器振り回すって何考えてるのさ!?」

スコップの女は呆れたように言う。
確かに、驚いたとは言え流石にやり過ぎたか。

「……ごめんなさい、つい」

「まぁ、私だったから良かったけどさ……」

アクアから殺気が消えたのを見て、彼女はふぅ、とため息をついてから雪下ろし用に使っていたのであろうスコップを地面に差した。

アクアよりも少し年上に見える彼女の髪型は桃色のブナハスレイヤー。急に斬り掛かられて気分を害したのか、むすっとした表情を浮かべている。

「その武器や防具を見れば間違いないみたいだね。アンタが新しく来たハンターか」

「そう言う貴女がこの村の専属ハンターですか」

「そう、名前はハンマー」

「……変な名前」

思わず口にしていた。

というのも着地音の原因が彼女の背負う巨大なハンマーであり、名前も同じハンマーだったからだ。

「まぁ、そう思われてもしょうがないよね。……でも、私の大事な名前なの」

少し凄みの混じった声だった。どうやら名前に関してはとやかく言わない方が良さそうだ。

「私はアクア。この村の二人目の専属ハンターになるけど、馴れ合うつもりはありませんから」

「……でもこれは一応仕事だからね。普段はどうこう言うつもりはないけど、協力すべき所はしてもらうよ」

「……何故貴女は私が来ることを許可したんですか?」

本来、一つの村に専属ハンターは一人しか要らない。要らないし、入れないのだ。

小さな村には二人のハンターを受け入れる余裕も無いし、ギルドだって殆ど認めない。
専属ハンターだってよっぽどのことがない限り仕事を減らされることを快くは思わないはずだ。

しかし、ハンマーはあっけらかんとした顔をして答えた。

「え、そりゃ村長の頼みだし、もし可愛い後輩が出来れば楽しいかなぁって思ってさ。……まぁいきなり襲われるとは思わなかったけど」

「甘い考えですね。それに、頭上に気配を消して立たれれば、誰だって驚きますよ」

「そんなもんかな?」

「私にとってはね」

「ふぅむ」

ハンマーは少しだけ頭を捻ったが、すぐに気を取り直した。

「とにかくさ、一回だけ簡単なクエストに行こう。適応調査だよ、これちゃんと出来なかったら家貸してあげないから」

それは困る、とアクアは唸った。
しかし、村長の話を聞く限りアクアの住居に関してはこのハンマーという女が全件を握っているらしい。

「……分かりました。要はクエストを達成すればいいんですよね」

クエスト。
ハンターがギルドを通して受ける依頼の通称。
これから行動を共にする、初対面のハンター同士ならまずは簡単なものに誘って相性を確かめるものだ。

なら――。

アクアの口元がニヤリと歪んだ。

「ん? どうしたの?」

「いえ。早く行きましょう」

「おっけー。ならギルドに向かおうか」

「はい……」

ハンマーの後ろを歩きながら、アクアは怪しげな笑みを終始浮かべていた。





「んんー! いつ見ても綺麗な浜辺!」

アクアとハンマーはクエストのために密林と呼ばれる狩り場に来ていた。
その入り口である浜辺の壮大さにアクアは少し関心を示す。

「……ふぅん、いいとこですね。さ、ハンマー。先を急ぎましょう」

「あ、待って! そっちは……」

すぐに隣のエリアへ向かい始めたアクア。
止めようとしたハンマーだったが、聞く様子がないので慌てて着いていく。


(ま、少し驚けば面白いかも)

密林の砂浜にはヤオザミという凶暴な甲殻種が潜んでいるのだ。
砂の中に潜んでおり、経験を積んだハンターだって奴等の奇襲を避けるのはかなり難しい。


―――しかし。

「……ふっ!」

ハンマーが駆けつけた時には、アクアは三匹いたヤオザミの最後の一匹を仕留める瞬間であった。

勿論、無傷。
汚れ一つ、付いていない。
太刀についた青い血を一振りで払うと、アクアはゆっくりと太刀を背に戻した。

「……さすが上位ハンターだけあるね。心配する必要なかったか」

「当たり前です。それにハンマー、貴女わざと教えませんでしたね? 」

「いや、アクアが聞く前に先に行くから……」

「G級ハンターが上位ハンターに言い訳ですか?」

「ぐぅ……ていうか何で知って……」

確かにやましい気持ちはあったかもしれないけれど、一方的に責められるのも納得いかない。

ここは一つ年上の威厳を示そうかと思った瞬間、アクアの手がハンマーの顔面に迫っていた。

「!?」

驚いて体を仰け反らせるが、アクアが手に何かを持っているのに気が付いた。

「ザザミソ、貴女も食べませんか?」

「いや……でもザザミソは精算アイテムだし」

「バレなきゃこの位、平気ですよ。ハンターの特権でしょ」

「確かにね……まぁ今回は貰っておこうか」

今、アクアとの友好関係を遮るようなことはしない方がいい。
そう考えてのことだったが、確かに新鮮なヤオザミの味はいつも酒場で頼むものよりも味が深い気がした。

「……うまい」

「でしょう。いきなり襲った分はこれでチャラですね」

「……」

貴女と貸し借りなんかしたくありませんから、と続けるアクア。
しまった、と思ったがまだ遅くはない。

「クエスト終わったらすぐに酒場に行こうか。酒場にはザザミソの他にも沢山美味しいものがあるし……奢るよ?」

「……本当ですか?」

食い付いた。
こういう所はまだ年相応のようだ。

「なら私が『あれ』仕留めますよ、それで酒場の分も貸し借り無しで」

そう言われてハンマーはハッと上空を見た。

「……丁度来ましたね。この地方のハンターの登竜門だという、雑魚が」

赤い体に黄色のくちばし。そして特徴である巨大な耳。

「クエェェェェ!」

【怪鳥】――イャンクックが土煙を上げながら二人の前に降り立った。

「コココココ……」

イャンクックは早くもこちらに気付いているようで、喉を鳴らして威嚇している。

「じゃあ、私に任せてください」

アクアがいきなりイャンクックに向かおうとするのでハンマーは慌てて止めた。

「ちょっと待ってよ! これはあくまでも適応調査なの! 一人でやっても意味ないんだよ」

「なら援護をお願いします。相手を観察するっていう援護を。それで『二人』でしょう? ていうか邪魔……しないでくれます?」

「……っ!」

あまりに冷たい言葉にハンマーは何も言い返せなかった。

「大丈夫ですよ――すぐに済みますから」

アクアがそう言って太刀に手を掛けた瞬間、時は凍りついた。


嗤っているのは、少女一人。




【クエストが完了しました】





「あ………」

「どうです? すぐに終わったでしょう?」

「!」

帰って来たアクアの返り血に染まって姿を見て、やっとハンマーは我に返った。

少女とは思えない動きと力。
イャンクックは断末魔さえ上げる間もなく事切れていた。
まさに雪の様に無音で。
そして半月のごとき斬撃の中にかろうじて見えたのは―――真っ赤に咲き乱れた花。


「…………」


もはや同じ人間のなせる技とは思えなかった。
再び太刀にこびり付いた血を振り払うアクアの様子に、異常な程の寒気さえ覚える。


「……!」


思わず、一歩下がってしまった。


「あれ? G級ハンターが何をそんなに驚いてるんです?」


動揺の隠せないハンマーに向かい、妖艶な笑みを浮かべながらアクアは更に驚くべき言葉を言い放った。

「――実は私、体に少し古龍の血が流れてるんです」

「なっ……」

今度こそハンマーは言葉を失った。

「ふふ……力が溢れて、とてもいい気分なんですよ? まぁ、信じるか信じないかなんてどうでもいいですけど、もしギルドに何か余計な事を喋ったら……分かりますよね?」

以前とは比べ物にならない程の殺気を前に、ハンマーは頷くことしか出来なかった。
まるで首筋にナイフを押し当てられたような感覚が彼女を襲う。
もう彼女を人間だと思うことも――ハンマーには出来なかった。

「ならギルドに戻って約束通り食事でもしましょうか?」

「……」

答えることが出来ない。
私は、私が震えているのか……?
今まで向い合ってきたどんなモンスターよりも、彼女は恐ろしかった。

「貴女も、結局は奴らと同じ様に口をつむぐんですね。まぁ、分かっていましたけど」


「…………」




二人は無言で密林を後にした。




……その後、二人の活躍を聞いた者はいない。



【BAD END】


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


――彼女が傷付けてしまった猟団長の言った『お前には化物が住んでる』という言葉は、彼女を自責の念に捕らわれさせる重要な言葉だった。
猟団長が何気なしに呟いた言葉が彼女たちの物語において、非常に大きな意味を持っていたのである
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

楽太郎

Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
(・◇・@)

お客様カウンター
こんなお時間ですニャ
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
最新トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。