スポンサーサイト

--/--/--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

シュレイドの夜 5話

2013/10/14

駆ける狩人が二人。

目の前に君臨するのは、伝説の古龍――ミラボレアス。

「はぁぁぁぁぁぁ!」


フレアはそんな古龍に向かい、輝剣リオレウスを勢いに乗せて振りかぶった。

相手は巨体で、大剣の巨大さをもってしても攻撃が届くのは両足と腹部のみ。
加えて相手は未知の敵、並みのハンターなら咄嗟の判断に迷うだろう。

「おらぁぁっ!」

彼は迷わず片足を切りつけていた。
裟懸けに切った剣先から、小さな爆炎が舞い上がる。
切り口を焼くことで敵の回復力を押し止める火属性武器の、最大火力を誇る輝剣リオレウスの一撃。

『…………』

しかしミラボレアスはまるで効いていないかのように微動だにしなかった。


「痛―――ってぇ!?」


まるで鉄の塊に切りかかったような感触。
炎こそ舞い上がったものの、フレアの大剣は大きく弾かれていた。

「くそっ……足は固い部位だったのか!」

「違うわ、よく見なさい!」

痺れる腕を抑えながら悪態をつくフレアだったが、横から声にもう一度敵の足元を確認する。

「……あの野郎っ!」

フレアの狙った場所にゆらゆらと漂っていたのは、身の丈と同じ程に伸びた尻尾の先。

「固いのはあの尻尾って訳か」

「巨大な敵と戦う際に有効なのは足を狙って転倒を誘うこと。確かに定石だけど、向こうも対策済みだったみたいね」

「シェリー。さっきもそうだったが、こいつ並の頭じゃねぇぞ!」

自分の弱点を知って隠す生物は多々いるが、敵の動きを読んで的確に防ぐなど聞いたことがない。

しようとすれば、それこそ人間並みの知能が必要になる。

「そうね。でもそれは足が弱いって教えてくれてるようなもの……よっ!」

言いながら今度はシェリーが弾丸のような早さで黒龍に向かっていく。

しかし双剣の切っ先を足に突き立てようとした瞬間、その間に細長いものが差し込まれた。

「シェリー! 尻尾だ!」

「予測済みよ!」

言って彼女は大きく片足を踏み出して地面を強く蹴りつける。

「はぁぁぁぁ!」

そして90度横に飛ぶと、その勢いのまま回転して逆の足を斬りつけた。

『!』

どす黒く赤い血が、黒龍の足から勢いよく吹き出る。


『オォォォォォ!』



黒龍が、呻き声を上げて仰け反った。

「よし! いいぞ!」


――攻撃が通じる。


――なら倒せない相手では……ない!



フレアはその事実に俄然、気力が沸き始めた。



力を合わせれば絶対に倒せる、そう確信した。



――吹き飛ばされたシェリーが自分の横を通り過ぎるまでは。


そして自分の視界が一瞬、赤に染まる。


「―――っ!?」


慌てて目を拭うと、鼻先に刺すような痛みが走った。
確認してみるとフレアの鼻先には、浅くではあるが鋭い切り傷がつけられていたのだ。

(何……だ? 何が起こった? そういえばミラボレアスが身体を回したと思った瞬間、何かが俺の横を……)


「――シェリー!? しっかりして!」

「!?」

背後から響いた、悲鳴のようなチョモの声を聞いてフレアは跳ねるように後ろを振り返った。

「……大丈夫よ。半分は自分で跳んだの」

そこには腹部を押さえて上半身を起こしたシェリーがいた。
それを見て、フレアは何が起こったのかがやっと理解出来た。


――奴が尻尾を振り払ったのだ。

(嘘だろ? まるで見えなかった……)

チョモの手を借りて立ち上がったシェリー。
ダメージはそれほど深くないようだが、それでもすぐに動けはしないだろう。


(ここは俺一人でやるしかねぇ!)

「――とか思ってるんじゃないでしょうね?」

「そうだよ、今日のフレアは突っ走り過ぎ」

「なっ!?」

両側から聞こえた声にフレアは驚く。

「シェリー! お前なんでそんな早く……チョモの治療が必要なんじゃ?」

「大丈夫よ、あれを見なさい」

「あ? 何を――何だあれ!?」

『あれ』と言って伸ばした指の先を見てフレアはまたも驚いた。

ここからかなり離れたエリアの端で、桃色に輝く男達が回復薬をせっせと呷っていたのだ。

「『いろいろ楽に』ってそういう意味かよ……」


道理で腕の治りが早いはずだ。

「さぁフレア、もう目も慣れてきたでしょう? ナルガよりも少し早い程度よ」

「……」

それは今までの敵の中で一番早いということじゃないだろうか?

しかしそんなことは戦いの妨げにはならない。

「あぁ、もう少しで慣れるぜ」

「一対一じゃ勝負にならないわ、三人で上手く牽制していきましょう」

「了解。私はちょっと旋律吹くから、出初めは二人でお願い出来る?」

「任せろ! シェリー、いけるな?」

「勿論。さっき付けた傷を狙っていくわよ!」

「おう!」

チョモが笛の旋律を奏で始める中、フレアとシェリーはゆっくりと近付く黒龍へ向かい左右に別れて特攻を仕掛けていった。






(………)

走りながらフレアはある一点を注視する。

問題はどちらに振り向くか。


――俺の予想なら……


『…………』


黒龍はシェリーの方を振り向き、鋭い爪が生え揃った前足を振りかぶった。
同時に鞭のようにしなった尻尾がフレアに向かい襲い掛かる。

「予測済みだぁ!」

脅威的な威力を誇る尻尾の一撃だが、一つだけ弱点がある。

それは打点が低いこと。

フレアは両足を屈めて前方へ一気に飛び出した。
そして飛び前転の要領で尻尾を躱そうと試みたのだ。
「………!」

思ったよりも武器の重さが足を引っ張りあまり高く跳べなかったが、それでも尻尾はフレアの遥か下を通り過ぎていく。

「……っと!」

転がるように地面に着地したフレアはそのままミラボレアスの背後から足を狙いに走る。

黒龍はまだシェリーに攻撃を仕掛けている途中で、敵はこちらなど気に掛けていない。


「もらったぁぁぁぁ!」


振りかぶったフレアの一撃が、今度こそ黒龍の足に直撃した。



『グォォァァァ――!!』

不意を突かれた足への一撃に、黒龍はバランスを失い地面に倒れる。

――今ならいつもは届かない頭が狙える!

しかしフレアは武器を振るった反動でまだ動けず、シェリーも攻撃を避けたことによって距離が離れている。

(二人なら無理だ。だが……)

フレアは確信していた。



「――頭、いっただきぃ!」


昔と変わらない、白銀の長髪が舞う。

思わず、ニヤリと微笑んでしまった。



そう、俺はあの時から信じてたんだ。
自分が出来ないことは相方【アイツ】が必ずやってくれると。







「さて、と」

二人がミラボレアスへ向かった直後、チョモはすでに吹き終わった自分強化の旋律を、改心率UPへと切り替えていた。

それは人間の内なる集中力を高め、武器を振るった一撃の鋭さを増加させる旋律。
聴覚保護【大】は黒龍が降り立つ前に吹き終えていたので、これがチョモの狩猟笛で吹ける最後の旋律だった。

『あの』二人には怪力の種と忍耐の種も渡してあるので、それの効果も合わさりフレアの一撃は相当な威力を持つだろう。

「もしダウンを取れれば頭を狙うことが出来そうだけど、今のままいっちゃうとフレア達はそこまで辿り着けないだろうなぁ」


――それくらいのことは『観てれば』分かる。


「そうなればそこは私の役目になる訳だけど……」


だけど、とチョモは思う。

その為には先程シェリーが避けられなかった一撃をフレアが躱さなくてはならない。

――何故そこまで見込めている自分がいるのだろうか?

「……へへっ」

自分で疑問に思い、すぐに自分で答えが出た。


「だって、信じちゃってますから!」


自分の真正面に落ちてきた頭に向かい、ニヤリとしたままチョモはアヴニルオルゲールを力一杯降り下ろした。






「………おかしい」


シェリーは思う。


不意討ちも決まって、ダウン時に頭に一撃も決められてここまで順調なはずなのに。

――なのに、何故違和感を覚えるのだろうか?


『…………』

一撃を加えたチョモがその場を離脱するのと同時にミラボレアスはその身体をゆっくりと持ち上げ始めた。

――本当にあの子は敵をよく見てるわね

彼女にこの違和感を話せばすぐに何かを見つけてくれるかもしれないが、ここまでの違和感だ。
恐らくは目に着くところにその正体は隠れているはず。

「―――っ!?」

そしてシェリーはすぐに『それ』に気がつくことが出来た。


(私たちが足に付けた傷が……無くなっている!?)

シェリーとフレアの攻撃は確実に敵の鱗を切り裂いたはず。
なのに今、その傷は一切見当たらない。


「それがあなたの『伝説』、そして『強さ』の一部だと言うのね……」

命を掛けて付けた傷が一分も経たない内に完治されてしまった。


「これは……ちょっと皆と話さなきゃならないかしらね」


――私達だけでも勝てないかもしれない、と。







「なっ……傷が回復!?」

「………」


シュレイド城の小さな休息所でフレアの大声が響いた。



ダノンとライザーに指示を出した後、三人は一つずつ持ち込んでいた非常用の『モドリ玉』で一時的な退却を図ったのはつい先程の事。
シェリーが発見した事実を伝えるためであったが、黒龍が何をするか分からない以上そこまで時間を取るわけにはいかない。
そんな緊迫した状況の中で話し合いは行われた。

「俺の渾身の一撃を叩き込んでも治っちまうとなると確かに……厳しいかもしれない。だけどよ! ここでアイツを野放しにしたらどうなるか分かんねぇぞ!」

「でも何も対策出来ずに死ぬまで攻め続けたとしても、結果は同じことよ」

「そ、そうだぜ! 勝てねえなら逃げた方がいいって!」

「それがいいぜ! な?」

「……貴方達は黙ってくれないかしら。全身桃色で気持ち悪いのよ」

「で、でもこれは姐さんが……」

言われてチョモがギョッとした顔をした。

「ちょっ、姐さんとか呼ばないでよ!」

「俺等、分かったんです。姐さんの下で働くのが幸せだって!」

ライザーが声高々に叫び、ダノンもしきりに頷いていたが、次の瞬間二人は仰向けに卒倒してしまった。

「悪いけど本当に時間が無いの。そこで静かに寝てなさい」

シェリーは彼らの額に刺さっている眠り投げナイフをポーチにしまうと、再び二人に向き直った。

「私は黒龍の回復力を上回る攻撃力が必要だと思うんだけど、何か他に気付いたことはないかしら?」

「――あのさ」

チョモが小さく手を挙げた。

「もう一度エリアに行かなきゃハッキリとは分からないんだけど、私が頭を殴ったときに出来た傷……あれも治ってるのかな?」

「チョモ……どういうことだ?」

フレアが身を乗り出して訊ねた。

「私の武器には、龍属性がついてるんだよね。フレア達が付けた傷が元に戻っていってたのは気が付いてたけど、私の付けた傷は治る気配が無いように思えたんだ」

「なるほど……確かに古龍には龍属性がないと破壊できない部位がある。ミラボレアスは全身がそうなのかもしれないわね。なら私とフレアが援護に回ってチョモを攻撃の主軸にすれば……可能性が見えてくるかもしれないわ」

「試してみる価値はあるよね!」

まだ出来ることは残っている。
この事実に彼女達は再び希望を目に宿したが、そんな中でもう一本手が挙がった。

「あのよ、これは討伐の話とは余り関係が無いんだか……」

「何でもいいわ、続けて?」


フレアは自分の中でも思考を巡らせるように目をつぶって一拍置いた後、誰もが予想し得なかったことを呟いた。



「バルスのスカルフェイス……あれってよ、もしかして黒龍の力が関係してるんじゃねぇか?」
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

楽太郎

Author:楽太郎
モンハン好きの誰しもが自分の『世界』を持っているはず。この話はそんな世界の一部分です。
楽しんで読んでもらえたら幸いですね
(・◇・@)

お客様カウンター
こんなお時間ですニャ
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
最新トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。